(定義)
第二条この法律において「金融機関」とは、次に掲げるものをいう。
2この法律において「預貯金者」とは、金融機関と預貯金等契約(預貯金の預入れ及び引出しに係る契約又はこれらに併せて金銭の借入れに係る事項を含む契約をいう。以下同じ。)を締結する個人をいう。
3この法律において「真正カード等」とは、預貯金等契約に基づき預貯金者に交付された預貯金の引出用のカード又は預貯金通帳(金銭の借入れをするための機能を併せ有するものを含む。以下「カード等」という。)をいう。
4この法律において「偽造カード等」とは、真正カード等以外のカード等その他これに類似するものをいう。
5この法律において「盗難カード等」とは、盗取された真正カード等をいう。
6この法律において「機械式預貯金払戻し」とは、金融機関と預貯金者との間において締結された預貯金等契約に基づき行われる現金自動支払機(預貯金等契約に基づき預貯金の払戻し又は金銭の借入れを行うことができる機能を有する機械をいう。次項において同じ。)による預貯金の払戻し(振込みに係る預貯金者の口座からの払戻しを含む。)をいう。
7この法律において「機械式金銭借入れ」とは、金融機関と預貯金者との間において締結された預貯金等契約に基づき行われる現金自動支払機による金銭の借入れ(預貯金以外のものを担保とする借入れを除く。)をいう。
(盗難カード等を用いて行われた不正な機械式預貯金払戻し等の額に相当する金額の補てん等)
第五条預貯金者は、自らの預貯金等契約に係る真正カード等が盗取されたと認める場合において、次の各号のいずれにも該当するときは、当該預貯金等契約を締結している金融機関に対し、当該盗取に係る盗難カード等を用いて行われた機械式預貯金払戻しの額に相当する金額の補てんを求めることができる。
一当該真正カード等が盗取されたと認めた後、速やかに、当該金融機関に対し盗取された旨の通知を行ったこと。
二当該金融機関の求めに応じ、遅滞なく、当該盗取が行われるに至った事情その他の当該盗取に関する状況について十分な説明を行ったこと。
三当該金融機関に対し、捜査機関に対して当該盗取に係る届出を提出していることを申し出たことその他当該盗取が行われたことが推測される事実として内閣府令で定めるものを示したこと。
2前項の規定による補てんの求めを受けた金融機関は、当該補てんの求めに係る機械式預貯金払戻しが盗難カード等を用いて行われた不正なものでないこと又は当該機械式預貯金払戻しが当該補てんの求めをした預貯金者の故意により行われたことを証明した場合を除き、当該補てんの求めをした預貯金者に対して、当該機械式預貯金払戻しの額に相当する金額(基準日以後において行われた当該機械式預貯金払戻しの額に相当する金額に限る。以下「補てん対象額」という。)の補てんを行わなければならない。ただし、当該金融機関が、当該機械式預貯金払戻しが盗難カード等を用いて不正に行われたことについて善意でかつ過失がないこと及び当該機械式預貯金払戻しが当該預貯金者の過失(重大な過失を除く。)により行われたことを証明した場合は、その補てんを行わなければならない金額は、補てん対象額の四分の三に相当する金額とする。
3第一項の規定による補てんの求めを受けた金融機関は、前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当することを証明した場合には、当該補てんの求めをした預貯金者に対して、補てんを行うことを要しない。
一当該補てんの求めに係る機械式預貯金払戻しが盗難カード等を用いて不正に行われたことについて金融機関が善意でかつ過失がないこと及び次のいずれかに該当すること。
イ当該機械式預貯金払戻しが当該預貯金者の重大な過失により行われたこと。
ロ当該機械式預貯金払戻しが当該預貯金者の配偶者、二親等内の親族、同居の親族その他の同居人又は家事使用人によって行われたこと。
ハ当該預貯金者が、第一項第二号に規定する金融機関に対する説明において、重要な事項について偽りの説明を行ったこと。
二当該盗難カード等に係る盗取が戦争、暴動等による著しい社会秩序の混乱に乗じ、又はこれに付随して行われたこと。
4預貯金者が自らの預貯金等契約に係る真正カード等が盗取されたと認める場合において第一項各号のいずれにも該当するときは、当該預貯金等契約を締結している金融機関は、当該盗取に係る盗難カード等を用いて行われた機械式金銭借入れについて、当該金融機関が当該機械式金銭借入れが盗難カード等を用いて行われた不正なものでないこと又は当該機械式金銭借入れが当該預貯金者の故意により行われたものであることを証明した場合を除き、当該機械式金銭借入れ(基準日以後において行われた当該機械式金銭借入れに限る。以下「対象借入れ」という。)について、その支払を求めることができない。ただし、当該金融機関が、当該機械式金銭借入れが盗難カード等を用いて不正に行われたことについて善意でかつ過失がないこと及び当該機械式金銭借入れが当該預貯金者の過失(重大な過失を除く。)により行われたことを証明した場合は、その支払を求めることができない金額は、対象借入れに係る額の四分の三に相当する金額とする。
