(参加の手続)
第三条没収されるおそれのある物を所有する第三者は、第一審の裁判があるまで(略式手続又は交通事件即決裁判手続による裁判があつたときは、正式裁判の請求をすることのできる期間が経過するまでとし、この場合において、正式裁判の請求があつたときは、さらに通常の規定による第一審の裁判があるまでとする。以下同じ。)、被告事件の係属する裁判所に対し、書面により、被告事件の手続への参加を申し立てることができる。ただし、前条第一項又は第二項の規定による告知又は公告があつたときは、告知又は公告があつた日から十四日以内に限る。
2検察官が前条第一項又は第二項の規定により告知し又は公告した裁判所が被告事件を移送した場合において、その裁判所に参加の申立てがあつたときは、申立てを受けた裁判所は、被告事件の移送を受けた裁判所にその申立ての書面を送付しなければならない。この場合において、その書面が送付されたときは、参加の申立ては、はじめから、被告事件の移送を受けた裁判所に対してされたものとみなす。
3裁判所は、参加の申立てが法令上の方式に違反し、若しくは第一項に規定する期間の経過後にされたとき、又は没収すべき物が申立人の所有に属しないことが明らかであるときは、参加の申立てを棄却しなければならない。ただし、第一項ただし書に規定する期間内に参加の申立てをしなかつたことが、申立人の責めに帰することのできない理由によると認めるときは、第一審の裁判があるまで参加を許すことができる。
4前項の場合を除き、裁判所は、申立人の参加を許さなければならない。ただし、没収をすることができないか又はこれを必要としない旨の検察官の意見を相当と認めるときは、参加の申立てを棄却することができる。
5裁判所は、参加を許した場合において、没収すべき物が参加を許された者(以下「参加人」という。)の所有に属しないことが明らかになつたときは、参加を許す裁判を取り消さなければならない。没収をすることができないか又はこれを必要としない旨の検察官の意見を相当と認めるときは、参加を許す裁判を取り消すことができる。
6参加に関する裁判は、申立人又は参加人、検察官及び被告人又は弁護人の意見をきき、決定でしなければならない。検察官又は申立人若しくは参加人は、参加の申立てを棄却する決定又は参加を許す裁判を取り消す決定(第四項ただし書又は前項後段の規定による決定を除く。)に対し、即時抗告をすることができる。
7参加の取下げは、書面でしなければならない。ただし、公判期日においては、口頭ですることができる。
(上訴)
第八条原審における参加人は、上訴審においても、参加人としての地位を失わない。
2参加人が上訴をしたときは、検察官及び被告人が上訴をせず、又は上訴の放棄若しくは取下げをした場合においても、原審の裁判中没収に関する部分は、確定しない。
3前項の場合において、被告人は、上訴審及びその後の審級における公判期日に出頭することを要しない。刑事訴訟法第三十六条、第三十七条、第二百八十九条及び第二百九十条の規定は、適用しない。
4前二項の規定は、略式手続又は交通事件即決裁判手続による裁判に対して参加人が正式裁判の請求をした場合に準用する。
(代理人)
第十条この法律の規定により被告事件の手続に関与する第三者は、弁護士の中から代理人を選任し、これに訴訟行為を代理させることができる。
2代理人の選任は、審級ごとに、代理人と連署した書面を差し出してしなければならない。
3代理人は、参加人の書面による同意がなければ、参加の取下げ、正式裁判の請求の取下げ又は上訴の放棄若しくは取下げをすることができない。
4刑事訴訟法第三十三条から第三十五条まで及び第四十条の規定は、代理人に準用する。
(没収の裁判の取消し)
第十三条法律上没収することのできない物について没収の裁判が確定したときは、その物の所有者で、自己の責めに帰することのできない理由により被告事件の手続において権利を主張することができなかつたものは、没収の確定裁判を知つた日から十四日以内に限り、没収の裁判をした裁判所に対し、その裁判の取消しを請求することができる。ただし、没収の裁判が確定した日から五年を経過したときは、その請求をすることができない。
2前項の請求は、その理由となる事実を明示した趣意書を差し出してしなければならない。
3第一項の規定による請求が法令上の方式に違反し、若しくは同項に規定する期間の経過後にされたとき、請求人がその責めに帰することのできない理由により被告事件の手続において権利を主張することができなかつたと認められないとき、又は没収された物が請求人の所有に属しないものであつたことが明らかであるときは、請求人及び検察官の意見をきき、決定で請求を棄却しなければならない。請求人は、この決定に対し、即時抗告をすることができる。
4前項の場合を除き、請求が理由がないときは、判決でこれを棄却し、理由があるときは、判決で没収の裁判を取り消さなければならない。請求人又は検察官は、この判決に対し、上訴をすることができる。
5裁判所は、趣意書に包含された事項について、請求人及び検察官に陳述をさせ、並びに請求人若しくは検察官の申立てにより又は職権で、必要と認める証拠の取調べをしなければならない。請求人が公判期日に出頭しない場合においても、その不出頭について正当な理由がないと認めるときは、その期日の公判手続を行ない、又は判決の宣告をすることができる。
6請求を棄却したときは、訴訟費用を請求人に負担させることができる。請求の取下げがあつたときも、同様とする。
7請求に関する裁判手続については、第三条第七項、第五条第二項、第九条、第十条並びに第十一条第二項及び第三項の規定を準用するほか、刑事訴訟の例による。
8前項の規定にかかわらず、請求に関する裁判手続においては、請求人を証人として取り調べ、又は公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、若しくは公判期日外における他の者の供述を内容とする供述を証拠とすることができる。
9没収の裁判が取り消されたときは、刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)に定める没収の執行による補償の例により、補償を行なう。