(定義)
第二条この法律において「犯罪行為」とは、日本国内又は日本国外にある日本船舶若しくは日本航空機内において行われた人の生命又は身体を害する罪に当たる行為(刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十七条第一項本文、第三十九条第一項又は第四十一条の規定により罰せられない行為を含むものとし、同法第三十五条又は第三十六条第一項の規定により罰せられない行為及び過失による行為を除く。)をいう。
2この法律において「犯罪被害」とは、犯罪行為による死亡、重傷病又は障害をいい、犯罪行為の時又はその直後における心身の被害であつてその後の死亡、重傷病又は障害の原因となり得るものを含む。
3この法律において「犯罪被害者」とは、犯罪被害を受けた者をいう。
4この法律において「犯罪被害等」とは、犯罪被害及び犯罪行為により不慮の死を遂げた者の遺族が受けた心身の被害をいう。
5この法律において「重傷病」とは、負傷若しくは疾病が治り、又はその症状が固定する前における当該負傷又は疾病に係る身体の被害であつて、当該負傷又は疾病の療養の期間が一月以上であつたことその他政令で定める要件を満たすものをいう。
6この法律において「障害」とは、負傷又は疾病が治つたとき(その症状が固定したときを含む。)における身体上の障害で政令で定める程度のものをいう。
7この法律において「犯罪被害者等給付金」とは、第四条に規定する遺族給付金、重傷病給付金又は障害給付金をいう。
(遺族の範囲及び順位)
第五条遺族給付金の支給を受けることができる遺族は、犯罪被害者の死亡の時において、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一犯罪被害者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)
二犯罪被害者の収入によつて生計を維持していた犯罪被害者の子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹
三前号に該当しない犯罪被害者の子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹
2犯罪被害者の死亡の当時胎児であつた子が出生した場合においては、前項の規定の適用については、その子は、その母が犯罪被害者の死亡の当時犯罪被害者の収入によつて生計を維持していたときにあつては同項第二号の子と、その他のときにあつては同項第三号の子とみなす。
3遺族給付金の支給を受けるべき遺族の順位は、第一項各号の順序とし、同項第二号及び第三号に掲げる者のうちにあつては、それぞれ当該各号に掲げる順序とし、父母については、養父母を先にし、実父母を後にする。
4犯罪被害者を故意に死亡させ、又は犯罪被害者の死亡前に、その者の死亡によつて遺族給付金の支給を受けることができる先順位若しくは同順位の遺族となるべき者を故意に死亡させた者は、遺族給付金の支給を受けることができる遺族としない。遺族給付金の支給を受けることができる先順位又は同順位の遺族を故意に死亡させた者も、同様とする。
(犯罪被害者等給付金の額)
第九条遺族給付金の額は、政令で定めるところにより算定する遺族給付基礎額に、遺族の生計維持の状況を勘案して政令で定める倍数を乗じて得た額とする。
2重傷病給付金の額は、犯罪行為により生じた負傷又は疾病の療養についての犯罪被害者負担額(当該犯罪行為により負傷し、又は疾病にかかつた日から起算して政令で定める期間を経過するまでの間(以下この項及び次項において「給付期間」という。)における療養に要した費用の額として政令で定めるところにより算定した額から、健康保険法(大正十一年法律第七十号)その他の政令で定める法律の規定により当該犯罪被害者が受け、又は受けることができた給付期間における療養に関する給付の額を控除して得た額(当該犯罪被害者がこれらの法律の規定による療養に関する給付を受けることができない場合その他政令で定める場合にあつては、当該控除して得た額に相当するものとして政令で定める額)をいう。次項及び第五項において同じ。)とする。
3犯罪被害者が犯罪行為により生じた負傷又は疾病の療養のため従前その勤労に基づいて通常得ていた収入の全部又は一部を得ることができなかつた日(給付期間内の日(当該収入の全部又は一部を得ることができなかつた日の第三日目までの日を除く。)に限り、当該犯罪被害者が刑事収容施設、少年院その他これらに準ずる施設に収容をされた場合(国家公安委員会規則で定める場合に限る。)にあつては、当該収容をされていた日を除く。以下この項及び第五項第二号において「休業日」という。)がある場合における重傷病給付金の額は、前項の規定にかかわらず、犯罪被害者負担額に、政令で定めるところにより算定する休業加算基礎額に当該休業日の数を乗じて得た額(当該休業日に当該犯罪被害者が従前その勤労に基づいて通常得ていた収入の一部を得た日(以下この項において「部分休業日」という。)が含まれるときは、当該休業加算基礎額に当該休業日の数を乗じて得た額から、当該部分休業日について得た収入の額を合算した額を控除して得た額。第五項第二号において「休業加算額」という。)を加えた額とする。
4前二項の規定により算定した額が第七条第二項に規定する法令の規定による給付との均衡を考慮して政令で定める額を超える場合における重傷病給付金の額は、前二項の規定にかかわらず、当該政令で定める額とする。
5犯罪被害者が犯罪行為により生じた負傷又は疾病について死亡前に療養を受けた場合における遺族給付金の額は、第一項の規定にかかわらず、同項の規定により算定した額に、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める額(その額が前項の政令で定める額を超えるときは、当該政令で定める額)を加えた額とする。
一次号に掲げる場合以外の場合当該療養についての犯罪被害者負担額
二当該療養についての休業日がある場合当該療養についての犯罪被害者負担額に休業加算額を加えた額
6遺族給付金の支給を受けるべき遺族が二人以上あるときは、遺族給付金の額は、第一項及び前項の規定にかかわらず、これらの規定により算定した額をその人数で除して得た額とする。
