(福島復興再生基本方針の策定等)
第五条政府は、第二条に規定する基本理念にのっとり、原子力災害からの福島の復興及び再生に関する施策の総合的な推進を図るための基本的な方針(以下「福島復興再生基本方針」という。)を定めなければならない。
2福島復興再生基本方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一原子力災害からの福島の復興及び再生の意義及び目標に関する事項
二第七条第一項に規定する福島復興再生計画の同条第十四項の認定に関する基本的な事項
三避難解除等区域の復興及び再生の推進のために政府が着実に実施すべき施策に関する基本的な事項
四特定復興再生拠点区域(第十七条の二第一項に規定する特定復興再生拠点区域をいう。第七条第二項第三号及び第四項において同じ。)及び特定帰還居住区域(第十七条の九第一項に規定する特定帰還居住区域をいう。第七条第二項第四号において同じ。)の復興及び再生の推進のために政府が着実に実施すべき施策に関する基本的な事項
五第十七条の二第一項に規定する特定復興再生拠点区域復興再生計画の同条第六項の認定及び第十七条の九第一項に規定する特定帰還居住区域復興再生計画の同条第六項の認定に関する基本的な事項
六放射線による健康上の不安の解消その他の安心して暮らすことのできる生活環境の実現のために政府が着実に実施すべき施策に関する基本的な事項
七原子力災害からの産業の復興及び再生の推進のために政府が着実に実施すべき施策に関する基本的な事項
八新たな産業の創出及び産業の国際競争力の強化に寄与する取組その他先導的な施策への取組の重点的な推進のために政府が着実に実施すべき施策に関する基本的な事項
九関連する東日本大震災(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震及び原子力発電所の事故による災害をいう。以下同じ。)からの復興の円滑かつ迅速な推進に関する施策との連携に関する基本的な事項
十前各号に掲げるもののほか、福島の復興及び再生に関する基本的な事項
3福島復興再生基本方針は、東日本大震災復興特別区域法(平成二十三年法律第百二十二号)第三条第一項に規定する復興特別区域基本方針との調和が保たれたものでなければならない。
4内閣総理大臣は、福島県知事の意見を聴いて、福島復興再生基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
5福島県知事は、前項の意見を述べようとするときは、あらかじめ、関係市町村長の意見を聴かなければならない。
6内閣総理大臣は、第四項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、福島復興再生基本方針を公表しなければならない。
7政府は、情勢の推移により必要が生じた場合には、福島復興再生基本方針を速やかに変更しなければならない。
8第三項から第六項までの規定は、前項の規定による福島復興再生基本方針の変更について準用する。
(福島県知事の提案)
第六条福島県知事は、福島の復興及び再生に関する施策の推進に関して、内閣総理大臣に対し、福島復興再生基本方針の変更についての提案(以下この条において「変更提案」という。)をすることができる。
2福島県知事は、変更提案をしようとするときは、あらかじめ、関係市町村長の意見を聴かなければならない。
3内閣総理大臣は、変更提案がされた場合において、当該変更提案を踏まえた福島復興再生基本方針の変更をする必要があると認めるときは、遅滞なく、福島復興再生基本方針の変更の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、福島復興再生基本方針を公表しなければならない。
5内閣総理大臣は、変更提案がされた場合において、当該変更提案を踏まえた福島復興再生基本方針の変更をする必要がないと認めるときは、遅滞なく、その旨及びその理由を福島県知事に通知しなければならない。
(福島復興再生計画の認定)
第七条福島県知事は、福島復興再生基本方針に即して、復興庁令で定めるところにより、原子力災害からの福島の復興及び再生を推進するための計画(以下「福島復興再生計画」という。)を作成し、内閣総理大臣の認定を申請することができる。
