(特定社会基盤役務基本指針)
第四十九条政府は、基本方針に基づき、特定妨害行為(第五十二条第二項第二号ハに規定する特定妨害行為をいう。次項において同じ。)の防止による特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する基本指針(以下この条において「特定社会基盤役務基本指針」という。)を定めるものとする。
2特定社会基盤役務基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一特定妨害行為の防止による特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する基本的な方向に関する事項(特定妨害行為の具体的内容に関する事項を含む。)
二特定社会基盤事業者(次条第一項に規定する特定社会基盤事業者をいう。次号及び第五号において同じ。)の指定に関する基本的な事項(当該指定に関し経済的社会的観点から留意すべき事項を含む。)
三特定社会基盤事業者に対する勧告及び命令に関する基本的な事項
四特定妨害行為の防止による特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に当たって配慮すべき事項(次条第一項に規定する特定重要設備及び第五十二条第一項に規定する重要維持管理等を定める主務省令の立案に当たって配慮すべき事項を含む。)
五特定妨害行為の防止による特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関し必要な特定社会基盤事業者その他の関係者との連携に関する事項
六前各号に掲げるもののほか、特定妨害行為の防止による特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関し必要な事項
3内閣総理大臣は、特定社会基盤役務基本指針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4内閣総理大臣は、前項の規定により特定社会基盤役務基本指針の案を作成するときは、あらかじめ、安全保障の確保に関する経済施策、情報通信技術その他特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関し知見を有する者の意見を聴くとともに、特定社会基盤役務に関する経済活動に与える影響に配慮しなければならない。
5内閣総理大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、特定社会基盤役務基本指針を公表しなければならない。
6前三項の規定は、特定社会基盤役務基本指針の変更について準用する。
(特定社会基盤事業者の指定)
第五十条主務大臣は、特定社会基盤事業(次に掲げる事業のうち、特定社会基盤役務(国民生活及び経済活動の基盤となる役務であって、その安定的な提供に支障が生じた場合に国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがあるものをいう。以下この項及び第五十二条において同じ。)の提供を行うものとして政令で定めるものをいう。以下この章及び第八十六条第二項において同じ。)を行う者のうち、その使用する特定重要設備(特定社会基盤事業の用に供される設備、機器、装置又はプログラムのうち、特定社会基盤役務を安定的に提供するために重要であり、かつ、我が国の外部から行われる特定社会基盤役務の安定的な提供を妨害する行為の手段として使用されるおそれがあるものとして主務省令で定めるものをいう。以下この章及び第九十二条第一項において同じ。)の機能が停止し、又は低下した場合に、その提供する特定社会基盤役務の安定的な提供に支障が生じ、これによって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きいものとして主務省令で定める基準に該当する者を特定社会基盤事業者として指定することができる。
一電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第十六号に規定する電気事業
二ガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)第二条第十一項に規定するガス事業
三石油の備蓄の確保等に関する法律(昭和五十年法律第九十六号)第二条第五項に規定する石油精製業及び同条第九項に規定する石油ガス輸入業
四水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第二項に規定する水道事業及び同条第四項に規定する水道用水供給事業
五鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)第二条第二項に規定する第一種鉄道事業
六貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八十三号)第二条第二項に規定する一般貨物自動車運送事業
