法令文庫
  • 法令
  • 制定法律
  • 判例
  • ヘルプ
    • このサイトについて
    • サイトポリシー
    • サイトマップ
    • 外部リンク集
平成十八年法律第八十五号

自殺対策基本法

目次

  • 第一章 総則(第一条〜第十一条)
  • 第二章 自殺総合対策大綱及び都道府県自殺対策計画等(第十二条〜第十四条)
  • 第三章 基本的施策(第十五条〜第二十二条)
  • 第四章 協議会(第二十三条〜第二十五条)
  • 第五章 自殺総合対策会議等(第二十六条〜第二十八条)
  • 附則

第一章 総則

(目的)

第一条この法律は、近年、我が国において自殺による死亡者数が高い水準で推移している状況にあり、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して、これに対処していくことが重要な課題となっていることに鑑み、自殺対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、自殺対策の基本となる事項を定めること等により、自殺対策を総合的に推進して、自殺の防止を図り、あわせて自殺者の親族等の支援の充実を図り、もって国民が健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。

(基本理念)

第二条自殺対策は、生きることの包括的な支援として、全ての人がかけがえのない個人として尊重されるとともに、生きる力を基礎として生きがいや希望を持って暮らすことができるよう、その妨げとなる諸要因の解消に資するための支援とそれを支えかつ促進するための環境の整備充実が幅広くかつ適切に図られることを旨として、実施されなければならない。
2自殺対策は、自殺が個人的な問題としてのみ捉えられるべきものではなく、その背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ、関係機関、関係団体その他の関係者の連携と協働により、社会的な取組として推進されなければならない。
3自殺対策は、自殺が多様かつ複合的な原因及び背景を有するものであることを踏まえ、単に精神保健的観点からのみならず、自殺の実態に即して実施されるようにしなければならない。
4自殺対策は、自殺の事前予防、自殺発生の危機への対応及び自殺が発生した後又は自殺が未遂に終わった後の事後対応の各段階に応じた効果的な施策として実施されなければならない。
5自殺対策は、保健、医療、福祉、教育、労働その他の関連施策との有機的な連携が図られ、総合的に実施されなければならない。
6自殺対策は、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術、人工知能関連技術等の適切な活用を図りながら展開されるようにするとともに、自殺の防止においては、インターネット等を通じて流通する自殺に関連する情報が及ぼす影響に関し適切な配慮がなされるようにするための取組の促進について特に留意されなければならない。
7こどもに係る自殺対策は、こどもが自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利利益の擁護が図られ、将来にわたって健康で心豊かな生活を送ることができる社会の実現を目指し、社会全体で取り組むことを基本として、行われなければならない。

(国の責務)

第三条国は、前条の基本理念(次条第一項及び第五条において「基本理念」という。)にのっとり、自殺対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
2こどもに係る自殺対策について、内閣総理大臣、文部科学大臣及び厚生労働大臣は、その自殺の実態等を踏まえて適切かつ効果的に策定され、及び実施されるよう、相互に又は関係行政機関の長との間において緊密な連携協力を図りつつ、それぞれの所掌に係る施策を推進しなければならない。

(地方公共団体の責務)

第三条の二地方公共団体は、基本理念にのっとり、自殺対策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2国は、地方公共団体に対し、前項の責務が十分に果たされるように必要な助言その他の援助を行うものとする。

(事業主の責務)

第四条事業主は、国及び地方公共団体が実施する自殺対策に協力するとともに、その雇用する労働者の心の健康の保持を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(学校の責務)

第五条学校は、基本理念にのっとり、関係者との連携を図りつつ、こどもの自殺の防止等に取り組むよう努めるものとする。

(国民の理解)

第六条国民は、生きることの包括的な支援としての自殺対策の重要性に関する理解と関心を深めるよう努めるものとする。
2国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、自殺対策に関する国民の理解を深めるよう必要な措置を講ずるものとする。

(自殺予防週間及び自殺対策強化月間)

