(定義)
第七十条この節において「実行手続」とは、この節の定めるところにより、企業価値担保権を実行する手続をいう。
2この節において「執行事件」とは、実行手続に係る事件をいう。
3この節において「執行裁判所」とは、執行事件が係属している地方裁判所をいう。
4この節(第七十二条並びに第九款第二目及び第三目を除く。)において「裁判所」とは、執行事件を取り扱う一人の裁判官又は裁判官の合議体をいう。
5この節において「申立債権」とは、申立人の企業価値担保権の特定被担保債権であって共益債権に該当しないものをいう。
6この節において「共益債権」とは、実行手続によらないで担保目的財産から随時弁済を受けることができる債権をいう。
7この節において「共益債権者」とは、共益債権を有する者をいう。
8この節において「優先担保権」とは、実行手続開始当時債務者の財産につき存する担保権のうち申立人の企業価値担保権に優先するものであって、重複担保権に該当しないものをいう。
9この節において「優先担保権者」とは、優先担保権を有する者をいう。
10この節において「劣後担保権」とは、実行手続開始当時債務者の財産につき存する担保権(一般の先取特権、企業担保権及び留置権を除く。)のうち、申立人の企業価値担保権に劣後するもの又は当該企業価値担保権と同一順位のものであって、重複担保権に該当しないものをいう。
11この節において「劣後債権」とは、劣後担保権の被担保債権(劣後担保権が企業価値担保権である場合にあっては、特定被担保債権)であって共益債権に該当しないものをいう。
12この節において「劣後債権者」とは、劣後債権を有する者をいう。
13この節において「配当債権」とは、申立債権、劣後債権又は租税等の請求権をいう。
14この節において「配当債権者」とは、配当債権を有する者をいう。
15この節において「配当債権者等」とは、配当債権者又は企業価値担保権者をいう。
16この節において「配当外債権」とは、債務者に対する財産上の請求権であって配当債権及び共益債権に該当しないものをいう。
17この節において「配当外債権者」とは、配当外債権を有する者をいう。
18この節において「租税等の請求権」とは、国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権(租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(昭和四十四年法律第四十六号。第百五十六条第二項において「租税条約等実施特例法」という。)第十一条第一項に規定する共助対象外国租税(以下この節において「共助対象外国租税」という。)の請求権を除く。)であって、共益債権に該当しないものをいう。
(管轄)
第七十一条執行事件は、債務者の主たる営業所の所在地(外国に主たる営業所がある場合にあっては、日本における主たる営業所の所在地)を管轄する地方裁判所が管轄する。
2前項の規定にかかわらず、実行手続開始の申立ては、債務者の本店の所在地を管轄する地方裁判所にもすることができる。
3第一項の規定にかかわらず、法人が他の株式会社の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。次項において同じ。)の過半数を有する場合には、当該法人(以下この項及び次項において「親法人」という。)について執行事件が係属しているときにおける当該他の株式会社(以下この項及び次項において「子株式会社」という。)についての実行手続開始の申立ては、親法人の執行事件が係属している地方裁判所にもすることができ、子株式会社について執行事件が係属しているときにおける親法人についての実行手続開始の申立ては、子株式会社の執行事件が係属している地方裁判所にもすることができる。
4子株式会社が他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には、当該他の株式会社を当該子株式会社の親法人の子株式会社と、親法人及び子株式会社が他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には、当該他の株式会社を当該親法人の子株式会社とそれぞれみなして、前項の規定を適用する。
5第一項の規定にかかわらず、株式会社が最終事業年度について会社法第四百四十四条の規定により当該株式会社及び他の法人に係る連結計算書類(同条第一項に規定する連結計算書類をいう。)を作成し、かつ、当該株式会社の定時株主総会においてその内容が報告された場合には、当該株式会社について執行事件が係属しているときにおける当該他の法人についての実行手続開始の申立ては、当該株式会社の執行事件が係属している地方裁判所にもすることができ、当該他の法人について執行事件が係属しているときにおける当該株式会社についての実行手続開始の申立ては、当該他の法人の執行事件が係属している地方裁判所にもすることができる。
6第一項の規定にかかわらず、実行手続開始の申立ては、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所にもすることができる。
(公告等)
第七十五条この節の規定による公告は、官報に掲載してする。
2前項の規定による公告は、掲載があった日の翌日に、その効力を生ずる。
3この節の規定により送達をしなければならない場合には、公告をもって、これに代えることができる。ただし、この節に特別の定めがある場合(この節の規定により公告及び送達をしなければならない場合を含む。)は、この限りでない。
4この節の規定により裁判の公告がされたときは、一切の関係人に対して当該裁判の告知があったものとみなす。
(ファイル記録事項の閲覧等)
第七十七条利害関係人は、裁判所書記官に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、この法律の規定に基づき裁判所の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)に備えられたファイル(次項及び第三項並びに次条を除き、以下「ファイル」という。)に記録された事項(以下この条及び第八十条第六項において「ファイル記録事項」という。)の内容を最高裁判所規則で定める方法により表示したものの閲覧を請求することができる。
2利害関係人は、裁判所書記官に対し、ファイル記録事項について、最高裁判所規則で定めるところにより、最高裁判所規則で定める電子情報処理組織(裁判所の使用に係る電子計算機と手続の相手方の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。次項及び次条において同じ。)を使用してその者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法その他の最高裁判所規則で定める方法による複写を請求することができる。
3利害関係人は、裁判所書記官に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、ファイル記録事項の全部若しくは一部を記載した書面であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該書面の内容がファイル記録事項と同一であることを証明したものを交付し、又はファイル記録事項の全部若しくは一部を記録した電磁的記録であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該電磁的記録の内容がファイル記録事項と同一であることを証明したものを最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使用してその者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法その他の最高裁判所規則で定める方法により提供することを請求することができる。
(支障部分の閲覧等の制限)
第八十条次に掲げる文書等について、利害関係人がその閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付の受領又はその複製(以下この項から第三項までにおいて「閲覧等」という。)を行うことにより、債務者の事業の継続若しくは換価に著しい支障を生ずるおそれ又は債務者の財産に著しい損害を与えるおそれがある部分(以下この項から第三項までにおいて「支障部分」という。)があることにつき疎明があった場合には、裁判所は、当該文書等を提出した管財人の申立てにより、支障部分の閲覧等の請求をすることができる者を、当該管財人に限ることができる。
一第九十二条第一項ただし書、第百十三条第二項又は第百五十七条第一項若しくは第二項の許可を得るために裁判所に提出された文書等
2前項の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで、利害関係人(同項の申立てをした者を除く。次項において同じ。)は、支障部分の閲覧等の請求をすることができない。
3支障部分の閲覧等の請求をしようとする利害関係人は、執行裁判所に対し、第一項に規定する要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、同項の規定による決定の取消しの申立てをすることができる。
4第一項の申立てを却下した決定及び前項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。
5第一項の規定による決定を取り消す決定は、確定しなければその効力を生じない。
6前各項の規定は、ファイル記録事項について準用する。この場合において、第一項中「謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付の受領又はその複製」とあるのは、「複写又はその内容の全部若しくは一部を証明した書面の交付若しくはその内容の全部若しくは一部を証明した電磁的記録の提供の受領」と読み替えるものとする。