七海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)第二条第四項に規定する貨物定期航路事業及び同条第六項に規定する不定期航路事業のうち、主として本邦の港と本邦以外の地域の港との間において貨物を運送するもの
八航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第十九項に規定する国際航空運送事業及び同条第二十項に規定する国内定期航空運送事業
九空港(空港法(昭和三十一年法律第八十号)第二条に規定する空港をいう。以下この号において同じ。)の設置及び管理を行う事業並びに空港に係る民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成十一年法律第百十七号)第二条第六項に規定する公共施設等運営事業
十電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第四号に規定する電気通信事業
十一放送事業のうち、放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第二号に規定する基幹放送を行うもの
十三金融に係る事業のうち、次に掲げるもの
イ銀行法第二条第二項各号に掲げる行為のいずれかを行う事業
ロ保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第一項に規定する保険業
ハ金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第十七項に規定する取引所金融商品市場の開設の業務を行う事業、同条第二十八項に規定する金融商品債務引受業及び同法第二十八条第一項に規定する第一種金融商品取引業
ニ信託業法(平成十六年法律第百五十四号)第二条第一項に規定する信託業
ホ資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第二十項に規定する資金清算業及び同法第三条第五項に規定する第三者型前払式支払手段(同法第四条各号に掲げるものを除く。)の発行の業務を行う事業
ヘ預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)第三十四条に規定する業務を行う事業及び農水産業協同組合貯金保険法(昭和四十八年法律第五十三号)第三十四条に規定する業務を行う事業
ト社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第三条第一項に規定する振替業
チ電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第五十一条第一項に規定する電子債権記録業
十四割賦販売法(昭和三十六年法律第百五十九号)第二条第三項に規定する包括信用購入あっせんの業務を行う事業
2主務大臣は、特定社会基盤事業者を指定したときは、その旨を当該指定を受けた者に通知するとともに、当該指定を受けた者の名称及び住所、当該指定に係る特定社会基盤事業の種類並びに当該指定をした日を公示しなければならない。これらの事項に変更があったときも、同様とする。
3特定社会基盤事業者は、その名称又は住所を変更するときは、変更する日の二週間前までに、その旨を主務大臣に届け出なければならない。
(特定重要設備の導入等)
第五十二条特定社会基盤事業者は、他の事業者から特定重要設備の導入を行う場合(当該特定社会基盤事業者と実質的に同一と認められる者その他の政令で定める者が供給する特定重要設備の導入を行う場合(当該特定重要設備に当該政令で定める者以外の者が供給する特定重要設備が組み込まれている場合を除く。)を除く。)又は他の事業者に委託して特定重要設備の維持管理若しくは操作(当該特定重要設備の機能を維持するため又は当該特定重要設備に係る特定社会基盤役務を安定的に提供するために重要であり、かつ、これらを通じて当該特定重要設備が我が国の外部から行われる特定社会基盤役務の安定的な提供を妨害する行為の手段として使用されるおそれがあるものとして主務省令で定めるものに限る。以下この章及び第九十二条第一項において「重要維持管理等」という。)を行わせる場合には、主務省令で定めるところにより、あらかじめ、当該特定重要設備の導入又は重要維持管理等の委託に関する計画書(以下この章において「導入等計画書」という。)を作成し、主務省令で定める書類を添付して、これを主務大臣に届け出なければならない。ただし、他の事業者から特定重要設備の導入を行い、又は他の事業者に委託して特定重要設備の重要維持管理等を行わせることが緊急やむを得ない場合として主務省令で定める場合には、この限りでない。
2導入等計画書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
二特定重要設備の導入を行う場合にあっては、次に掲げる事項
ロ特定重要設備の供給者に関する事項として主務省令で定めるもの
ハ特定重要設備の一部を構成する設備、機器、装置又はプログラムであって特定妨害行為(特定重要設備の導入又は重要維持管理等の委託に関して我が国の外部から行われる特定社会基盤役務の安定的な提供を妨害する行為をいう。以下この章において同じ。)の手段として使用されるおそれがあるものに関する事項として主務省令で定めるもの