2福島復興再生計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一原子力災害からの福島の復興及び再生の基本的方針に関する事項
二避難解除等区域の復興及び再生の推進のために実施すべき施策に関する事項
三特定復興再生拠点区域の復興及び再生の推進のために実施すべき施策に関する事項
四特定帰還居住区域の復興及び再生の推進のために実施すべき施策に関する事項
五放射線による健康上の不安の解消その他の安心して暮らすことのできる生活環境の実現のために実施すべき施策に関する事項
六原子力災害からの産業の復興及び再生の推進を図るために実施すべき施策に関する事項
七再生可能エネルギー源(太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものをいう。第八十六条において同じ。)の利用、医薬品、医療機器、廃炉等(原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成二十三年法律第九十四号)第一条に規定する廃炉等をいう。第六項及び第八十六条において同じ。)、ロボット及び農林水産業に関する研究開発を行う拠点の整備を通じた新たな産業の創出及び産業の国際競争力の強化に寄与する取組その他先導的な施策への取組の重点的な推進のために実施すべき施策に関する事項
八関連する東日本大震災からの復興の円滑かつ迅速な推進に関する施策との連携に関する事項
九前各号に掲げるもののほか、福島の復興及び再生に関し必要な事項
3前項第二号に掲げる事項には、次に掲げる事項(第一号から第三号までに掲げる事項にあっては、過去に避難指示の対象となったことがない区域にわたるもの及び現に避難指示(第四条第四号イに掲げる指示であるものを除く。)の対象となっている区域(同条第五号に規定する近く避難指示が全て解除される見込みであるとされた区域を除く。)におけるものであって、避難解除等区域の復興及び再生のために特に必要と認められるものを含む。)を定めることができる。
二道路、港湾、海岸その他の公共施設の整備に関する事項
四将来的な住民の帰還及び移住等(原子力災害の被災者以外の者の移住及び定住をいう。以下同じ。)を目指す区域における避難指示の解除後の当該区域の復興及び再生に向けた準備のための取組に関する事項
4第二項第二号及び第三号に掲げる事項には、次に掲げる事項を定めることができる。
一農用地利用集積等促進事業(農用地(第十七条の二十四第一項に規定する農用地をいう。以下この項並びに第九項第三号及び第四号において同じ。)についての賃借権の設定等(同条第三項に規定する賃借権の設定等をいう。以下この号において同じ。)の促進(これと併せて行う同条第二項第二号から第四号までに掲げる土地についての賃借権の設定等の促進を含む。)による農用地の利用の集積の促進又は農業用施設その他の農林水産業の振興に資する施設であって政令で定めるもの(以下「福島農林水産業振興施設」という。)の整備により、避難解除等区域及び特定復興再生拠点区域における農林水産業の振興を図る事業をいう。以下同じ。)に関する次に掲げる事項
ハ設定され、又は移転される賃借権又は使用貸借による権利の存続期間又は残存期間に関する基準並びに当該権利が賃借権である場合における借賃の算定基準及び支払の方法
ニ移転される所有権の移転の対価(現物出資に伴い付与される持分又は株式を含む。第十七条の二十五第二項第一号ホにおいて同じ。)の算定基準及び支払(持分又は株式の付与を含む。同号ホにおいて同じ。)の方法
二農用地効率的利用促進事業(農用地の権利移動に係る市町村の権限について、市町村長及び当該市町村の農業委員会が合意をすることにより、避難解除等区域及び特定復興再生拠点区域において、農用地を効率的に利用する者による地域との調和に配慮した農用地等(第十七条の二十四第二項に規定する農用地等をいう。)についての権利の取得の促進を図る事業をいう。第十七条の三十九第一項において同じ。)の実施区域
5第二項第六号に掲げる事項には、次に掲げる事項を定めることができる。