第七条国民の間に広く自殺対策の重要性に関する理解と関心を深めるとともに、自殺対策の総合的な推進に資するため、自殺予防週間及び自殺対策強化月間を設ける。
2自殺予防週間は九月十日から九月十六日までとし、自殺対策強化月間は三月とする。
3国及び地方公共団体は、自殺予防週間においては、啓発活動を広く展開するものとし、それにふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。
4国及び地方公共団体は、自殺対策強化月間においては、自殺対策を集中的に展開するものとし、関係機関及び関係団体と相互に連携協力を図りながら、相談事業その他それにふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。

(関係者の連携協力)

第八条国、地方公共団体、医療機関、事業主、学校、自殺対策に係る活動を行う民間の団体その他の関係者は、自殺対策の総合的かつ効果的な推進のため、相互に連携を図りながら協力するものとする。

(名誉及び生活の平穏への配慮)

第九条自殺対策の実施に当たっては、自殺者及び自殺未遂者並びにそれらの者の親族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、いやしくもこれらを不当に侵害することのないようにしなければならない。

(法制上の措置等)

第十条政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

(年次報告)

第十一条政府は、毎年、国会に、我が国における自殺の概況及び講じた自殺対策に関する報告書を提出しなければならない。

第二章 自殺総合対策大綱及び都道府県自殺対策計画等

(自殺総合対策大綱)

第十二条政府は、政府が推進すべき自殺対策の指針として、基本的かつ総合的な自殺対策の大綱(次条及び第二十六条第二項第一号において「自殺総合対策大綱」という。)を定めなければならない。

(都道府県自殺対策計画等)

第十三条都道府県は、自殺総合対策大綱及び地域の実情を勘案して、当該都道府県の区域内における自殺対策についての計画(次項及び次条において「都道府県自殺対策計画」という。)を定めるものとする。
2市町村は、自殺総合対策大綱及び都道府県自殺対策計画並びに地域の実情を勘案して、当該市町村の区域内における自殺対策についての計画(次条において「市町村自殺対策計画」という。)を定めるものとする。

(都道府県及び市町村に対する交付金の交付)

第十四条国は、都道府県自殺対策計画又は市町村自殺対策計画に基づいて当該地域の状況に応じた自殺対策のために必要な事業、その総合的かつ効果的な取組等を実施する都道府県又は市町村に対し、当該事業等の実施に要する経費に充てるため、推進される自殺対策の内容その他の事項を勘案して、厚生労働省令で定めるところにより、予算の範囲内で、交付金を交付することができる。

第三章 基本的施策

(調査研究等の推進及び体制の整備)

第十五条国及び地方公共団体は、自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するため、自殺の実態、自殺の防止、自殺者の親族等の支援の在り方、地域の状況に応じた自殺対策の在り方、自殺対策の実施の状況等又は心の健康の保持増進についての調査研究及び検証並びにその成果の活用を推進するとともに、自殺対策について、先進的な取組に関する情報その他の情報の収集、整理及び提供を行うものとする。
2国及び地方公共団体は、前項の施策の効率的かつ円滑な実施に資するための体制の整備を行うものとする。

(人材の確保等)

第十六条国及び地方公共団体は、大学、専修学校、関係団体等との連携協力を図りながら、自殺対策に係る人材の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講ずるものとする。

(心の健康の保持に係る教育及び啓発の推進等)

第十七条国及び地方公共団体は、職域、学校、地域等における国民の心の健康の保持に係る教育及び啓発の推進並びに相談体制の整備、事業主、学校の教職員等に対する国民の心の健康の保持に関する研修の機会の確保等必要な施策を講ずるものとする。
2国及び地方公共団体は、前項の施策で大学及び高等専門学校に係るものを講ずるに当たっては、大学及び高等専門学校における教育の特性に配慮しなければならない。
3学校は、当該学校に在籍する児童、生徒等の保護者、地域住民その他の関係者との連携を図りつつ、当該学校に在籍する児童、生徒等に対し、各人がかけがえのない個人として共に尊重し合いながら生きていくことについての意識の涵かん養等に資する教育又は啓発、及び困難な事態、強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育又は啓発を行うとともに、自殺の防止等の観点から、心の健康の保持のための健康診断、保健指導等の措置のほか、精神保健に関する知識の向上その他の当該学校に在籍する児童、生徒等の心の健康の保持に係る教育又は啓発を行うよう努めるものとする。

(医療提供体制の整備)

