(定義)
第二条この法律において「水道事業者」とは、水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第六条第一項の規定による認可を受けて同法第三条第二項に規定する水道事業(同条第五項に規定する水道用水供給事業者により供給される水道水のみをその用に供するものを除く。)を経営する者及び同条第五項に規定する水道用水供給事業者をいう。
2この法律において「水道原水」とは、水道事業者が河川から取水施設により取り入れた前項の水道事業又は水道用水供給事業(水道法第三条第四項に規定する水道用水供給事業をいう。第十四条第二項において同じ。)のための原水をいう。
3この法律において「取水地点」とは、水道原水に係る取水施設が設置されている地点をいう。
4この法律において「水道原水水質保全事業」とは、次に掲げる事業をいう。
一下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第二号に規定する下水道の整備に関する事業
二廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第八条第一項に規定するし尿処理施設(市町村が同法第六条の二第一項の規定によりし尿及び雑排水(工場廃水、雨水その他の特殊な排水を除く。以下同じ。)の処理を行うために設置するものであって、し尿及び雑排水を管渠によって収集するものに限る。)の整備に関する事業
三浄化槽法(昭和五十八年法律第四十三号)第二条第一号に規定する浄化槽(次号において「浄化槽」という。)であって、し尿及び雑排水を集合して処理するものの整備に関する事業
四浄化槽であって、し尿及び雑排水を各戸ごと(共同住宅にあっては、各共同住宅ごと)に処理するものの整備に関する事業
五畜産農業の用に供する施設の整備に関する事業のうち、家畜のふん尿を堆肥その他の肥料とするための施設の整備に関する事業(地方公共団体が行うものに限る。)
六水道法第三条第一項に規定する水道の用に供する土地に隣接する土地であって、水道原水の水質の保全のために重要なものの取得に関する事業(地方公共団体が行うものに限る。)
七河川(河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第三条第一項に規定する河川(同法第百条の規定により同法の二級河川に関する規定が準用される河川を含む。)をいう。第四条第四項及び第七条第二項において同じ。)に関する事業(次に掲げるものを除く。)のうち、しゅんせつ事業、導水事業その他の水道原水の水質の保全に資するもの(以下「河川水道原水水質保全事業」という。)
イ特定多目的ダム法(昭和三十二年法律第三十五号)第二条第一項(沖縄振興特別措置法(平成十四年法律第十四号)第九十九条第六項において読み替えて適用する場合を含む。)に規定する多目的ダムの建設工事に関する事業
ロ独立行政法人水資源機構法(平成十四年法律第百八十二号)第十二条第一項第一号若しくは第二号(同号イに係る部分に限る。)又は附則第四条第一項に規定する業務に該当する事業
八その他水道原水の水質の保全に資する事業であって、政令で定めるもの
(基本方針)
第三条主務大臣は、水道原水の水質の保全を図るための水道原水水質保全事業の実施の促進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2基本方針においては、次に掲げる事項につき、第五条第一項の都道府県計画及び第七条第一項の河川管理者事業計画の指針となるべきものを定めるものとする。
一水道原水水質保全事業の実施の促進に関する基本的な事項
四水道原水水質保全事業に係る水道事業者の費用の負担に関する事項
五その他水道原水水質保全事業の実施に際し配慮すべき重要事項
3基本方針は、特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法(平成六年法律第九号。以下「特別措置法」という。)第三条第一項に規定する基本方針との調和が保たれたものでなければならない。
4主務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
5主務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(水道事業者等の要請等)
第四条水道事業者は、水道原水の水質の汚濁によりその供給する水道水が水道法第四条第一項各号に掲げる要件のいずれかを満たさなくなるおそれがある場合において、当該水道原水の水質の汚濁の状況に応じた措置を講ずることが困難であるときは、政令で定めるところにより、当該水道水に係る水道事業(第二条第一項の水道事業又は同法第三条第五項に規定する水道用水供給事業者により供給される水道水をその用に供する同条第二項に規定する水道事業をいう。次項において同じ。)の給水区域(同法第三条第十二項に規定する給水区域をいう。次項において同じ。)をその区域に含む都道府県に対し、当該水道原水の水質の保全に資する水道原水水質保全事業の実施を促進することを要請することができる。
2水道事業者が特別措置法第四条第二項の規定による要請をしたとき(同項の都府県が同項の水道水に係る水道事業の給水区域をその区域に含む都府県(以下この項において「給水対象都府県」という。)と異なる場合においては、同項の都府県の知事から給水対象都府県の知事に対し当該要請があった旨の通知がされたときに限る。)は、当該水道事業者は、前項の規定による要請をしたものとみなす。
