(定義)
第二条この法律において「北方地域」とは、歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島をいう。
2この法律において「北方領土隣接地域」とは、北海道根室市(歯舞群島の区域を除く。)、野付郡別海町、標津郡中標津町、同郡標津町及び目梨郡羅臼町の区域をいう。
3この法律において「北方地域元居住者」とは、昭和二十年八月十五日において北方地域に生活の本拠を有していた者及びその者の子で同日後北方地域において出生したものをいい、それらの者の子及び孫を含むものとする。
4この法律において「交流等事業」とは、次に掲げる事業で政令で定めるものをいう。
一日本国民と継続的にかつ現に北方地域に居住するロシア連邦国民との間の相互理解の増進を図り、北方領土問題の解決に寄与することを目的として行われるこれらの者の旅券及び査証を用いない相互訪問の事業
二北方地域元居住者等(北方地域元居住者及びその家族である日本国民をいう。以下同じ。)の北方地域への墓参のための訪問の事業
三前号に定めるもののほか、北方地域元居住者等の北方地域への最大限に簡易化された手続による訪問の事業
5この法律において「特定共同経済活動」とは、共同経済活動のうち主として北方領土隣接地域の経済の活性化に資するものとして主務大臣が定める共同経済活動をいう。
(北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定に関する計画)
第六条北海道知事は、北方領土返還運動の拠点である北方領土隣接地域を安定した地域社会として形成するのに資するため、基本方針に基づき、北方領土隣接地域の市及び町の長の意見を聴いて、北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定に関する計画を作成し、主務大臣に協議し、その同意を求めることができる。
2前項に規定する計画に定める事項は、次のとおりとする。
一北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定に関する基本的な事項
七農林水産業、商工業その他の産業の振興に関する事項
九特定共同経済活動の円滑な実施のための環境整備に関する事項
十前各号に掲げるもののほか、北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定のために必要な事項
3主務大臣は、第一項の規定により協議された計画が適当なものであると認められるときは、これに同意するものとする。この場合において、主務大臣は、関係行政機関の長に協議しなければならない。
4前三項の規定は、振興計画(前項の規定により同意を得た第一項に規定する計画をいう。以下同じ。)の変更について準用する。
第七条の二特定事業に係る経費に対する国の負担割合は、北方領土隣接地域の市又は町ごとに北海道の区域以外の区域における当該特定事業に相当する事業に係る経費に対する通常の国の負担割合に次の式により算定した数(小数点以下二位未満は、切り上げるものとする。以下「引上率」という。)を乗じて算定するものとする。
1+0.25×(当該年度におけるすべての特定事業に係る当該市又は町の負担額のうち、当該市又は町の標準負担額を超え、その2倍に至るまでの額/当該市又は町の標準負担額)×調整率
2前項の式において「当該市又は町の標準負担額」とは、当該市又は町の当該年度の地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)第十条の規定により算定した普通交付税の額、同法第十四条の規定により算定した基準財政収入額からその算定の基礎となつた地方揮発油譲与税、特別とん譲与税、自動車重量譲与税、航空機燃料譲与税及び交通安全対策特別交付金の収入見込額を控除した額の七十五分の百に相当する額並びに当該地方揮発油譲与税、特別とん譲与税、自動車重量譲与税、航空機燃料譲与税及び交通安全対策特別交付金の収入見込額の合算額の百分の二に相当する額をいう。
3第一項の式において「調整率」とは、次の式により算定した数値をいい、その数値が負数となるときは、零とする。
0.25+0.75×((0.72-当該市又は町の財政力指数)/(0.72-すべての北方領土隣接地域の市及び町のうち財政力指数が最低の北方領土隣接地域の市又は町の財政力指数))
4前項の式において「財政力指数」とは、地方交付税法第十四条の規定により算定した基準財政収入額を同法第十一条の規定により算定した基準財政需要額で除して得た数値で当該年度前三年度内の各年度に係るものを合算したものの三分の一の数値をいう。
5第一項の規定を適用した場合において、北方領土隣接地域の市又は町の負担割合が百分の二十未満となるときは、同項の規定にかかわらず、当該特定事業に係る経費に対する北方領土隣接地域の市又は町の負担割合が百分の二十となるように国の負担割合を定める。
6総務大臣は、第一項に規定する引上率を算定し、特定事業に係る事務を所掌する各省各庁の長(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。)及び国土交通大臣、北海道知事並びに北方領土隣接地域の市及び町の長に通知するものとする。
(北方領土隣接地域振興等基金)
第十条北海道は、北方領土問題が未解決であることによる特殊事情に起因する諸問題の解決に資するため、北方領土隣接地域の市若しくは町又は北海道の区域内の公共的団体等が行う振興計画に基づく事業、北方領土問題その他北方地域に関する諸問題についての世論の啓発に関する事業及び北方地域元居住者の援護等に関する事業(国の補助又は負担を伴わないものに限る。)のうち、次に掲げるものに要する経費の一部を補助するため、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十一条の基金として、北方領土隣接地域振興等基金を設けることができる。
一北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定のための事業で次に掲げるもの
イ北方領土隣接地域の特性に即した基幹的な産業の振興に資するための事業
ロ教育施設、文化施設、生活環境施設及び厚生施設の整備に関する事業
二北方領土問題その他北方地域に関する諸問題についての世論の啓発に関する事業
三北方地域元居住者の援護等に関する事業で次に掲げるもの
イ北方地域元居住者がその能力に適合した職業に就くことができるようにするための技能研修及び知識の習得その他その生活の安定及び福祉の増進を図るための事業
ロ北方地域元居住者が北方領土問題の解決のための諸施策の推進を図る上において特別の地位にあることについての認識を深めるのに資するための事業
2北海道が前項の規定により北方領土隣接地域振興等基金を設ける場合には、国は、その財源に充てるための資金の一部を北海道に対して補助するものとする。
3第一項の北方領土隣接地域振興等基金の額は、前項の規定により国から交付を受けた補助金の額に当該補助金の額の四分の一に相当する額を加算した額を下らないものとする。
4北海道が第一項の北方領土隣接地域振興等基金を取り崩す場合には、その取崩し後の北方領土隣接地域振興等基金の額の五分の四に相当する額を第二項の規定により国から交付を受けた補助金の額とみなして前項の規定を適用する。
(北方地域の村の長の権限に属する事務)
第十一条当分の間、北方地域(歯舞群島を除く。以下この条において同じ。)に本籍を有する者についての戸籍事務は、他の法令の規定にかかわらず、法務大臣が北方領土隣接地域の市又は町の長のうちから指名した者が管掌する。
2当分の間、北方地域に本籍を有する者についての住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第九条第二項の規定による通知及び同法第三章に規定する戸籍の附票に関する事務は、他の法令の規定にかかわらず、総務大臣及び法務大臣が北方領土隣接地域の市又は町の長のうちから指名した者が管理する。
3前二項に定めるもののほか、当分の間、北方地域の村の長の権限に属する事務のうち政令で定めるものは、他の法令の規定にかかわらず、北海道知事が北方領土隣接地域の市又は町の長のうちから指名した者が行う。
4前三項の事務を行うにつき必要な事項は、政令で定める。