(定義)
第二条この法律において「養殖漁場の改善」とは、餌料の投与等により生ずる物質のため養殖水産動植物の生育に支障が生じ、又は生ずるおそれのある養殖漁場において、これらの物質の発生の減少又は水底へのたい積の防止を図り、並びに養殖水産動植物の伝染性疾病の発生及びまん延を助長する要因の除去又はその影響の緩和を図ることにより、養殖漁場を養殖水産動植物の生育に適する状態に回復し、又は維持することをいう。
2この法律において「特定疾病」とは、国内における発生が確認されておらず、又は国内の一部のみに発生している養殖水産動植物の伝染性疾病であって、まん延した場合に養殖水産動植物に重大な損害を与えるおそれがあるものとして農林水産省令で定めるものをいう。
3この法律において「持続的な養殖生産の確保」とは、養殖漁場を良好な状態に維持し、又はその改善を図り、あわせて特定疾病のまん延を防止し、長期的に安定した養殖生産の維持又は増大を可能とすることをいう。
(基本方針)
第三条農林水産大臣は、持続的な養殖生産の確保を図るための基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
二養殖漁場の改善及び特定疾病のまん延の防止を図るための措置並びにこれに必要な施設の整備に関する事項
三養殖漁場の改善及び特定疾病のまん延の防止を図るための体制の整備に関する事項
四その他養殖漁場の改善及び特定疾病のまん延の防止に関する重要事項
3農林水産大臣は、情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとする。
4農林水産大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、水産政策審議会の意見を聴かなければならない。
5農林水産大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(漁場改善計画の認定)
第四条漁業協同組合その他の漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第六十条第二項に規定する区画漁業権(これを目的とする入漁権を含む。)を有する者(以下「漁業協同組合等」という。)は、基本方針に基づいて持続的な養殖生産の確保を図るため、単独又は共同で養殖漁場の改善に関する計画(以下「漁場改善計画」という。)を作成し、当該漁場改善計画が適当である旨の都道府県知事(漁場改善計画の対象となる水域が二以上の都道府県知事の管轄に属する場合にあっては、当該水域を最も広くその管轄する水域に含む都道府県知事。ただし、当該漁場改善計画の対象となる水域に漁業法第百八十三条の規定により農林水産大臣が自ら都道府県知事の権限を行う養殖漁場が含まれる場合にあっては、農林水産大臣。以下この条及び次条において同じ。)の認定を受けることができる。
2漁場改善計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
四養殖漁場の改善を図るために必要な施設及び体制の整備
3都道府県知事は、第一項の認定の申請が次の各号のすべてに該当するときは、同項の認定をするものとする。
一漁場改善計画の内容が基本方針に適合するものであること。
二漁場改善計画の内容が前項第二号に掲げる目標を確実に達成するために適切であること。
三漁場改善計画の内容がこの法律及びこの法律に基づく命令その他関係法令に違反するものでないこと。
4都道府県知事は、他の都道府県知事が管轄する水域を含む漁場改善計画を認定するに当たっては、あらかじめ関係都道府県知事に協議しなければならない。
(水産業協同組合法の特例)
第六条認定漁場改善計画を作成した漁業協同組合が、認定漁場改善計画の内容を遵守させるために、総会(総会の部会及び総代会を含む。)で、第四条第二項第三号に掲げる事項の内容に適合するように行う漁業権行使規則又は入漁権行使規則(漁業法第百五条の漁業権行使規則又は入漁権行使規則をいう。)の変更(同法第百六条第三項第一号に掲げる事項の変更を除く。第四項において同じ。)の決議を行おうとする場合において、当該漁業権又は入漁権の内容たる漁業を営む権利を有する組合員(以下「特定組合員」という。)の三分の二以上の書面による同意を農林水産省令で定めるところにより得ているときは、水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第五十条(同法第五十二条第六項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)又は第五十一条の二第六項の規定にかかわらず、同法第五十条又は第五十一条の二第六項の規定による決議によることを要しないものとする。
2前項の場合において、水産業協同組合法第二十一条第三項の規定により電磁的方法(同法第十一条の三第四項に規定する電磁的方法をいう。)により議決権を行うことが定款で定められているときは、当該書面による同意に代えて、当該漁業権行使規則又は入漁権行使規則の変更についての同意を当該電磁的方法により得ることができる。この場合において、当該漁業協同組合は、当該書面による同意を得たものとみなす。
3前項前段の電磁的方法(水産業協同組合法第十一条の三第五項の農林水産省令で定める方法を除く。)により得られた当該漁業権行使規則又は入漁権行使規則の変更についての同意は、漁業協同組合の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に当該漁業協同組合に到達したものとみなす。
4認定漁場改善計画を作成した漁業協同組合連合会が、認定漁場改善計画の内容を遵守させるために、総会(総代会を含む。)で、第四条第二項第三号に掲げる事項の内容に適合するように行う第一項に規定する漁業権行使規則又は入漁権行使規則の変更の決議を行おうとする場合において、特定組合員を直接又は間接の構成員とする会員たる漁業協同組合(以下「特定組合員所属組合」という。)のすべての同意を農林水産省令で定めるところにより得ているときは、水産業協同組合法第九十二条第三項において準用する同法第五十条(同法第九十二条第三項において準用する同法第五十二条第六項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定にかかわらず、同法第九十二条第三項において準用する同法第五十条の規定による決議によることを要しないものとする。
5第一項から第三項までの規定は、認定漁場改善計画を作成した漁業協同組合連合会の特定組合員所属組合について準用する。
(勧告等)
第七条都道府県知事(漁業法第百八十三条の規定により農林水産大臣が自ら都道府県知事の権限を行う場合にあっては、農林水産大臣。以下同じ。)は、漁業協同組合等が基本方針に即した養殖漁場の利用を行わないため、養殖漁場の状態が著しく悪化していると認めるときは、当該漁業協同組合等に対し、漁場改善計画の作成その他の養殖漁場の改善のために必要な措置をとるべき旨の勧告をするものとする。
2都道府県知事は、前項に規定する勧告を受けた漁業協同組合等がその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
3都道府県知事は、第一項に規定する勧告を受けた漁業協同組合等が、前項の規定によりその勧告に従わなかった旨を公表された後において、なお、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、漁業調整その他公益のために必要があると認めるときは、漁業法第八十六条第一項の規定による養殖漁場の改善のための措置その他の適切な措置を講ずるものとする。
(損失の補償)
第九条都道府県知事は、前条第一項の規定による命令により損失を受けた者に対し、その命令により通常生ずべき損失を補償しなければならない。
2前項の規定により補償を受けようとする者は、都道府県知事に、補償を受けようとする見積額を記載した申請書を提出しなければならない。
3都道府県知事は、前項の申請があったときは、遅滞なく、補償すべき金額を決定し、当該申請人に通知しなければならない。
4前項の補償金額の決定に不服のある者は、その決定の通知を受けた日から六月以内に、訴えをもってその増額を請求することができる。
5前項の訴えにおいては、都道府県(漁業法第百八十三条の規定により農林水産大臣が自ら都道府県知事の権限を行う場合にあっては、国。第十三条第三項において同じ。)を被告とする。