7障害給付金の額は、政令で定めるところにより算定する障害給付基礎額に、障害の程度を基準として政令で定める倍数を乗じて得た額とする。
(仮給付金の支給等)
第十二条公安委員会は、第十条第一項の申請があつた場合において、犯罪行為の加害者を知ることができず、又は犯罪被害者の障害の程度が明らかでない等当該犯罪被害に係る事実関係に関し、速やかに前条第一項の裁定をすることができない事情があるときは、当該申請をした者(次条第一項及び第三項において「申請者」という。)に対し、政令で定める額の範囲内において、仮給付金を支給する旨の決定をすることができる。
2国は、前項の決定があつたときは、仮給付金を支給する。
3仮給付金の支給を受けた者について犯罪被害者等給付金を支給する旨の裁定があつたときは、国は、仮給付金の額の限度において犯罪被害者等給付金を支給する責めを免れる。この場合において、当該裁定で定める額が仮給付金の額に満たないときは、その者は、その差額を返還しなければならない。
4仮給付金の支給を受けた者について犯罪被害者等給付金を支給しない旨の裁定があつたときは、その者は、仮給付金に相当する金額を返還しなければならない。
5仮給付金の支給を受けた犯罪被害者又はその遺族について、犯罪被害者等給付金を支給し、又は支給しない旨の裁定がある前に当該犯罪被害者又はその遺族が死亡したときは、国は、当該仮給付金の額の限度において、当該犯罪被害者の死亡に係る遺族給付金又は当該遺族が支給を受けようとしていた遺族給付金と同一の犯罪被害を支給原因とする遺族給付金を支給する責めを免れる。
(犯罪被害者等の支援)
第二十二条警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長(以下「警察本部長等」という。)は、犯罪被害等を早期に軽減するとともに、犯罪被害者又はその遺族(以下「犯罪被害者等」という。)が再び平穏な生活を営むことができるよう支援するための措置として、犯罪被害者等に対し、情報の提供、助言及び指導、警察職員の派遣その他の必要な援助を行うように努めなければならない。
2警察本部長等は、前項の規定に基づく措置をとるに当たつては、関係する機関の活動との連携及び調和の確保に努めなければならない。
3公安委員会は、次条第一項に規定する犯罪被害者等早期援助団体その他の犯罪被害等を早期に軽減するとともに、犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるよう支援することを目的とする民間の団体(第五項において「犯罪被害者等早期援助団体等」という。)の自主的な活動の促進を図るため、必要な助言、指導その他の措置を講ずるように努めなければならない。
4国家公安委員会は、第一項又は前項の規定に基づき警察本部長等又は公安委員会がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るための指針を定めるものとする。
5国家公安委員会は、犯罪被害者等早期援助団体等が組織する団体に対し、当該犯罪被害者等早期援助団体等による犯罪被害者等の支援の適切かつ有効な実施を図るため、必要な助言、指導その他の措置を講ずるように努めなければならない。
6前各項に定めるもののほか、国家公安委員会、公安委員会及び警察本部長等は、犯罪被害者等の支援に関する広報活動及び啓発活動を行うように努めなければならない。
(犯罪被害者等早期援助団体)
第二十三条公安委員会は、犯罪被害等を早期に軽減するとともに、犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるよう支援することを目的として設立された営利を目的としない法人であつて、当該都道府県の区域において次項に規定する事業を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申出により、同項に規定する事業を行う者(以下「犯罪被害者等早期援助団体」という。)として指定することができる。
2犯罪被害者等早期援助団体は、次に掲げる事業を行うものとする。
一犯罪被害者等の支援に関する広報活動及び啓発活動を行うこと。
三犯罪被害者等給付金の支給を受けようとする者が第十条第一項の規定に基づき行う裁定の申請を補助すること。
四犯罪行為の発生後速やかに、かつ、継続的に、犯罪被害者等に対し、物品の供与又は貸与、役務の提供その他の方法により援助を行うこと。
3犯罪被害者等を援助する者は、前項に規定する事業を行うに当たつては、第一項の指定を受けないで、公安委員会指定という文字を冠した名称を用いてはならない。
4警察本部長等は、犯罪被害者等早期援助団体の求めに応じ、犯罪被害者等早期援助団体が第二項第二号又は第四号に掲げる事業を適正に行うために必要な限度において、犯罪被害者等早期援助団体に対し、犯罪被害者等の同意を得て、当該犯罪被害者等の氏名及び住所その他当該犯罪被害の概要に関する情報を提供することができる。
5公安委員会は、犯罪被害者等早期援助団体の財政の状況又はその事業の運営に関し改善が必要であると認めるときは、犯罪被害者等早期援助団体に対し、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
6公安委員会は、犯罪被害者等早期援助団体が前項の規定による命令に違反したときは、第一項の指定を取り消すことができる。
7犯罪被害者等早期援助団体の役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、第二項第二号から第四号までに掲げる業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は同項各号に掲げる事業の目的以外の目的のために利用してはならない。
8犯罪被害者等早期援助団体は、第二項に規定する業務の遂行に当たつては、関係する機関及び団体の活動の円滑な遂行に配慮して、これらの活動との調和及び連携を図らなければならない。
9第一項の指定の手続その他犯罪被害者等早期援助団体に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。