第十八条国及び地方公共団体は、心の健康の保持に支障を生じていることにより自殺のおそれがある者に対し必要な医療が早期かつ適切に提供されるよう、精神疾患を有する者が精神保健に関して学識経験を有する医師(以下この条において「精神科医」という。)の診療を受けやすい環境の整備、精神科医その他の医療従事者に対する自殺の防止等に関する研修の機会の確保、良質かつ適切な精神医療が提供される体制の整備、身体の傷害又は疾病についての診療の初期の段階における当該診療を行う医師と精神科医との適切な連携の確保、救急医療を行う医師と精神科医との適切な連携の確保、精神科医とその地域において自殺対策に係る活動を行うその他の心理、保健福祉等に関する専門家、民間の団体等の関係者との円滑な連携の確保等必要な施策を講ずるものとする。

(自殺発生回避のための体制の整備等)

第十九条国及び地方公共団体は、自殺をする危険性が高い者を早期に発見し、相談その他の自殺の発生を回避するための適切な対処を行う体制の整備及び充実に必要な施策を講ずるものとする。
2前項の規定により整備する体制においては、自殺をする危険性が高い者を早期に発見し、自殺の発生を回避するための適切な対処を行う上で必要な情報が、当該対処を行う関係機関及び関係団体に対し迅速かつ適切に提供されるようにするものとし、そのために必要な措置が講じられなければならない。
3国及び地方公共団体は、自殺の防止の観点から、自殺の助長につながるような情報、物品、設備等についてその適切な管理、配慮等に関して注意を促すために必要な措置を講ずるものとする。

(自殺未遂者等の支援)

第二十条国及び地方公共団体は、自殺未遂者が再び自殺を図ることのないよう、自殺未遂者等への適切かつ継続的な支援を行うために必要な施策を講ずるものとする。

(自殺者の親族等の支援)

第二十一条国及び地方公共団体は、自殺又は自殺未遂が自殺者又は自殺未遂者の親族等に及ぼす深刻な心理的影響、その生活上の不安等が緩和されるよう、当該親族等への総合的な支援を行うために必要な施策を講ずるものとする。

(民間団体の活動の支援)

第二十二条国及び地方公共団体は、民間の団体が行う自殺の防止、自殺者の親族等の支援等に関する活動を支援するため、助言、財政上の措置その他の必要な施策を講ずるものとする。

第四章 協議会

(協議会の設置等)

第二十三条地方公共団体は、第十九条及び第二十条の施策でこどもに係るものを実施するに当たっては、単独で又は共同して、学校、教育委員会、児童相談所、精神保健福祉センター(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)第六条第一項に規定する精神保健福祉センターをいう。)、医療機関、当該地域を管轄する警察署等の関係機関、自殺対策に係る活動を行う民間の団体その他の関係者をもって構成する協議会(次項及び次条において「協議会」という。)を置くことができる。
2前項の規定により協議会を設置する地方公共団体は、協議会において次条第一項の規定によりこどもの自殺の防止のための対処、支援等の措置に関し協議を行うときは、あらかじめ、協議会を構成する者に、当該協議を行う事項を通知するものとする。
3前項の規定による通知を受けた者は、正当な理由がある場合を除き、当該通知に係る事項の協議に応じなければならない。

(協議会の事務等)

第二十四条協議会は、前条第一項に規定する施策を適切かつ効果的に実施するため、こどもの自殺の防止等について必要な情報の交換を行うとともに、必要な対処、支援等の措置に関する協議を行うものとする。
2協議会は、前項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるときは、関係行政機関その他の関係者に対して、資料又は情報の提供、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。
3内閣総理大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣その他の国の関係行政機関の長及び都道府県は、こどもの自殺の防止等に関し、協議会を構成する者の求めに応じて、必要な助言、資料の提供その他の協力を行うことができる。
4次の各号に掲げる協議会を構成する者の区分に従い、当該各号に定める者は、正当な理由がなく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
一国又は地方公共団体の機関当該機関の職員又は職員であった者
二法人当該法人の役員若しくは職員又はこれらの者であった者
三前二号に掲げる者以外の者協議会を構成する者又は当該者であった者
5前条及び前各項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会が定める。

(罰則)

第二十五条前条第四項の規定に違反した者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

第五章 自殺総合対策会議等

(設置及び所掌事務)