三特定重要設備の重要維持管理等を行わせる場合にあっては、次に掲げる事項
ロ重要維持管理等の委託の相手方に関する事項として主務省令で定めるもの
ハ重要維持管理等の委託の相手方が他の事業者に再委託して重要維持管理等を行わせる場合にあっては、当該再委託に関する事項として主務省令で定めるもの
四前三号に掲げるもののほか、特定重要設備の導入又は重要維持管理等の委託に関する事項として主務省令で定める事項
3第一項の規定による導入等計画書の届出をした特定社会基盤事業者は、主務大臣が当該届出を受理した日から起算して三十日を経過する日までは、当該導入等計画書に係る特定重要設備の導入を行い、又は重要維持管理等を行わせてはならない。ただし、主務大臣は、当該導入若しくは重要維持管理等の委託の規模、性質等に照らし次項の規定による審査が必要ないと認めるとき、又は同項の規定による審査をした結果、その期間の満了前に当該特定重要設備が特定妨害行為の手段として使用されるおそれが大きいとはいえないと認めるときは、その期間を短縮することができる。
4主務大臣は、第一項の規定による導入等計画書の届出があった場合において、当該導入等計画書に係る特定重要設備が特定妨害行為の手段として使用されるおそれが大きいかどうかを審査するため又は第六項の規定による勧告若しくは第十項の規定による命令をするため必要があると認めるときは、当該導入等計画書に係る特定重要設備の導入を行い、又は重要維持管理等を行わせてはならない期間を、当該届出を受理した日から起算して四月間に限り、延長することができる。
5主務大臣は、前項の規定により特定重要設備の導入を行い、又は重要維持管理等を行わせてはならない期間を延長した場合において、同項の規定による審査をした結果、当該延長した期間の満了前に当該特定重要設備が特定妨害行為の手段として使用されるおそれが大きいとはいえないと認めるときは、当該延長した期間を短縮することができる。
6主務大臣は、第四項の規定による審査をした結果、第一項の規定により届け出られた導入等計画書に係る特定重要設備が特定妨害行為の手段として使用されるおそれが大きいと認めるときは、当該届出をした特定社会基盤事業者に対し、当該導入等計画書の内容の変更その他の特定妨害行為を防止するため必要な措置を講じた上で当該導入等計画書に係る特定重要設備の導入を行い、若しくは重要維持管理等を行わせるべきこと又はこれらを中止すべきことを勧告することができる。ただし、当該勧告をすることができる期間は、当該届出を受理した日から起算して三十日を経過する日(第四項の規定による延長をした場合にあっては、当該延長をした期間の満了する日)までとする。
7前項の規定による勧告を受けた特定社会基盤事業者は、当該勧告を受けた日から起算して十日以内に、主務大臣に対し、当該勧告を応諾するかしないか及び応諾しない場合にあってはその理由を通知しなければならない。
8前項の規定により勧告を応諾する旨の通知をした特定社会基盤事業者は、当該勧告をされたところに従い、主務省令で定めるところにより、当該勧告に係る変更を加えた導入等計画書を主務大臣に届け出た上で、当該導入等計画書に基づき特定重要設備の導入を行い、若しくは重要維持管理等を行わせ、又は当該勧告に係る導入等計画書に係る特定重要設備の導入若しくは重要維持管理等の委託を中止しなければならない。
9第七項の規定により勧告を応諾する旨の通知をした特定社会基盤事業者は、第三項又は第四項の規定にかかわらず、第一項の規定による導入等計画書の届出をした日から起算して三十日(第四項の規定による延長がされた場合にあっては、当該延長がされた期間の満了する日)を経過しなくても、前項の規定により届け出た導入等計画書に基づき特定重要設備の導入を行い、又は重要維持管理等を行わせることができる。
10第六項の規定による勧告を受けた特定社会基盤事業者が、第七項の規定による通知をしなかった場合又は当該勧告を応諾しない旨の通知をした場合であって当該勧告を応諾しないことについて正当な理由がないと認められるときは、主務大臣は、当該勧告を受けた特定社会基盤事業者に対し、主務省令で定めるところにより、当該勧告に係る変更を加えた導入等計画書を主務大臣に届け出た上で、当該導入等計画書に基づき特定重要設備の導入を行い、若しくは重要維持管理等を行わせるべきこと又は当該勧告に係る導入等計画書に係る特定重要設備の導入若しくは重要維持管理等の委託を中止すべきことを命ずることができる。ただし、当該変更を加えた導入等計画書に基づき特定重要設備の導入を行い、若しくは重要維持管理等を行わせるべきこと又は当該勧告に係る導入等計画書に係る特定重要設備の導入若しくは重要維持管理等の委託を中止すべきことを命ずることができる期間は、第一項の規定による導入等計画書の届出を受理した日から起算して三十日を経過する日(第四項の規定による延長をした場合にあっては、当該延長をした期間の満了する日)までとする。
