(他の手続の中止命令等)
第二十五条裁判所は、承認援助手続の目的を達成するために必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、外国倒産処理手続の承認の決定と同時に又はその決定後、次に掲げる手続の中止を命ずることができる。
一強制執行、仮差押え又は仮処分(以下「強制執行等」という。)の手続で、債務者の財産(日本国内にあるものに限る。以下この項において同じ。)に対して既にされているもの
三債務者の財産に関する事件で行政庁に係属しているものの手続
2裁判所は、外国倒産処理手続の承認の申立てがされた場合には、当該申立てについて決定をする前であっても、前項の規定による中止の命令をすることができる。外国倒産処理手続の承認の申立てを棄却する決定に対して前条第一項の即時抗告がされたときも、同様とする。
3前項の規定による中止の命令は、外国倒産処理手続の承認の申立てを棄却する決定又は同項の即時抗告を棄却する決定があったときは、その効力を失う。
4裁判所は、第一項又は第二項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。
5裁判所は、承認援助手続の目的を達成するために特に必要があると認めるときは、債務者(外国管財人がない場合に限る。)若しくは承認管財人の申立てにより又は職権で、担保を立てさせて、又は立てさせないで、第一項又は第二項の規定により中止した強制執行等の手続の取消しを命ずることができる。ただし、同項の規定により中止した強制執行等の手続の取消しについては、外国倒産処理手続の承認の決定があった後に限る。
6第一項又は第二項の規定による中止の命令、第四項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
8第六項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第八条第三項本文の規定は、適用しない。
9第二十三条第三項各号に掲げる者には、第二項の規定による中止の命令があった旨を通知しなければならない。ただし、同条第三項ただし書に規定する規定による通知が既にされている者については、この限りでない。
(処分の禁止、弁済の禁止その他の処分)
第二十六条裁判所は、承認援助手続の目的を達成するために必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、外国倒産処理手続の承認の決定と同時に又はその決定後、債務者の日本国内における業務及び財産に関し、処分の禁止を命ずる処分、弁済の禁止を命ずる処分その他の処分をすることができる。
2裁判所は、外国倒産処理手続の承認の申立てがされた場合には、当該申立てについて決定をする前であっても、前項の規定による処分をすることができる。外国倒産処理手続の承認の申立てを棄却する決定に対して第二十四条第一項の即時抗告がされたときも、同様とする。
3前項の規定による処分は、外国倒産処理手続の承認の申立てを棄却する決定又は同項の即時抗告を棄却する決定があったときは、その効力を失う。
4裁判所は、第一項又は第二項の規定による処分を変更し、又は取り消すことができる。
5裁判所が第一項又は第二項の規定により債務者が債権者に対して弁済その他の債務を消滅させる行為をすることの禁止を命ずる処分をした場合には、債権者は、承認援助手続の関係においては、当該処分に反してされた弁済その他の債務を消滅させる行為の効力を主張することができない。ただし、債権者が、その行為の当時、当該処分がされたことを知っていたときに限る。
6前条第六項から第八項までの規定は第一項又は第二項の規定による処分及び第四項の規定による決定について、同条第八項の規定はこの項において準用する同条第六項の即時抗告についての裁判があった場合について、同条第九項の規定は第二項の規定による処分があった場合について準用する。
(担保権の実行手続等の中止命令)
第二十七条裁判所は、債権者の一般の利益に適合し、かつ、債務者の財産につき担保権を有する者(以下この条において「担保権者」という。)又は企業担保権の実行手続の申立人に不当な損害を及ぼすおそれがないと認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、外国倒産処理手続の承認の決定と同時に又はその決定後、相当の期間を定めて、債務者の財産に対して既にされている当該担保権の実行の手続の中止(債権を目的とする質権の実行の禁止を含む。)又は当該企業担保権の実行手続の中止を命ずることができる。
2裁判所は、外国倒産処理手続の承認の申立てがされた場合には、当該申立てについて決定をする前であっても、前項の規定による中止の命令をすることができる。外国倒産処理手続の承認の申立てを棄却する決定に対して第二十四条第一項の即時抗告がされたときも、同様とする。
3前項の規定による中止の命令は、外国倒産処理手続の承認の申立てを棄却する決定又は同項の即時抗告を棄却する決定があったときは、その効力を失う。