第二十六条厚生労働省に、特別の機関として、自殺総合対策会議(以下「会議」という。)を置く。
2会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一自殺総合対策大綱の案を作成すること。
二自殺対策について必要な関係行政機関相互の調整をすること。
三前二号に掲げるもののほか、自殺対策に関する重要事項について審議し、及び自殺対策の実施を推進すること。

(会議の組織等)

第二十七条会議は、会長及び委員をもって組織する。
2会長は、厚生労働大臣をもって充てる。
3委員は、厚生労働大臣以外の国務大臣のうちから、厚生労働大臣の申出により、内閣総理大臣が指定する者をもって充てる。
4会議に、幹事を置く。
5幹事は、関係行政機関の職員のうちから、厚生労働大臣が任命する。
6幹事は、会議の所掌事務について、会長及び委員を助ける。
7前各項に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

(必要な組織の整備)

第二十八条前二条に定めるもののほか、政府は、自殺対策を推進するにつき、必要な組織の整備を図るものとする。

附 則

(施行期日)

第一条この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(検討)

第二条自殺対策については、自殺に関する状況の変化、自殺対策に係る諸施策の実施の状況、自殺対策等に関する最新の知見その他社会経済情勢の変化を踏まえ、適宜、その在り方に関して検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるものとする。

附 則(平成二七年九月一一日法律第六六号)抄

(施行期日)

第一条この法律は、平成二十八年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一附則第七条の規定公布の日

(自殺対策基本法の一部改正に伴う経過措置)

第六条この法律の施行の際現に第二十七条の規定による改正前の自殺対策基本法第二十条第一項の規定により置かれている自殺総合対策会議は、第二十七条の規定による改正後の自殺対策基本法第二十条第一項の規定により置かれる自殺総合対策会議となり、同一性をもって存続するものとする。

(政令への委任)

第七条附則第二条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。

附 則(平成二八年三月三〇日法律第一一号)抄

(施行期日)

1この法律は、平成二十八年四月一日から施行する。

附 則(令和七年六月一一日法律第六四号)抄

(施行期日)

1この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、目次の改正規定、第十二条の改正規定、第十七条第三項の改正規定、第二十五条を第二十八条とし、第二十四条を第二十七条とし、第二十三条を第二十六条とする改正規定、第四章を第五章とし、第三章の次に一章を加える改正規定及び次項から附則第四項までの規定は、令和八年四月一日から施行する。
索引
  • 第一条(目的)
  • 第二条(基本理念)
  • 第三条(国の責務)
  • 第三条の二(地方公共団体の責務)
  • 第四条(事業主の責務)
  • 第五条(学校の責務)
  • 第六条(国民の理解)
  • 第七条(自殺予防週間及び自殺対策強化月間)
  • 第八条(関係者の連携協力)
  • 第九条(名誉及び生活の平穏への配慮)
  • 第十条(法制上の措置等)
  • 第十一条(年次報告)
  • 第十二条(自殺総合対策大綱)
  • 第十三条(都道府県自殺対策計画等)
  • 第十四条(都道府県及び市町村に対する交付金の交付)
  • 第十五条(調査研究等の推進及び体制の整備)
  • 第十六条(人材の確保等)
  • 第十七条(心の健康の保持に係る教育及び啓発の推進等)
  • 第十八条(医療提供体制の整備)
  • 第十九条(自殺発生回避のための体制の整備等)
  • 第二十条(自殺未遂者等の支援)
  • 第二十一条(自殺者の親族等の支援)
  • 第二十二条(民間団体の活動の支援)
  • 第二十三条(協議会の設置等)
  • 第二十四条(協議会の事務等)
  • 第二十五条(罰則)
  • 第二十六条(設置及び所掌事務)
  • 第二十七条(会議の組織等)
  • 第二十八条(必要な組織の整備)
  • 附 則
  • 附 則(平成二七年九月一一日法律第六六号)抄
  • 附 則(平成二八年三月三〇日法律第一一号)抄
  • 附 則(令和七年六月一一日法律第六四号)抄
履歴
未確定
令和7年法律第64号
令和8年4月1日
令和7年法律第64号
平成28年4月1日
平成28年法律第11号
© Megaptera Inc.