(目的)第一条この法律は、海外の文化遺産であって、損傷し、衰退し、消滅し、若しくは破壊され、又はそれらのおそれのあるものの保護に係る国際的な協力(以下「文化遺産国際協力」という。)の推進に関し、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、文化遺産国際協力の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、文化遺産国際協力の推進を図り、もって世界における多様な文化の発展に貢献するとともに、我が国の国際的地位の向上に資することを目的とする。
(基本理念)第二条文化遺産国際協力は、文化遺産が人類共通の貴重な財産であることにかんがみ、我が国に蓄積された知識、技術、経験等を生かしてその保護に取り組むことにより、我が国が国際社会において主導的な役割を果たしつつ世界における多様な文化の発展に積極的に貢献するとともに、日本国民の異なる文化を尊重する心の涵かん養と国際相互理解の増進が図られるように行われるものとする。2文化遺産国際協力は、文化の多様性が重要であることに配慮しつつ、文化遺産が存在する外国の政府及び関係機関の自主的な努力を支援することを旨として行われなければならない。3文化遺産国際協力の推進に関する施策は、文化芸術基本法(平成十三年法律第百四十八号)の基本理念に配慮して行われるものとする。
(教育研究機関の責務等)第四条文化遺産国際協力に係る大学その他の教育研究機関(以下「教育研究機関」という。)は、文化遺産国際協力に必要な人材の育成並びに研究及びその成果の普及に自主的かつ積極的に努めるものとする。2教育研究機関は、文化遺産国際協力に係る研究者及び技術者の職務及び職場環境がその重要性にふさわしい魅力あるものとなるよう、研究者及び技術者の適切な処遇の確保並びに教育研究施設の整備及び充実に努めるものとする。3国は、文化遺産国際協力の推進に関する施策であって、教育研究機関に係るものを策定し、及びこれを実施するに当たっては、研究者の自主性の尊重その他教育研究機関における研究の特性に配慮しなければならない。
(基本方針)第六条文部科学大臣及び外務大臣は、文化遺産国際協力を推進するため、文化遺産国際協力の推進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。2基本方針は、文化遺産国際協力を推進するための基本的な事項その他必要な事項について定めるものとする。3文部科学大臣及び外務大臣は、基本方針を定め、又は変更しようとするときは、関係行政機関の長に協議するものとする。4文部科学大臣及び外務大臣は、基本方針を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
(連携の強化)第七条国は、国、文化遺産国際協力に係る独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)、教育研究機関、民間団体等が相互に連携を図りながら協力することにより、文化遺産国際協力の効果的な推進が図られることにかんがみ、これらの者の間の連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。
(関係行政機関の相互の密接な連携)第八条文化遺産国際協力の推進に当たっては、文化遺産国際協力の推進に必要な措置が適切に講じられるよう、関係行政機関の相互の密接な連携の下に、これが行われなければならない。
(人材の確保等)第十条国は、文化遺産国際協力を推進するため、文化遺産国際協力に係る独立行政法人、教育研究機関、民間団体等と相互に緊密な連携協力を図りながら、文化遺産の保護に関する専門的知識を有する人材の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講ずるものとする。
(国際的協調のための施策)第十一条国は、文化遺産の保護に関する諸条約等の精神にのっとり文化遺産国際協力を国際的協調の下に推進するため、外国の政府若しくは関係機関又は国際機関との情報の交換その他の必要かつ適切な施策を講ずるよう努めるものとする。
(国の内外の情報の収集、整理及び活用)第十二条国は、必要な文化遺産国際協力が適切かつ有効に実施されるよう、文化遺産国際協力に関する国の内外の情報の収集、整理及び活用その他の必要な施策を講ずるものとする。
(意見の反映)第十三条国は、文化遺産国際協力の推進に関する施策の適正な策定及び実施に資するため、文化遺産国際協力において保存、修復等に携わる関係者等の意見を国の施策に反映させるための制度の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。
(国民の理解及び関心の増進)第十四条国は、文化遺産国際協力並びに文化遺産国際協力において研究者及び技術者が果たす役割の重要性に関する国民の理解と関心を深めるよう、文化遺産国際協力に関する広報活動の充実及び教育の振興その他の必要な施策を講ずるものとする。