(生息地等保護区)
第三十六条環境大臣は、国内希少野生動植物種の保存のため必要があると認めるときは、その個体の生息地又は生育地及びこれらと一体的にその保護を図る必要がある区域であって、その個体の分布状況及び生態その他その個体の生息又は生育の状況を勘案してその国内希少野生動植物種の保存のため重要と認めるものを、生息地等保護区として指定することができる。
2前項の規定による指定(以下この条において「指定」という。)又はその変更は、その区域及び名称、指定又はその変更に係る国内希少野生動植物種並びにその区域の保護に関する指針を定めてするものとする。
3環境大臣は、指定をし、又はその変更をしようとする場合において、必要があると認めるときは、指定の期間を定めることができる。
4環境大臣は、指定をし、又はその変更をしようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、中央環境審議会及び関係地方公共団体の意見を聴かなければならない。
5環境大臣は、指定をし、又はその変更をしようとするとき(指定の変更にあっては、区域を拡張し、又は指定の期間を定め、若しくは延長する場合に限る。次項及び第七項において同じ。)は、あらかじめ、環境省令で定めるところにより、その旨を公告し、公告した日から起算して十四日を経過する日までの間、その区域及び名称並びにその区域の保護に関する指針の案(次項及び第七項において「指定案」という。)並びに指定の期間(第三項の規定により指定の期間が定められている場合に限る。)を公衆の縦覧に供しなければならない。
6前項の規定による公告があったときは、指定をし、又はその変更をしようとする区域の住民及び利害関係人は、同項に規定する期間が経過する日までの間に、環境大臣に指定案についての意見書を提出することができる。
7環境大臣は、指定案について異議がある旨の前項の意見書の提出があったときその他指定又はその変更に関し広く意見を聴く必要があると認めるときは、公聴会を開催するものとする。
8環境大臣は、指定をし、又はその変更をするときは、その旨並びにその区域及び名称、その区域の保護に関する指針並びに指定の期間(第三項の規定により指定の期間が定められている場合に限る。)を官報で公示しなければならない。
9指定又はその変更は、前項の規定による公示によってその効力を生ずる。
10環境大臣は、生息地等保護区に係る国内希少野生動植物種の個体の生息又は生育の状況の変化その他の事情の変化により指定の必要がなくなったと認めるとき又は指定を継続することが適当でないと認めるときは、指定を解除しなければならない。
11第四項、第八項及び第九項の規定は、前項の規定による指定の解除について準用する。この場合において、第八項中「その旨並びにその区域及び名称、その区域の保護に関する指針並びに指定の期間(第三項の規定により指定の期間が定められている場合に限る。)」とあるのは「その旨及び解除に係る指定の区域」と、第九項中「前項の規定による公示」とあるのは「第十一項において準用する前項の規定による公示」と読み替えるものとする。
12生息地等保護区の区域内(次条第四項第八号に掲げる行為については、同号に規定する湖沼又は湿原の周辺一キロメートルの区域内)において同項各号に掲げる行為をする者は、第二項の指針に留意しつつ、国内希少野生動植物種の保存に支障を及ぼさない方法でその行為をしなければならない。
(管理地区)
第三十七条環境大臣は、生息地等保護区の区域内で国内希少野生動植物種の保存のため特に必要があると認める区域を管理地区として指定することができる。
2環境大臣は、管理地区に係る国内希少野生動植物種の個体の生息又は生育の状況の変化その他の事情の変化により前項の規定による指定の必要がなくなったと認めるとき又はその指定を継続することが適当でないと認めるときは、その指定を解除しなければならない。
3前条第二項及び第四項から第九項までの規定は第一項の規定による指定及びその変更について、同条第四項、第八項及び第九項の規定は前項の規定による指定の解除について、同条第八項の規定は次項の規定による指定について準用する。この場合において、同条第二項中「その区域及び名称、指定又はその変更に係る国内希少野生動植物種並びにその区域の保護に関する指針」とあるのは第一項の規定による指定及びその変更については「その区域」と、同条第五項中「区域を拡張し、又は指定の期間を定め、若しくは延長する場合」とあるのは第一項の規定による指定及びその変更については「区域を拡張する場合」と、「並びに指定の期間(第三項の規定により指定の期間が定められている場合に限る。)を公衆」とあるのは第一項の規定による指定及びその変更については「を公衆」と、同条第八項中「その旨並びにその区域及び名称、その区域の保護に関する指針並びに指定の期間(第三項の規定により指定の期間が定められている場合に限る。)」とあるのは第一項の規定による指定及びその変更については「その旨及びその区域」と、前項の規定による指定の解除については「その旨及び解除に係る指定の区域」と、次項の規定による指定については「その旨及びその区域並びにその区域ごとの期間」と、同条第九項中「前項の規定による公示」とあるのは「次条第三項において準用する前項の規定による公示」と読み替えるものとする。