4第一項又は第二項の規定による中止の命令(企業担保権の実行手続に係るものを除く。)は、担保権者に不当な損害を及ぼさないために必要な条件を付して発することができる。
5裁判所は、第一項又は第二項の規定による中止の命令(債権を目的とする質権の実行の手続の中止(実行の禁止を含む。次項及び次条第一項において同じ。)の命令を除く。)を発する場合には、担保権者又は企業担保権の実行手続の申立人の意見を聴かなければならない。
6裁判所は、第一項又は第二項の規定による債権を目的とする質権の実行の手続の中止の命令を発した場合には、速やかに、質権者の意見を聴かなければならない。ただし、あらかじめ質権者の意見を聴いたときは、この限りでない。
7裁判所は、第一項又は第二項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。
8第一項又は第二項の規定による中止の命令及び前項の規定による変更の決定に対しては、担保権者又は企業担保権の実行手続の申立人に限り、即時抗告をすることができる。
10第二十五条第八項の規定は第一項又は第二項の規定による中止の命令、第七項の規定による決定及び第八項の即時抗告についての裁判があった場合について、同条第九項の規定は第二項の規定による中止の命令があった場合について準用する。
11債権を目的とする質権の実行を禁止する第一項又は第二項の規定による中止の命令が発せられたときは、当該質権の被担保債権については、当該命令が効力を失った日の翌日から二月を経過する日までの間は、時効は、完成しない。
(強制執行等禁止命令)
第二十八条裁判所は、承認援助手続の目的を達成するために必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、外国倒産処理手続の承認の決定と同時に又はその決定後、すべての債権者に対し、債務者の財産に対する強制執行等の禁止を命ずることができる。この場合において、裁判所は、相当と認めるときは、一定の範囲に属する債権に基づく強制執行等又は一定の範囲に属する債務者の財産に対する強制執行等を禁止の命令の対象から除外することができる。
2前項の規定による禁止の命令(以下「強制執行等禁止命令」という。)が発せられた場合には、債務者の財産に対して既にされている強制執行等(当該命令により禁止されることとなるものに限る。)の手続は、中止する。
3裁判所は、強制執行等禁止命令を変更し、又は取り消すことができる。
4裁判所は、承認援助手続の目的を達成するために特に必要があると認めるときは、債務者(外国管財人がいない場合に限る。)若しくは承認管財人の申立てにより又は職権で、担保を立てさせて、又は立てさせないで、第二項の規定により中止した手続の取消しを命ずることができる。
5強制執行等禁止命令、第三項の規定による決定及び前項の規定による取消しの命令に対しては、即時抗告をすることができる。
7強制執行等禁止命令が発せられたときは、債務者に対する債権(当該命令により強制執行等が禁止されているものに限る。)については、当該命令が効力を失った日の翌日から二月を経過する日までの間は、時効は、完成しない。
(強制執行等禁止命令に関する公告及び送達等)
第二十九条強制執行等禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定があった場合には、その主文を公告し、かつ、その裁判書を外国管財人等、承認管財人及び申立人に送達しなければならない。
2裁判所は、外国倒産処理手続の承認の決定と同時に強制執行等禁止命令を発したときは、第二十三条第一項の規定による公告には、強制執行等禁止命令の主文をも掲げなければならない。この場合においては、前項の規定による公告は、することを要しない。
3第一項の場合において、同項の裁判書の送達を受けた外国管財人等は、当該裁判書の内容を知れている債権者に周知させるため必要な措置を講じなければならない。
4強制執行等禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定は、外国管財人等(承認管財人が選任されている場合にあっては、承認管財人)に対する裁判書の送達がされた時から、効力を生ずる。
5前条第四項の規定による取消しの命令及び同条第五項の即時抗告についての裁判(強制執行等禁止命令を変更し、又は取り消す旨の決定を除く。)があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
(強制執行等禁止命令の解除)
第三十条裁判所は、強制執行等禁止命令を発した場合において、強制執行等の申立人である債権者に不当な損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該債権者の申立てにより、当該債権者に対しては強制執行等禁止命令を解除する旨の決定をすることができる。この場合には、当該債権者は、債務者の財産に対する強制執行等をすることができ、強制執行等禁止命令が発せられる前に当該債権者がした強制執行等の手続は、続行する。
2前項の規定による解除の決定を受けた者に対する第二十八条第七項の規定の適用については、同項中「当該命令が効力を失った日」とあるのは、「第三十条第一項の規定による解除の決定が効力を生じた日」とする。