一産業復興再生事業(次に掲げる事業で、第六十四条から第七十三条までの規定による規制の特例措置の適用を受けるものをいう。以下同じ。)の内容及び実施主体に関する事項
イ商品等需要開拓事業(福島における地域の名称又はその略称を含む商標の使用をし、又は使用をすると見込まれる商品又は役務の需要の開拓を行う事業であって、福島の地域の魅力の増進に資するものをいう。)
ロ新品種育成事業(新品種(当該新品種の種苗又は当該種苗を用いることにより得られる収穫物が福島において生産されることが見込まれるものに限る。)の育成をする事業であって、福島の地域の魅力の増進に資するものをいう。)
ハ地熱資源開発事業(福島において地熱資源が相当程度存在し、又は存在する可能性がある地域であって、地熱資源の開発を重点的に推進する必要があると認められるものにおいて、地熱資源の開発を実施する事業をいう。)
ニ流通機能向上事業(流通業務施設(トラックターミナル、卸売市場、倉庫又は上屋をいう。以下このニ及び第七十一条第二項において同じ。)を中核として、輸送、保管、荷さばき及び流通加工を一体的に行うことによる流通業務の総合化を図る事業又は輸送網の集約、配送の共同化その他の輸送の合理化を行うことによる流通業務の効率化を図る事業(当該事業の用に供する流通業務施設の整備を行う事業を含む。)であって、福島における流通機能の向上に資するものをいう。)
ホ産業復興再生政令等規制事業(原子力災害による被害を受けた福島の産業の復興及び再生に資する事業であって、政令又は主務省令により規定された規制に係るものをいう。第七十二条において同じ。)
ヘ産業復興再生地方公共団体事務政令等規制事業(原子力災害による被害を受けた福島の産業の復興及び再生に資する事業であって、政令又は主務省令により規定された規制(福島の地方公共団体の事務に関するものに限る。)に係るものをいう。第七十三条において同じ。)
二前号に規定する産業復興再生事業ごとの第六十四条から第七十三条までの規定による特別の措置の内容
三放射性物質による汚染の有無又はその状況が正しく認識されていないことに起因する農林水産物及びその加工品の販売等の不振並びに観光客の数の低迷(第七十四条第一項において「特定風評被害」という。)への対処に関し必要な事項
6第二項第七号に掲げる事項には、原子力災害による被害が著しい区域であって、廃炉等、ロボット、農林水産業その他復興庁令で定める分野に関する国際的な共同研究開発及び先端的な研究開発を行う拠点の整備、当該拠点の周辺の生活環境の整備、国際的な共同研究開発を行う者その他の者の来訪の促進、産業の国際競争力の強化に寄与する人材の育成及び確保、福島の地方公共団体、福島国際研究教育機構その他の多様な主体相互間の連携の強化その他の取組を推進することにより、産業集積の形成及び活性化を図るべき区域(以下「福島国際研究産業都市区域」という。)を定めることができる。この場合においては、併せて福島国際研究産業都市区域において推進しようとする取組の内容を定めるものとする。
7前項後段に規定する取組の内容に関する事項には、次に掲げる事項を定めることができる。
一ロボットに係る新たな製品又は新技術の開発に関する試験研究を行う事業に関する次に掲げる事項
二重点推進事業(次に掲げる事業で、それぞれ第八十二条又は第八十三条の規定による規制の特例措置の適用を受けるものをいう。以下同じ。)の内容及び実施主体に関する事項
イ新産業創出等政令等規制事業(福島国際研究産業都市区域における産業集積の形成及び活性化に資する事業であって、政令又は主務省令により規定された規制に係るものをいう。第八十二条において同じ。)
ロ新産業創出等地方公共団体事務政令等規制事業(福島国際研究産業都市区域における産業集積の形成及び活性化に資する事業であって、政令又は主務省令により規定された規制(福島の地方公共団体の事務に関するものに限る。)に係るものをいう。第八十三条において同じ。)
三前号に規定する重点推進事業ごとの第八十二条又は第八十三条の規定による特別の措置の内容