4管理地区の区域内(第八号に掲げる行為については、同号に規定する湖沼又は湿原の周辺一キロメートルの区域内。第四十条第一項及び第四十一条第一項において同じ。)においては、次に掲げる行為(第十号から第十四号までに掲げる行為については、環境大臣が指定する区域内及びその区域ごとに指定する期間内においてするものに限る。)は、環境大臣の許可を受けなければ、してはならない。
一建築物その他の工作物を新築し、改築し、又は増築すること。
二宅地を造成し、土地を開墾し、その他土地(水底を含む。)の形質を変更すること。
五河川、湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること。
七国内希少野生動植物種の個体の生息又は生育に必要なものとして環境大臣が指定する野生動植物の種の個体その他の物の捕獲等をすること。
八管理地区の区域内の湖沼若しくは湿原であって環境大臣が指定するもの又はこれらに流入する水域若しくは水路に汚水又は廃水を排水設備を設けて排出すること。
九道路、広場、田、畑、牧場及び宅地の区域以外の環境大臣が指定する区域内において、車馬若しくは動力船を使用し、又は航空機を着陸させること。
十第七号の規定により環境大臣が指定した野生動植物の種の個体その他の物以外の野生動植物の種の個体その他の物の捕獲等をすること。
十一国内希少野生動植物種の個体の生息又は生育に支障を及ぼすおそれのある動植物の種として環境大臣が指定するものの個体を放ち、又は植栽し、若しくはその種子をまくこと。
十二国内希少野生動植物種の個体の生息又は生育に支障を及ぼすおそれのあるものとして環境大臣が指定する物質を散布すること。
十四国内希少野生動植物種の個体の生息又は生育に支障を及ぼすおそれのある方法として環境大臣が定める方法によりその個体を観察すること。
5前項の許可を受けようとする者は、環境省令で定めるところにより、環境大臣に許可の申請をしなければならない。
6環境大臣は、前項の申請に係る行為が第三項において準用する前条第二項の指針に適合しないものであるときは、第四項の許可をしないことができる。
7環境大臣は、国内希少野生動植物種の保存のため必要があると認めるときは、その必要の限度において、第四項の許可に条件を付することができる。
8第四項の規定により同項各号に掲げる行為が規制されることとなった時において既に同項各号に掲げる行為に着手している者は、その規制されることとなった日から起算して三月を経過する日までの間に環境大臣に環境省令で定める事項を届け出たときは、同項の規定にかかわらず、引き続きその行為をすることができる。
9次に掲げる行為については、第四項の規定は、適用しない。
二通常の管理行為又は軽易な行為で環境省令で定めるもの
三木竹の伐採で、環境大臣が農林水産大臣と協議して管理地区ごとに指定する方法及び限度内においてするもの
10前項第一号に掲げる行為であって第四項各号に掲げる行為に該当するものをした者は、その日から起算して十四日を経過する日までの間に環境大臣にその旨を届け出なければならない。
(立入制限地区)
第三十八条環境大臣は、管理地区の区域内で国内希少野生動植物種の個体の生息又は生育のため特にその保護を図る必要があると認める場所を、立入制限地区として指定することができる。
2環境大臣は、前項の規定による指定をし、又はその変更をしようとするとき(指定の変更にあっては、区域の拡張に限る。)は、その場所の土地の所有者又は占有者(正当な権原を有する者に限る。次項及び第四十二条第二項において同じ。)の同意を得るとともに、関係行政機関の長に協議しなければならない。
3環境大臣は、土地の所有者又は占有者が正当な理由により第一項の規定による指定を解除するよう求めたとき、又はその指定の必要がなくなったと認めるときは、その指定を解除しなければならない。
4何人も、環境大臣が定める期間内は、立入制限地区の区域内に立ち入ってはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一非常災害に対する必要な応急措置としての行為をするために立ち入る場合
二通常の管理行為又は軽易な行為で環境省令で定めるものをするために立ち入る場合
三前二号に掲げるもののほか、環境大臣がやむを得ない事由があると認めて許可をした場合
5第三十六条第八項及び第九項の規定は第一項の規定による指定及びその変更並びに第三項の規定による指定の解除について、前条第五項及び第七項の規定は前項第三号の許可について準用する。この場合において、第三十六条第八項中「その旨並びにその区域及び名称、その区域の保護に関する指針並びに指定の期間(第三項の規定により指定の期間が定められている場合に限る。)」とあるのは第一項の規定による指定及びその変更については「その旨及びその区域」と、第三項の規定による指定の解除については「その旨及び解除に係る指定の区域」と、同条第九項中「前項の規定による公示」とあるのは「第三十八条第五項において準用する前項の規定による公示」と読み替えるものとする。
(監視地区)
第三十九条生息地等保護区の区域で管理地区の区域に属さない部分(次条第一項及び第四十一条第一項において「監視地区」という。)の区域内において第三十七条第四項第一号から第五号までに掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ、環境大臣に環境省令で定める事項を届け出なければならない。
