(定義)
第二条この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
一つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所若しくは通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
二その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
三面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
五電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
六汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
七その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
八その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。
2前項第五号の「電子メールの送信等」とは、次の各号のいずれかに掲げる行為(電話をかけること及びファクシミリ装置を用いて送信することを除く。)をいう。
一電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。次号において同じ。)の送信を行うこと。
二前号に掲げるもののほか、特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、その第三者が当該個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものの当該機能を利用する行為をすること。
3この法律において「位置情報無承諾取得等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
一その承諾を得ないで、その所持する位置情報記録・送信装置(当該装置の位置に係る位置情報(地理空間情報活用推進基本法(平成十九年法律第六十三号)第二条第一項第一号に規定する位置情報をいう。以下この号において同じ。)を記録し、又は送信する機能を有する装置で政令で定めるものをいう。以下この号及び次号において同じ。)(同号に規定する行為がされた位置情報記録・送信装置を含む。)により記録され、又は送信される当該位置情報記録・送信装置の位置に係る位置情報を政令で定める方法により取得すること。
二その承諾を得ないで、その所持する物に位置情報記録・送信装置を取り付けること、位置情報記録・送信装置を取り付けた物を交付することその他その移動に伴い位置情報記録・送信装置を移動し得る状態にする行為として政令で定める行為をすること。
4この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(第一項第一号から第四号まで及び第五号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)又は位置情報無承諾取得等を反復してすることをいう。
(警告)
第四条警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長(以下「警察本部長等」という。)は、つきまとい等又は位置情報無承諾取得等をされたとして当該つきまとい等又は位置情報無承諾取得等に係る警告を求める旨の申出を受けた場合において、当該申出に係る前条の規定に違反する行為があり、かつ、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、更に反復して当該行為をしてはならない旨を警告することができる。
2一の警察本部長等が前項の規定による警告(以下「警告」という。)をした場合には、他の警察本部長等は、当該警告を受けた者に対し、当該警告に係る前条の規定に違反する行為について警告をすることができない。
3警察本部長等は、警告をしたときは、速やかに、当該警告の内容及び日時を第一項の申出をした者に通知しなければならない。
4警察本部長等は、警告をしなかったときは、速やかに、その旨及びその理由を第一項の申出をした者に書面により通知しなければならない。
5前各項に定めるもののほか、第一項の申出の受理及び警告の実施に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。
(禁止命令等)
第五条都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、第三条の規定に違反する行為があった場合において、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、その相手方の申出により、又は職権で、当該行為をした者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、次に掲げる事項を命ずることができる。
二更に反復して当該行為が行われることを防止するために必要な事項
2公安委員会は、前項の規定による命令(以下「禁止命令等」という。)をしようとするときは、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
3公安委員会は、第一項に規定する場合において、第三条の規定に違反する行為の相手方の身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害されることを防止するために緊急の必要があると認めるときは、前項及び行政手続法第十三条第一項の規定にかかわらず、聴聞又は弁明の機会の付与を行わないで、当該相手方の申出により(当該相手方の身体の安全が害されることを防止するために緊急の必要があると認めるときは、その申出により、又は職権で)、禁止命令等をすることができる。この場合において、当該禁止命令等をした公安委員会は、意見の聴取を、当該禁止命令等をした日から起算して十五日以内(当該禁止命令等をした日から起算して十五日以内に次項において準用する同法第十五条第三項の規定により意見の聴取の通知を行った場合にあっては、当該通知が到達したものとみなされる日から十四日以内)に行わなければならない。
