(目的)第一条この法律は、文化財の不法な輸入、輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約(以下「条約」という。)の適確な実施を確保するため、盗取された文化財の輸入、輸出及び回復に関する所要の措置を講ずることを目的とする。
(定義)第二条この法律において「文化財」とは、国内文化財及び条約の締約国である外国(以下「外国」という。)が条約第一条の規定に基づき指定した物件をいう。2この法律において「国内文化財」とは、条約第一条(a)から(k)までに掲げる分類に属する物件のうち、文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第二十七条第一項の規定に基づき指定された重要文化財、同法第七十八条第一項の規定に基づき指定された重要有形民俗文化財及び同法第百九条第一項の規定に基づき指定された史跡名勝天然記念物をいう。
(特定外国文化財)第三条外務大臣は、外国から、条約第七条(b)(i)に規定する施設から文化財が盗取された旨の通知を受けたときは、遅滞なく、その内容を文部科学大臣に通知するものとする。2文部科学大臣は、前項の規定により外務大臣から通知を受けたときは、当該通知に係る文化財を、文部科学省令で定めるところにより、特定外国文化財として指定する。3文部科学大臣は、前項の規定による指定をしようとするときは、経済産業大臣に協議しなければならない。
(届出の公示等)第五条文化庁長官は、国内文化財について文化財保護法第三十三条(同法第八十条、第百十八条及び第百二十条で準用する場合を含む。)の規定による届出(亡失又は盗難に係るものに限る。)があったときは、その旨を官報で公示するとともに、当該国内文化財が条約第七条(b)(i)に規定する施設から盗取されたものであるときは、外務大臣に通知するものとする。2外務大臣は、前項の通知を受けたときは、その内容を遅滞なく外国に通知するものとする。
(特定外国文化財に係る善意取得の特則)第六条特定外国文化財の占有者が民法(明治二十九年法律第八十九号)第百九十二条の条件を具備している場合であっても、第三条第一項の盗難の被害者は、同法第百九十三条の規定による回復の請求に加え、盗難の時から二年を経過した後十年を経過するまでの期間にあっては、当該占有者に対してこれを回復することを求めることができる。ただし、当該特定外国文化財が本邦に輸入された後に第三条第二項の規定により指定されたものであるときは、この限りでない。2前項本文の場合においては、被害者は、占有者が支払った代価を弁償しなければならない。
(施行期日)1この法律は、条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。(経過措置)2第三条の規定は、この法律の施行前に盗取された文化財については、適用しない。3第五条の規定は、この法律の施行前に亡失し又は盗取された文化財については、適用しない。