2環境大臣は、前項の規定による届出(以下この条において「届出」という。)があった場合において届出に係る行為が第三十六条第二項の指針に適合しないものであるときは、届出をした者に対し、届出に係る行為をすることを禁止し、若しくは制限し、又は必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
3前項の規定による命令は、届出があった日から起算して三十日(三十日を経過する日までの間に同項の規定による命令をすることができない合理的な理由があるときは、届出があった日から起算して六十日を超えない範囲内で環境大臣が定める期間)を経過した後又は第五項ただし書の規定による通知をした後は、することができない。
4環境大臣は、前項の規定により期間を定めたときは、これに係る届出をした者に対し、遅滞なくその旨及びその理由を通知しなければならない。
5届出をした者は、届出をした日から起算して三十日(第三項の規定により環境大臣が期間を定めたときは、その期間)を経過した後でなければ、届出に係る行為に着手してはならない。ただし、環境大臣が国内希少野生動植物種の保存に支障を及ぼすおそれがないと認めてその者に通知したときは、この限りでない。
6次に掲げる行為については、第一項の規定は、適用しない。
二通常の管理行為又は軽易な行為で環境省令で定めるもの
三第三十六条第一項の規定による指定又はその変更がされた時において既に着手している行為
(措置命令等)
第四十条環境大臣は、国内希少野生動植物種の保存のため必要があると認めるときは、管理地区の区域内において第三十七条第四項各号に掲げる行為をしている者又は監視地区の区域内において同項第一号から第五号までに掲げる行為をしている者に対し、その行為の実施方法について指示をすることができる。
2環境大臣は、第三十七条第四項若しくは第三十八条第四項の規定に違反した者、第三十七条第七項(第三十八条第五項において準用する場合を含む。)の規定により付された条件に違反した者、前条第一項の規定による届出をしないで同項に規定する行為をした者又は同条第二項の規定による命令に違反した者がその違反行為によって国内希少野生動植物種の個体の生息地又は生育地の保護に支障を及ぼした場合において、国内希少野生動植物種の保存のため必要があると認めるときは、これらの者に対し、相当の期限を定めて、原状回復を命じ、その他国内希少野生動植物種の個体の生息地又は生育地の保護のため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
3環境大臣は、前項の規定による命令をした場合において、その命令をされた者がその命令に係る期限までにその命令に係る措置をとらないときは、自ら原状回復をし、その他国内希少野生動植物種の個体の生息地又は生育地の保護のため必要な措置をとるとともに、その費用の全部又は一部をその者に負担させることができる。
(報告徴収及び立入検査等)
第四十一条環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、管理地区の区域内において第三十七条第四項各号に掲げる行為をした者又は監視地区の区域内において同項第一号から第五号までに掲げる行為をした者に対し、その行為の実施状況その他必要な事項について報告を求めることができる。
2環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、生息地等保護区の区域内において前項に規定する者が所有し、又は占有する土地に立ち入り、その者がした行為の実施状況について検査させ、若しくは関係者に質問させ、又はその行為が国内希少野生動植物種の保存に及ぼす影響について調査をさせることができる。
3前項の規定による立入検査又は立入調査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4第一項及び第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(実地調査)
第四十二条環境大臣は、第三十六条第一項、第三十七条第一項又は第三十八条第一項の規定による指定又はその変更をするための実地調査に必要な限度において、その職員に、他人の土地に立ち入らせることができる。
2環境大臣は、その職員に前項の規定による立入りをさせようとするときは、あらかじめ、土地の所有者又は占有者にその旨を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。
3第一項の規定による立入りをする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4土地の所有者又は占有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入りを拒み、又は妨げてはならない。
(損失の補償)
第四十四条国は、第三十七条第四項の許可を受けることができないため、同条第七項の規定により条件を付されたため又は第三十九条第二項の規定による命令をされたため損失を受けた者に対し、通常生ずべき損失の補償をする。
2前項の補償を受けようとする者は、環境大臣にその請求をしなければならない。
3環境大臣は、前項の請求を受けたときは、補償をすべき金額を決定し、その請求をした者に通知しなければならない。
4前項の規定による金額の決定に不服がある者は、同項の規定による通知を受けた日から六月を経過する日までの間に、訴えをもってその増額の請求をすることができる。