(基本指針)
第三条農林水産大臣は、被害防止施策を総合的かつ効果的に実施するための基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めるものとする。
2基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
三その他被害防止施策を総合的かつ効果的に実施するために必要な事項
3基本指針は、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号。以下「鳥獣保護管理法」という。)第三条第一項に規定する基本指針と整合性のとれたものでなければならない。
4農林水産大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、環境大臣と協議するものとする。
5農林水産大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(被害防止計画)
第四条市町村は、その区域内で被害防止施策を総合的かつ効果的に実施するため、基本指針に即して、単独で又は共同して、鳥獣による農林水産業等に係る被害を防止するための計画(以下「被害防止計画」という。)を定めることができる。
2被害防止計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止に関する基本的な方針
二当該市町村の区域内における農林水産業等に係る被害の原因となっている鳥獣であって被害防止計画の対象とするもの(以下「対象鳥獣」という。)の種類
四対象鳥獣の捕獲等(農林水産業等に係る被害の防止のための対象鳥獣の捕獲等(鳥獣保護管理法第二条第七項に規定する捕獲等をいう。以下同じ。)又は対象鳥獣である鳥類の卵の採取等(鳥獣保護管理法第八条に規定する採取等をいう。)をいう。以下同じ。)に関する事項
五対象鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための防護柵の設置その他の対象鳥獣の捕獲等以外の被害防止施策に関する事項
六対象鳥獣による住民の生命、身体又は財産に係る被害が生じ、又は生じるおそれがある場合の対処に関する事項
七捕獲等をした対象鳥獣の処理(次号に規定する捕獲等鳥獣の有効利用に伴うものを除く。)に関する事項
八捕獲等をした対象鳥獣の食品、愛玩動物用飼料(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成二十年法律第八十三号)第二条第二項に規定する愛がん動物用飼料をいう。第十条の二及び第十五条において同じ。)又は皮革としての利用等その有効な利用(以下「捕獲等鳥獣の有効利用」という。)に関する事項
3前項第四号の事項には、鳥獣保護管理法第九条第一項の規定により都道府県知事が行うこととされている対象鳥獣の捕獲等の許可であって第六条第一項の規定により読み替えて適用する鳥獣保護管理法第九条第一項の規定により被害防止計画を作成した市町村の長が行うことができるものに係る事項(以下「許可権限委譲事項」という。)を記載することができる。
4市町村は、その区域内における鳥獣による農林水産業等に係る被害の状況を勘案し、被害防止施策を効果的かつ効率的に実施するため必要があると認めるときは、第二項第九号の事項に、鳥獣被害対策実施隊の設置に関する事項を記載しなければならない。
5被害防止計画は、鳥獣保護管理事業計画(鳥獣保護管理法第四条第一項に規定する鳥獣保護管理事業計画をいう。以下同じ。)(第一種特定鳥獣保護計画(鳥獣保護管理法第七条第一項に規定する第一種特定鳥獣保護計画をいう。以下同じ。)又は第二種特定鳥獣管理計画(鳥獣保護管理法第七条の二第一項に規定する第二種特定鳥獣管理計画をいう。以下同じ。)が定められている都道府県の区域内の市町村の被害防止計画にあっては、鳥獣保護管理事業計画及び第一種特定鳥獣保護計画又は第二種特定鳥獣管理計画)と整合性のとれたものでなければならない。
6市町村は、被害防止計画を定めようとする場合には、あらかじめ、都道府県知事に協議しなければならない。この場合において、被害防止計画に許可権限委譲事項を記載しようとするときは、当該許可権限委譲事項について都道府県知事の同意を得なければならない。
7都道府県知事は、被害防止計画が当該市町村の鳥獣による農林水産業等に係る被害の状況に基づいて作成される必要があり、かつ、当該市町村がその状況を適確に把握することができる立場にあることを踏まえ、前項前段の協議を行うものとする。
8都道府県知事は、許可権限委譲事項が記載された被害防止計画について第六項前段の協議を受けた場合には、当該都道府県の区域内において当該許可権限委譲事項に係る対象鳥獣の数が著しく減少しているとき、当該許可権限委譲事項に係る対象鳥獣について広域的に保護を行う必要があるときその他の当該都道府県の区域内において当該許可権限委譲事項に係る対象鳥獣の保護又は管理を図る上で著しい支障を生じるおそれがあるときを除き、同項後段の同意をしなければならない。
9市町村は、被害防止計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。この場合において、当該被害防止計画に許可権限委譲事項を記載したときは、農林水産省令で定めるところにより、当該許可権限委譲事項を公告しなければならない。
10第六項から前項までの規定は、被害防止計画の変更について準用する。この場合において、第六項後段中「記載しようとするとき」とあるのは「記載しようとするとき又は当該被害防止計画に記載された許可権限委譲事項を変更しようとするとき」と、第八項中「同項後段」とあるのは「第十項において読み替えて準用する第六項後段」と、前項後段中「記載したとき」とあるのは「記載したとき又は当該被害防止計画に記載された許可権限委譲事項を変更したとき」と読み替えるものとする。