3都府県は、第一項の規定による要請があった場合において、当該要請に係る水道原水(以下「対象水道原水」という。)の水質の汚濁の状況及びその原因等からみて、他の都府県の区域内において水道原水水質保全事業(河川水道原水水質保全事業を除く。以下「地域水道原水水質保全事業」という。)の実施の促進が図られる必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、当該区域をその区域に含む都府県に対し、対象水道原水に係る次条第一項の都道府県計画を定めることを要請することができる。
4都道府県は、第一項の規定による要請があったときは、政令で定めるところにより、その旨を対象水道原水の取水地点に係る河川を管理する河川管理者(河川法第七条(同法第百条において準用する場合を含む。)に規定する河川管理者をいう。以下同じ。)に対し通知するとともに、対象水道原水の水質の保全に資する水道原水水質保全事業の実施の促進に関する意見を述べるものとする。
(都道府県計画)
第五条都道府県は、前条第一項又は第三項の規定による要請があった場合において、必要があると認めるときは、都道府県計画(対象水道原水の水質の保全を図るため、対象水道原水に係る取水地点を対象として、対象水道原水の水質の汚濁に相当程度関係があると認められる区域における地域水道原水水質保全事業の実施の促進について定める計画をいう。以下同じ。)を定めるものとする。
2都道府県計画に定められる地域水道原水水質保全事業の実施区域を含む特別措置法第四条第一項の指定地域において特別措置法第五条第一項の規定により水質保全計画が定められるときは、当該都道府県計画は、当該水質保全計画と一体のものとして作成することができる。
3都道府県は、第一項の規定により都道府県計画を定めるときは、対象水道原水に係る取水地点の近傍に存在する取水地点であって、当該都道府県計画に定められる地域水道原水水質保全事業の実施が当該取水地点における水道原水の水質の保全に相当程度寄与すると認められるものについて、当該取水地点に係る水道事業者の意見を聴いた上で、併せて当該都道府県計画の対象とすることができる。
4都道府県計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一第一項及び前項の規定により対象とする取水地点の位置並びに当該取水地点に係る水道事業者(以下この条において「対象水道事業者」という。)
二前号の取水地点における水道原水の水質の汚濁の状況並びに対象水道事業者が当該水道原水の水質の汚濁の状況に応じて講じた措置及び講じようとする措置の内容
三前号の水道原水の水質を保全するため必要と認められる地域水道原水水質保全事業の種類、実施主体、実施区域及び実施予定期間並びにその実施に要する費用の概算
四前号の費用のうち、対象水道事業者が負担することとなる額(次項及び第七項において「負担予定額」という。)
5負担予定額は、都道府県計画に定められる地域水道原水水質保全事業の実施の目的、前項第一号の取水地点における水道原水の水質の保全について当該地域水道原水水質保全事業の実施により得られる効用その他の政令で定める事情を勘案し、当該地域水道原水水質保全事業がその区域内において実施されることとなる地方公共団体で当該地域水道原水水質保全事業の実施に要する費用の全部又は一部を負担するものと対象水道事業者との負担の衡平を図ることを旨として定められるものとする。
6都道府県計画は、基本方針に即するとともに、市町村が地域水道原水水質保全事業の実施について定めている計画に適合し、かつ、都道府県計画に第二条第四項第一号に掲げる事業が定められるときは、第四項第三号に掲げる事項のうち当該事業に係るものについて、下水道法第二条の二第一項に規定する流域別下水道整備総合計画に適合するものでなければならない。
7都道府県は、都道府県計画を定めようとするときは、関係都府県の意見を聴き、かつ、当該都道府県計画の対象とする取水地点に係る河川管理者(次項において「関係河川管理者」という。)、関係市町村及び当該都道府県計画に定められる地域水道原水水質保全事業を実施する者に協議するとともに、第五項の地方公共団体の同意(負担予定額に係る部分に限る。)及び対象水道事業者の同意を得なければならない。
8都道府県は、都道府県計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるとともに、主務大臣に報告し、かつ、関係地方公共団体、関係河川管理者及び対象水道事業者に送付しなければならない。
9主務大臣は、前項の規定により都道府県計画について報告を受けたときは、都道府県に対し、必要な助言をすることができる。
10前三項の規定は、都道府県計画の変更について準用する。
(河川管理者事業計画)
第七条河川管理者は、第四条第四項の規定による通知があった場合において、必要があると認めるときは、河川管理者事業計画(対象水道原水の水質の保全を図るため、対象水道原水に係る取水地点を対象として、対象水道原水の水質の汚濁に相当程度関係があると認められる区域における河川水道原水水質保全事業の実施について定める計画をいう。以下同じ。)を定めるものとする。
2河川管理者は、前項の規定により河川管理者事業計画を定めようとする場合において、対象水道原水の水質の汚濁の状況及びその原因等からみて、その管理する河川と同一の水系に属する他の河川を管理する河川管理者による河川水道原水水質保全事業の実施が図られる必要があると認めるときは、当該他の河川を管理する河川管理者と共同して河川管理者事業計画を定めることができる。
3河川管理者事業計画に定められる河川水道原水水質保全事業の実施区域を含む特別措置法第四条第一項の指定地域において特別措置法第五条第一項の規定により水質保全計画が定められるときは、当該河川管理者事業計画は、当該水質保全計画と一体のものとして作成することができる。