3第一項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5第一項の申立てについての裁判及び第三項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第八条第三項本文の規定は、適用しない。
(管理命令)
第三十二条裁判所は、承認援助手続の目的を達成するために必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、外国倒産処理手続の承認の決定と同時に又はその決定後、債務者の日本国内における業務及び財産に関し、承認管財人による管理を命ずる処分をすることができる。
2裁判所は、前項の処分(以下「管理命令」という。)をする場合には、当該管理命令において、一人又は数人の承認管財人を選任しなければならない。
4裁判所は、管理命令を変更し、又は取り消すことができる。
5管理命令及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(管理命令に関する公告及び送達等)
第三十三条裁判所は、管理命令を発したときは、次項に規定する場合を除き、次に掲げる事項を公告しなければならない。
二債務者の財産(日本国内にあるものに限る。)の所持者及び債務者に対して債務(日本国内にある債権に係るものに限る。)を負担する者(第六項において「財産所持者等」という。)は、債務者にその財産を交付し、又は弁済をしてはならない旨
2裁判所は、外国倒産処理手続の承認の決定と同時に管理命令を発したときは、第二十三条第一項の規定による公告には、前項に掲げる事項をも掲げなければならない。
3裁判所は、管理命令を変更し、又は取り消す旨の決定をした場合には、その旨を公告しなければならない。
4管理命令、前項の決定又は前条第五項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
5管理命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定は、承認管財人に対する裁判書の送達がされた時から、効力を生ずる。
6管理命令が発せられた場合には第一項に掲げる事項を、第三項の決定があった場合又は管理命令が発せられた後に外国倒産処理手続の承認の決定を取り消す決定が確定した場合にはその旨を、知れている財産所持者等に通知しなければならない。
7第八条第四項の規定は、管理命令に関し公告及び送達をしなければならない場合については、適用しない。
(管理命令が発せられた場合の債務者の財産関係の訴えの取扱い)
第三十六条管理命令が発せられた場合には、債務者の日本国内にある財産に関する訴えについては、承認管財人を原告又は被告とする。
2管理命令が発せられた場合には、債務者の日本国内にある財産に関する訴訟手続で債務者が当事者であるものは、中断する。
3前項の規定により中断した訴訟手続は、承認管財人においてこれを受け継ぐことができる。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
4第二項の規定により中断した訴訟手続について前項の規定による受継があるまでに管理命令が効力を失ったときは、債務者は、当該訴訟手続を当然に受継する。
5第二項の規定により中断した訴訟手続について第三項の規定による受継がされた後に管理命令が効力を失ったときは、当該訴訟手続は、中断する。
6前項の場合においては、債務者において当該訴訟手続を受け継がなければならない。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
(承認管財人による調査)
第四十一条承認管財人は、次に掲げる者に対して債務者の日本国内における業務及び財産の状況につき報告を求め、債務者の帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
三債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役及び清算人
2前項の規定は、同項各号(第一号を除く。)に掲げる者であった者について準用する。
3承認管財人は、その職務を行うため必要があるときは、債務者の子会社等(次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める法人をいう。次項において同じ。)に対して、その日本国内における業務及び財産の状況につき報告を求め、又はその帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
一債務者が株式会社である場合債務者の子会社(会社法第二条第三号に規定する子会社をいう。)
二債務者が株式会社以外のものである場合債務者が株式会社の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。次項において同じ。)の過半数を有する場合における当該株式会社