11特定社会基盤事業者は、第一項ただし書に規定する場合において特定重要設備の導入を行い、又は重要維持管理等を行わせたときは、遅滞なく、主務省令で定めるところにより、同項の主務省令で定める書類を添付して、第二項各号に掲げる事項を記載した当該特定重要設備の導入又は重要維持管理等の委託に関する届出書(第五十四条第五項及び第五十五条第二項において「緊急導入等届出書」という。)を主務大臣に届け出なければならない。
(導入等計画書の変更等)
第五十四条特定社会基盤事業者は、第五十二条第一項の規定により届け出た導入等計画書(この法律の規定による変更をしたときは、その変更後のもの。以下この条及び次条第一項において同じ。)に係る特定重要設備の導入を行う前又は重要維持管理等を行わせる前若しくは行わせる期間の終了前に第五十二条第二項各号に掲げる事項につき主務省令で定める重要な変更をする場合には、主務省令で定めるところにより、あらかじめ、当該導入等計画書の変更の案を作成し、主務省令で定める書類を添付して、これを主務大臣に届け出なければならない。ただし、当該変更をすることが緊急やむを得ない場合として主務省令で定める場合には、この限りでない。
2第五十二条第二項から第十項までの規定は、前項の規定による変更の案の届出について準用する。
3特定社会基盤事業者は、第一項ただし書に規定する場合において同項の規定による変更をしたときは、遅滞なく、主務省令で定めるところにより、同項の主務省令で定める書類を添付して、当該変更の内容を記載した導入等計画書を主務大臣に届け出なければならない。
4特定社会基盤事業者は、第五十二条第一項の規定により届け出た導入等計画書に係る特定重要設備の導入を行う前若しくは重要維持管理等を行わせる前若しくは行わせる期間の終了前に同条第二項各号に掲げる事項につき変更(第一項の規定による変更及び主務省令で定める軽微な変更を除く。)をしたとき、又は当該導入を行った後に同条第二項第二号ハに掲げる事項につき主務省令で定める変更をしたときは、遅滞なく、主務省令で定めるところにより、当該変更の内容を主務大臣に報告しなければならない。
5前各項の規定は、第五十二条第十一項の規定により届け出た緊急導入等届出書(この法律の規定による変更をしたときは、その変更後のもの。次条第二項において同じ。)に係る特定社会基盤事業者について準用する。この場合において、第一項中「導入を行う前又は重要維持管理等を行わせる前若しくは」とあり、及び前項中「導入を行う前若しくは重要維持管理等を行わせる前若しくは」とあるのは、「重要維持管理等を」と読み替えるものとする。
(特定重要設備の導入等後等の勧告及び命令)
第五十五条主務大臣は、第五十二条第一項の規定による導入等計画書の届出をした特定社会基盤事業者が前三条の規定により当該導入等計画書に係る特定重要設備の導入若しくは重要維持管理等の委託を行うことができることとなった後又は行った後、国際情勢の変化その他の事情の変更により、当該導入等計画書に係る特定重要設備が特定妨害行為の手段として使用され、又は使用されるおそれが大きいと認めるに至ったときは、当該届出をした特定社会基盤事業者に対し、当該特定重要設備の検査又は点検の実施、当該特定重要設備の重要維持管理等の委託の相手方の変更その他の特定妨害行為を防止するため必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
2主務大臣は、第五十二条第十一項の規定による緊急導入等届出書の届出をした特定社会基盤事業者が前三条の規定により当該緊急導入等届出書に係る特定重要設備の導入若しくは重要維持管理等の委託を行うことができることとなった後又は行った後、当該緊急導入等届出書に係る特定重要設備が特定妨害行為の手段として使用され、又は使用されるおそれが大きいと認めるに至ったときは、当該届出をした特定社会基盤事業者に対し、当該特定重要設備の検査又は点検の実施、当該特定重要設備の重要維持管理等の委託の相手方の変更その他の特定妨害行為を防止するため必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
3第五十二条第七項、第八項及び第十項(ただし書を除く。)の規定は、前二項の規定による勧告について準用する。
(報告徴収及び立入検査)
第五十八条主務大臣は、第五十条第一項の規定による指定を行うために必要な限度において、特定社会基盤事業を行う者に対し、当該特定社会基盤事業に関し必要な報告又は資料の提出を求めることができる。
2主務大臣は、第五十一条、第五十二条第六項及び第十項並びに第五十五条第一項及び第二項の規定の施行に必要な限度において、特定社会基盤事業者に対し、その行う特定社会基盤事業に関し必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、特定社会基盤事業者の事務所その他必要な場所に立ち入り、当該特定社会基盤事業に関し質問させ、若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
3前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
4第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。