4行政手続法第三章第二節(第二十八条を除く。)の規定は、公安委員会が前項後段の規定による意見の聴取を行う場合について準用する。この場合において、同法第十五条第一項中「聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて」とあるのは「速やかに」と、同法第二十六条中「不利益処分の決定をするときは」とあるのは「ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成十二年法律第八十一号)第五条第三項後段の規定による意見の聴取を行ったときは」と、「参酌してこれをしなければ」とあるのは「考慮しなければ」と読み替えるほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。
5一の公安委員会が禁止命令等をした場合には、他の公安委員会は、当該禁止命令等を受けた者に対し、当該禁止命令等に係る第三条の規定に違反する行為について禁止命令等をすることができない。
6公安委員会は、第一項又は第三項の申出を受けた場合において、禁止命令等をしたときは、速やかに、当該禁止命令等の内容及び日時を当該申出をした者に通知しなければならない。
7公安委員会は、第一項又は第三項の申出を受けた場合において、禁止命令等をしなかったときは、速やかに、その旨及びその理由を当該申出をした者に書面により通知しなければならない。
8禁止命令等の効力は、禁止命令等をした日から起算して一年とする。
9公安委員会は、禁止命令等をした場合において、前項の期間の経過後、当該禁止命令等を継続する必要があると認めるときは、当該禁止命令等に係る事案に関する第三条の規定に違反する行為の相手方の申出により、又は職権で、当該禁止命令等の有効期間を一年間延長することができる。当該延長に係る期間の経過後、これを更に延長しようとするときも、同様とする。
10第二項の規定は禁止命令等の有効期間の延長をしようとする場合について、第六項及び第七項の規定は前項の申出を受けた場合について準用する。この場合において、第六項中「禁止命令等を」とあるのは「第九項の規定による禁止命令等の有効期間の延長の処分を」と、「当該禁止命令等の」とあるのは「当該処分の」と、第七項中「禁止命令等」とあるのは「第九項の規定による禁止命令等の有効期間の延長の処分」と読み替えるものとする。
11禁止命令等又は第九項の規定による禁止命令等の有効期間の延長の処分は、国家公安委員会規則で定める書類を送達して行う。ただし、緊急を要するため当該書類を送達するいとまがないときは、口頭ですることができる。
12前項の規定により送達すべき書類について、その送達を受けるべき者の住所及び居所が明らかでない場合には、当該禁止命令等又は当該処分をする公安委員会は、その送達に代えて公示送達をすることができる。
13公示送達は、送達すべき書類の名称、その送達を受けるべき者の氏名及び公安委員会がその書類をいつでも送達を受けるべき者に交付する旨(以下この項において「公示事項」という。)を国家公安委員会規則で定める方法により不特定多数の者が閲覧することができる状態に置くとともに、公示事項が記載された書面を当該公安委員会の掲示板に掲示し、又は公示事項を当該公安委員会の庁舎に設置した電子計算機の映像面に表示したものの閲覧をすることができる状態に置く措置をとることにより行う。
14前項の場合において、同項の規定による措置を開始した日から起算して二週間を経過したときは、書類の送達があったものとみなす。
15前各項に定めるもののほか、禁止命令等、第三項後段の規定による意見の聴取及び第十一項の規定による送達の実施に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。
(警察本部長等の援助等)
第七条警察本部長等は、ストーカー行為等の相手方から当該ストーカー行為等に係る被害を自ら防止するための援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該相手方に対し、当該ストーカー行為等に係る被害を自ら防止するための措置の教示その他国家公安委員会規則で定める必要な援助を行うものとする。
2警察本部長等は、前項の援助を行うに当たっては、関係行政機関又は関係のある公私の団体と緊密な連携を図るよう努めなければならない。
3警察本部長等は、第一項に定めるもののほか、ストーカー行為等に係る被害を防止するための措置を講ずるよう努めなければならない。
4第一項及び第二項に定めるもののほか、第一項の申出の受理及び援助の実施に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。
(禁止命令等を行う公安委員会等)
第十四条この法律における公安委員会は、禁止命令等及び第五条第二項の聴聞に関しては、当該禁止命令等及び同項の聴聞に係る事案に関する第三条の規定に違反する行為の相手方の住所若しくは居所若しくは当該禁止命令等及び第五条第二項の聴聞に係る第三条の規定に違反する行為をした者の住所(日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所)の所在地又は当該行為が行われた地を管轄する公安委員会とする。
2公安委員会は、第五条第二項の聴聞を終了しているときは、次に掲げる事由が生じた場合であっても、当該聴聞に係る禁止命令等をすることができるものとし、当該他の公安委員会は、前項の規定にかかわらず、当該聴聞に係る禁止命令等をすることができないものとする。
一当該聴聞に係る事案に関する第三条の規定に違反する行為の相手方がその住所又は居所を他の公安委員会の管轄区域内に移転したこと。
二当該聴聞に係る事案に関する第三条の規定に違反する行為をした者がその住所(日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所)を他の公安委員会の管轄区域内に移転したこと。
3この法律における警察本部長等は、警告に関しては、当該警告に係る第四条第一項の申出をした者の住所若しくは居所若しくは当該申出に係る第三条の規定に違反する行為をした者の住所(日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所)の所在地又は当該行為が行われた地を管轄する警察本部長等とする。