8第五項第一号及び前項第二号の「規制の特例措置」とは、法律により規定された規制についての第六十四条から第七十一条までに規定する法律の特例に関する措置及び政令又は主務省令(以下この項において「政令等」という。)により規定された規制についての第七十二条若しくは第八十二条の規定による政令若しくは復興庁令(告示を含む。)・主務省令(第百四十一条ただし書に規定する規制にあっては、主務省令。以下「復興庁令・主務省令」という。)又は第七十三条若しくは第八十三条の規定による条例で規定する政令等の特例に関する措置をいい、これらの措置の適用を受ける場合において当該規制の趣旨に照らし福島県がこれらの措置と併せて実施し又はその実施を促進することが必要となる措置を含むものとする。
9福島県知事は、福島復興再生計画を作成しようとするときは、あらかじめ、関係市町村長(福島復興再生計画に次の各号に掲げる事項を定めようとする場合にあっては、関係市町村長及び当該各号に定める者)の意見を聴かなければならない。
一第二項第六号に掲げる事項第五項第一号に規定する実施主体(次号、第六十七条第二項及び第三項並びに第七十条第一項を除き、以下「実施主体」という。)
二第二項第七号に掲げる事項第七項第一号イ及び第二号に規定する実施主体並びに福島国際研究教育機構
三第四項第一号に掲げる事項同号イの実施区域内にある農用地を管轄する農業委員会及び当該区域をその事業実施地域に含む農地中間管理機構(農地中間管理事業の推進に関する法律(平成二十五年法律第百一号)第二条第四項に規定する農地中間管理機構をいう。以下同じ。)
四第四項第二号に掲げる事項同号の実施区域内にある農用地を管轄する農業委員会
10次の各号に掲げる者は、福島県知事に対して、当該各号に定める事項に係る第一項の規定による申請(以下この条、第五章第一節並びに第八十二条及び第八十三条において「申請」という。)をすることについての提案をすることができる。
一産業復興再生事業を実施しようとする者及びその実施に関し密接な関係を有する者第二項第六号に掲げる事項
二重点推進事業を実施しようとする者及びその実施に関し密接な関係を有する者第二項第七号に掲げる事項
11前項の提案を受けた福島県知事は、当該提案に基づき申請をするか否かについて、遅滞なく、当該提案をした者に通知しなければならない。この場合において、申請をしないこととするときは、その理由を明らかにしなければならない。
12申請には、次に掲げる事項を記載した書面を添付しなければならない。
一第九項の規定により聴いた関係市町村長及び同項各号に定める者の意見の概要
二第十項の提案を踏まえた申請をする場合にあっては、当該提案の概要
13福島県知事は、申請に当たっては、当該申請に係る産業復興再生事業又は重点推進事業(第十五項において「産業復興再生事業等」という。)及びこれらに関連する事業に関する規制について規定する法律及び法律に基づく命令(告示を含む。)の規定の解釈について、当該法律及び法律に基づく命令を所管する関係行政機関の長(当該行政機関が合議制の機関である場合にあっては、当該行政機関。以下同じ。)に対し、その確認を求めることができる。この場合において、当該確認を求められた関係行政機関の長は、福島県知事に対し、速やかに回答しなければならない。
14内閣総理大臣は、申請があった福島復興再生計画が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、その認定をするものとする。
二当該福島復興再生計画の実施が原子力災害からの福島の復興及び再生に寄与するものであると認められること。
三円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること。
15内閣総理大臣は、前項の認定をしようとするときは、福島復興再生計画に定められた避難解除等区域復興再生事項(第三項第一号から第三号までに掲げる事項をいう。以下この項において同じ。)、産業復興再生事業等に関する事項又は重点推進事項(第八十一条に規定する措置、第八十六条から第八十八条までに規定する施策又は第八十八条の二に規定する援助に係る事項をいう。以下この項において同じ。)について、当該避難解除等区域復興再生事項、産業復興再生事業等に関する事項又は重点推進事項に係る関係行政機関の長の同意を得なければならない。
16内閣総理大臣は、第十四項の認定をしたときは、遅滞なく、その旨を公示しなければならない。