4債務者(株式会社以外のものに限る。以下この項において同じ。)の子会社等又は債務者及びその子会社等が他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には、前項の規定の適用については、当該他の株式会社を当該債務者の子会社等とみなす。
(郵便物等の管理)
第四十三条裁判所は、承認管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、信書の送達の事業を行う者に対し、債務者にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第三項に規定する信書便物(次条において「郵便物等」という。)を承認管財人に配達すべき旨を嘱託することができる。
2裁判所は、債務者の申立てにより又は職権で、承認管財人の意見を聴いて、前項に規定する嘱託を取り消し、又は変更することができる。
3管理命令が効力を失ったときは、裁判所は、第一項に規定する嘱託を取り消さなければならない。
4第一項又は第二項の規定による決定及び同項の申立てを却下する裁判に対しては、外国管財人等又は承認管財人は、即時抗告をすることができる。
5第一項の規定による決定に対する前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
(管理命令後の債務者の行為等)
第四十八条承認管財人が管理及び処分をする権利を有する債務者の財産に関して、債務者が管理命令が発せられた後にした法律行為は、承認援助手続の関係においては、その効力を主張することができない。ただし、相手方がその行為の当時管理命令が発せられた事実を知らなかったときは、この限りでない。
2日本国内にある債権について、管理命令が発せられた後に、その事実を知らないで日本国内において債務者にした弁済は、承認援助手続の関係においても、その効力を主張することができる。
3前項の債権について、管理命令が発せられた後に、その事実を知って日本国内において債務者にした弁済は、承認管財人が管理及び処分をする権利を有する財産が受けた利益の限度においてのみ、承認援助手続の関係において、その効力を主張することができる。
4前三項の規定の適用については、第三十三条第一項の規定による公告(外国倒産処理手続の承認の決定と同時に管理命令が発せられた場合には、第二十三条第一項の規定による公告)前においてはその事実を知らなかったものと推定し、その公告後においてはその事実を知っていたものと推定する。
(承認管財人の報酬等)
第四十九条承認管財人及び承認管財人代理は、費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができる。ただし、外国管財人である者については、この限りでない。
2承認管財人及び承認管財人代理は、その選任後、債務者に対する債権又は債務者の株式その他の債務者に対する出資による持分を譲り受け、又は譲り渡すには、裁判所の許可を得なければならない。
3承認管財人及び承認管財人代理は、前項の許可を得ないで同項に規定する行為をしたときは、費用及び報酬の支払を受けることができない。
4第一項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(保全管理命令)
第五十一条裁判所は、外国倒産処理手続の承認の申立てがされた場合において、承認援助手続の目的を達成するために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、当該外国倒産処理手続の承認の申立てにつき決定があるまでの間、債務者の日本国内における業務及び財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができる。
2裁判所は、前項の処分(以下「保全管理命令」という。)をする場合には、当該保全管理命令において、一人又は数人の保全管理人を選任しなければならない。
3前二項の規定は、外国倒産処理手続の承認の申立てを棄却する決定に対して第二十四条第一項の即時抗告がされた場合について準用する。
4裁判所は、保全管理命令を変更し、又は取り消すことができる。
5保全管理命令及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(保全管理命令に関する公告及び送達等)
第五十二条裁判所は、保全管理命令を発したときは、その旨を公告しなければならない。保全管理命令を変更し、又は取り消す旨の決定があった場合も、同様とする。
2保全管理命令、前条第四項の規定による決定及び同条第五項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
3保全管理命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定は、保全管理人に対する裁判書の送達がされた時から、効力を生ずる。
4第八条第四項の規定は、保全管理命令に関し公告及び送達をしなければならない場合については、適用しない。
5第二十五条第九項の規定は、保全管理命令があった場合について準用する。