5第三項の規定は、前項の場合について準用する。この場合において、第三項中「第一項の規定による補てんの求めを受けた金融機関は、前項の規定にかかわらず、」とあるのは「第四項の規定は、同項の金融機関が」と、「当該補てんの求めをした預貯金者に対して、補てんを行うことを要しない」とあるのは「適用しない」と、同項第一号中「当該補てんの求めに係る機械式預貯金払戻し」とあるのは「第四項の機械式金銭借入れ」と、「当該機械式預貯金払戻し」とあるのは「当該機械式金銭借入れ」と読み替えるものとする。
6第二項及び第四項に規定する基準日とは、第一項第一号に規定する通知を行った日の三十日(預貯金者が、同項又は第四項の盗取が行われた日(当該盗取が行われた日が明らかでないときは、当該盗取に係る盗難カード等を用いて行われた不正な機械式預貯金払戻し又は機械式金銭借入れが最初に行われた日。以下この項及び第七条において同じ。)以後三十日を経過する日までの期間内に当該盗取が行われたことを知ることができなかったことその他の当該通知をすることができなかったことについてやむを得ない特別の事情がある期間があることを証明したときは、三十日に当該特別の事情が継続している期間の日数を加えた日数)前の日(その日が当該盗取が行われた日前の日であるときは、当該盗取が行われた日)をいう。
(損害賠償等がされた場合等の調整)
第六条前条第二項の規定に基づく補てんを受けることができることとされる預貯金者に対し、次のいずれかに掲げる請求権の全部又は一部に係る支払がされた場合においては、当該補てんの求めを受けた金融機関は、その支払の金額の限度で当該預貯金者に対して補てんを行う義務を免れる。ただし、同項ただし書の規定の適用がある場合にあっては、当該金融機関は、当該支払の金額が補てん対象額から同項ただし書の規定に基づく補てんを受けることができることとされる金額を控除した金額を超えるときに限り、当該超える金額の限度で当該預貯金者に対して補てんを行う義務を免れる。
一盗難カード等を用いて行われた不正な機械式預貯金払戻しが弁済の効力を有しない場合に当該預貯金者が当該金融機関に対して有する当該機械式預貯金払戻しに係る預貯金の払戻請求権
二盗難カード等を用いて行われた不正な機械式預貯金払戻しが弁済の効力を有する場合に当該預貯金者が当該機械式預貯金払戻しを受けた者その他の第三者に対して有する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権
2前条第二項の規定による補てんを受けた預貯金者は、当該補てんを受けた金額の限度において、前項第一号に掲げる請求権に係る支払の請求を行うことができない。
3前条第二項の規定により預貯金者に対し補てんを行った金融機関は、当該補てんを行った金額の限度において、当該預貯金者の有する第一項第二号に掲げる請求権を取得する。
(偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等の防止のための措置等)
第九条金融機関は、偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等の発生を防止するため、できるだけ速やかに、機械式預貯金払戻し等に係る認証の技術の開発並びに情報の漏えいの防止及び異常な取引状況の早期の把握のための情報システムの整備その他の措置を講ずることにより、機械式預貯金払戻し等が正当な権限を有する者に対して適切に行われることを確保することができるようにするとともに、預貯金者に対するこれらの措置についての情報の提供並びに啓発及び知識の普及、容易に推測される暗証番号が使用されないような適切な措置の実施その他の必要な措置を講じなければならない。
2金融機関は、前項の措置を講ずるに当たっては、これらの措置の実施に伴う預貯金者の負担が過重なものとならないよう配慮するとともに、規格の統一、互換性の確保等により預貯金者の利便に支障を及ぼすことがないよう努めるものとする。
3国又は都道府県は、第一項の措置の実施状況を把握するとともに、必要があると認めるときは、偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等の充実を図るため、金融機関が適切な措置を講ずるよう必要な措置を講じなければならない。
4預貯金者は、偽造カード等又は盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等が行われないよう、カード等及びその暗証番号の適切な管理に努めるものとする。