(国際和解合意の執行決定)
第五条国際和解合意に基づいて民事執行をしようとする当事者は、債務者を被申立人として、裁判所に対し、執行決定(国際和解合意に基づく民事執行を許す旨の決定をいう。以下同じ。)を求める申立てをしなければならない。
2前項の申立てをする者(以下この条において「申立人」という。)は、次に掲げる書面を提出しなければならない。
一当事者が作成した国際和解合意の内容が記載された書面
二調停人その他調停に関する記録の作成、保存その他の管理に関する事務を行う者が作成した国際和解合意が調停において成立したものであることを証明する書面
3前項の書面については、これに記載すべき事項を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)の提出をもって、当該書面の提出に代えることができる。この場合において、当該電磁的記録を提出した申立人は、当該書面を提出したものとみなす。
4申立人は、前二項の規定により書面又は電磁的記録を提出するときは、併せて、当該書面(日本語で作成されたものを除く。)又は当該電磁的記録(日本語で作成されたものを除く。)の日本語による翻訳文又は翻訳の内容を記録した電磁的記録を提出しなければならない。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、被申立人の意見を聴いて、前二項の規定により提出すべき書面又は電磁的記録の全部又は一部について日本語による翻訳文又は翻訳の内容を記録した電磁的記録を提出することを要しないものとすることができる。
5第一項の申立てを受けた裁判所は、他の裁判機関又は仲裁廷に対して当該国際和解合意に関する他の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、同項の申立てに係る手続を中止することができる。この場合において、裁判所は、申立人の申立てにより、被申立人に対し、担保を立てるべきことを命ずることができる。
6第一項の申立てに係る事件は、次に掲げる裁判所の管轄に専属する。
二当該事件の被申立人の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所
三請求の目的又は差し押さえることができる被申立人の財産の所在地を管轄する地方裁判所
四東京地方裁判所及び大阪地方裁判所(被申立人の普通裁判籍の所在地又は請求の目的若しくは差し押さえることができる被申立人の財産の所在地が日本国内にある場合に限る。)
7前項の規定により二以上の裁判所が管轄権を有するときは、先に申立てがあった裁判所が管轄する。
8裁判所は、第一項の申立てに係る事件の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送しなければならない。
9裁判所は、第七項の規定により管轄する事件について、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該事件の全部又は一部を同項の規定により管轄権を有しないこととされた裁判所に移送することができる。
10前二項の規定による決定に対しては、その告知を受けた日から二週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。
11裁判所は、次項の規定により第一項の申立てを却下する場合を除き、執行決定をしなければならない。
12裁判所は、第一項の申立てがあった場合において、次の各号に掲げる事由のいずれかがあると認めるとき(第一号から第六号までに掲げる事由にあっては、被申立人が当該事由の存在を証明した場合に限る。)に限り、当該申立てを却下することができる。
一国際和解合意が、当事者の行為能力の制限により、その効力を有しないこと。
二国際和解合意が、当事者が合意により国際和解合意に適用すべきものとして有効に指定した法令(当該指定がないときは、裁判所が国際和解合意について適用すべきものと判断する法令)によれば、当事者の行為能力の制限以外の事由により、その効力を有しないこと。
三国際和解合意に基づく債務の内容を特定することができないこと。
四国際和解合意に基づく債務の全部が履行その他の事由により消滅したこと。
五調停人が、法令その他当事者間の合意により当該調停人又は当該調停人が実施する調停に適用される準則(公の秩序に関しないものに限る。)に違反した場合であって、その違反する事実が重大であり、かつ、当該国際和解合意の成立に影響を及ぼすものであること。
六調停人が、当事者に対し、自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実を開示しなかった場合であって、当該事実が重大であり、かつ、当該国際和解合意の成立に影響を及ぼすものであること。
七国際和解合意の対象である事項が、日本の法令によれば、和解の対象とすることができない紛争に関するものであること。
八国際和解合意に基づく民事執行が、日本における公の秩序又は善良の風俗に反すること。
13裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、第一項の申立てについての決定をすることができない。
14第一項の申立てについての決定に対しては、その告知を受けた日から二週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。
(非電磁的事件記録の閲覧等)
第七条執行決定の手続について利害関係を有する者(以下「利害関係者」という。)は、裁判所書記官に対し、非電磁的事件記録(事件の記録中次条第一項に規定する電磁的事件記録を除いた部分をいう。以下この条において同じ。)の閲覧又は謄写を請求することができる。
2利害関係者は、裁判所書記官に対し、非電磁的事件記録の正本、謄本又は抄本の交付を請求することができる。
3前二項の規定は、非電磁的事件記録中の録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、利害関係者は、裁判所書記官に対し、これらの物の複製を請求することができる。
4民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第九十一条第五項の規定は、第一項及び前項の規定による請求について準用する。
(電磁的事件記録の閲覧等)
第八条利害関係者は、裁判所書記官に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、電磁的事件記録(事件の記録中この法律その他の法令の規定により裁判所の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下この条及び次条において同じ。)に備えられたファイルに記録された事項に係る部分をいう。以下この条において同じ。)の内容を最高裁判所規則で定める方法により表示したものの閲覧を請求することができる。
2利害関係者は、裁判所書記官に対し、電磁的事件記録に記録されている事項について、最高裁判所規則で定めるところにより、最高裁判所規則で定める電子情報処理組織(裁判所の使用に係る電子計算機と手続の相手方の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。次項及び次条において同じ。)を使用してその者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法その他の最高裁判所規則で定める方法による複写を請求することができる。
3利害関係者は、裁判所書記官に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、電磁的事件記録に記録されている事項の全部若しくは一部を記載した書面であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該書面の内容が電磁的事件記録に記録されている事項と同一であることを証明したものを交付し、又は当該事項の全部若しくは一部を記録した電磁的記録であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該電磁的記録の内容が電磁的事件記録に記録されている事項と同一であることを証明したものを最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使用してその者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法その他の最高裁判所規則で定める方法により提供することを請求することができる。
4民事訴訟法第九十一条第五項の規定は、第一項及び第二項の規定による請求について準用する。