4河川管理者は、第一項及び第二項の規定により河川管理者事業計画を定めるときは、対象水道原水に係る取水地点の近傍に存在する取水地点であって、当該河川管理者事業計画に定められる河川水道原水水質保全事業の実施が当該取水地点における水道原水の水質の保全に相当程度寄与すると認められるものについて、当該取水地点に係る水道事業者の意見を聴いた上で、併せて当該河川管理者事業計画の対象とすることができる。
5河川管理者事業計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一第一項及び前項の規定により対象とする取水地点の位置並びに当該取水地点に係る水道事業者(以下この条において「対象水道事業者」という。)
二前号の取水地点における水道原水の水質の汚濁の状況並びに対象水道事業者が当該水道原水の水質の汚濁の状況に応じて講じた措置及び講じようとする措置の内容
三前号の水道原水の水質を保全するため必要と認められる河川水道原水水質保全事業の種類、実施主体、実施区域及び実施予定期間並びにその実施に要する費用の概算
四前号の費用のうち、対象水道事業者が負担することとなる額(次項及び第八項において「負担予定額」という。)
6負担予定額は、河川管理者事業計画に定められる河川水道原水水質保全事業の実施の目的、前項第一号の取水地点における水道原水の水質の保全について当該河川水道原水水質保全事業の実施により得られる効用その他の政令で定める事情を勘案し、当該河川水道原水水質保全事業の実施に要する費用の全部又は一部を負担する国又は地方公共団体(当該河川水道原水水質保全事業がその区域内において実施されることとなる地方公共団体に限る。)と対象水道事業者との負担の衡平を図ることを旨として定められるものとする。
7河川管理者事業計画は、基本方針に即するとともに、河川法第十六条の二第一項(同法第百条において準用する場合を含む。)に規定する河川整備計画に適合するものでなければならない。
8河川管理者は、河川管理者事業計画を定めようとするときは、関係都道府県、関係市町村及び対象水道事業者の意見を聴くとともに、負担予定額に係る部分について対象水道事業者の同意を得なければならない。
9河川管理者は、河川管理者事業計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるとともに、関係地方公共団体及び対象水道事業者に送付しなければならない。
10前二項の規定は、河川管理者事業計画の変更について準用する。
(協議会)
第九条事業計画が定められたときは、関係地方公共団体の長、関係河川管理者、当該事業計画の対象とされている取水地点(次条第一項及び第十四条第二項において「計画取水地点」という。)に係る水道事業者(以下「計画水道事業者」という。)及び計画水道原水水質保全事業を実施する者は、計画水道原水水質保全事業を円滑に推進するために必要な協議を行うための協議会(以下この条において「協議会」という。)を組織することができる。
2前項の協議を行うための会議(次項において「会議」という。)は、前項に規定する者又はその指名する職員をもって構成する。
3会議において協議が調った事項については、第一項に規定する者は、その協議の結果を尊重しなければならない。
4協議会の庶務は、第一項の事業計画を定めた都道府県又は河川管理者において処理する。
5前項に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。
(水道事業者の水道原水等の水質記録の提出等)
第十条計画水道事業者は、環境省令で定めるところにより、計画取水地点における水道原水の水質の検査を行わなければならない。
2計画水道事業者は、前項の規定による検査を行ったときは、これに関する記録(次項において「水道原水水質記録」という。)を作成し、当該水道原水に係る水道水について水道法第二十条第二項の規定により作成した記録(次項において「水道水水質記録」という。)とともに、事業計画を定めた都道府県及び河川管理者に提出しなければならない。
3都道府県及び河川管理者は、水道原水水質記録及び水道水水質記録の提出を受けたときは、これを計画水道原水水質保全事業を実施する者に通知しなければならない。
4環境大臣は、第一項の環境省令を制定し、又は改廃しようとするときは、国土交通大臣の意見を聴かなければならない。
5国土交通大臣は、必要があると認めるときは、環境大臣に対し、第一項の環境省令を制定し、又は改廃することを求めることができる。
(強制徴収)
第十六条第十四条第一項の規定による負担金(以下この条において「負担金」という。)を納付しない計画水道事業者(地方公共団体を除く。)があるときは、国の行政機関の長、地方公共団体の長又は地方公共団体(以下この条において「国の行政機関の長等」という。)は、督促状によって納付すべき期限を指定して督促しなければならない。
2前項の場合においては、国の行政機関の長等は、政令(地方公共団体にあっては、条例)で定めるところにより、年十四・五パーセントの割合を乗じて計算した額を超えない範囲内の延滞金を徴収することができる。
3第一項の規定による督促を受けた者がその指定する期限までにその納付すべき金額を納付しない場合においては、国の行政機関の長等は、国税滞納処分の例により、前二項に規定する負担金及び延滞金を徴収することができる。この場合における負担金及び延滞金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
5負担金及び延滞金を徴収する権利は、これらを行使することができる時から五年間行使しないときは、時効により消滅する。