11被害防止計画を作成した市町村は、毎年度、被害防止計画の実施状況について、都道府県知事に報告しなければならない。
12市町村は、都道府県知事に対し、被害防止計画の作成及び実施に関し、情報の提供、技術的な助言その他必要な援助を求めることができる。
(対象鳥獣の捕獲等の許可に係る鳥獣保護管理法の適用の特例等)
第六条市町村が許可権限委譲事項が記載されている被害防止計画を作成したときは、第四条第九項後段(同条第十項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定による公告の日(次項において「公告の日」という。)から当該被害防止計画の期間が満了する日までの間は、当該被害防止計画を作成した市町村の区域における鳥獣保護管理法第九条(第十項、第十二項及び第十四項を除く。)、第十条、第十一条第一項、第十三条第一項、第七十五条第一項、第七十九条、第八十三条第一項第二号から第三号まで及び第六号、第八十四条第一項第一号、第八十六条第一号及び第二号並びに第八十七条の規定の適用については、鳥獣保護管理法第九条第一項中「都道府県知事」とあるのは「都道府県知事(鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律(平成十九年法律第百三十四号。以下「鳥獣被害防止特措法」という。)第四条第一項に規定する被害防止計画に記載されている同条第三項に規定する許可権限委譲事項に係る同条第二項第四号に規定する対象鳥獣の捕獲等をしようとする者にあっては、当該被害防止計画を作成した市町村(以下「計画作成市町村」という。)の長)」と、同条第二項から第九項まで、第十一項及び第十三項並びに鳥獣保護管理法第十条、第十一条第一項及び第十三条第一項の規定中「又は都道府県知事」とあるのは「、都道府県知事又は計画作成市町村の長」と、鳥獣保護管理法第七十五条第一項中「又は都道府県知事」とあるのは「若しくは都道府県知事又は計画作成市町村の長」と、「第九条第一項の許可を受けた者」とあるのは「環境大臣又は都道府県知事にあっては第九条第一項の許可を受けた者(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する第九条第一項の規定により計画作成市町村の長の許可を受けた者を除く。)」と、「猟区設定者に対し」とあるのは「猟区設定者に対し、計画作成市町村の長にあっては鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する第九条第一項の規定により計画作成市町村の長の許可を受けた者に対し」と、鳥獣保護管理法第七十九条第一項中「都道府県知事」とあるのは「都道府県知事又は計画作成市町村の長」と、同条第二項中「又は」とあるのは「若しくは」と、「場合」とあるのは「場合又は鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する第九条第一項の規定による許可に係る事務を計画作成市町村が処理する場合」と、「当該市町村」とあるのは「当該市町村又は当該計画作成市町村」と、鳥獣保護管理法第八十三条第一項第二号及び第二号の二中「第九条第一項」とあるのは「第九条第一項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、「第十三条第一項」とあるのは「第十三条第一項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、同項第三号中「第十条第一項」とあるのは「第十条第一項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、同項第六号中「第九条第一項」とあるのは「第九条第一項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、鳥獣保護管理法第八十四条第一項第一号中「第九条第五項」とあるのは「第九条第五項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、鳥獣保護管理法第八十六条第一号中「第十一項」とあるのは「第十一項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、同条第二号中「第九条第十三項」とあるのは「第九条第十三項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、「第七十五条第一項」とあるのは「第七十五条第一項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、鳥獣保護管理法第八十七条中「第九条第一項」とあるのは「第九条第一項(鳥獣被害防止特措法第六条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」とする。
2前項の被害防止計画を作成した市町村の区域においては、公告の日前に鳥獣保護管理法第九条若しくは第十条の規定により都道府県知事が行った許可等の処分その他の行為又は当該公告の日において現に鳥獣保護管理法第九条の規定により都道府県知事に対して行っている許可等の申請で当該市町村の許可権限委譲事項に係るものは、当該公告の日以後においては、同項の規定により読み替えて適用する鳥獣保護管理法第九条若しくは第十条の規定により当該市町村の長が行った許可等の処分その他の行為又は同項の規定により読み替えて適用する鳥獣保護管理法第九条の規定により当該市町村の長に対して行っている許可等の申請とみなす。
3市町村が第一項の被害防止計画を変更し、許可権限委譲事項の全部若しくは一部が記載されないこととなった場合又は当該被害防止計画の期間が満了した場合においては、第四条第十項において読み替えて準用する同条第九項後段の規定による公告の日又は当該被害防止計画の期間が満了した日(以下「変更公告等の日」という。)前に第一項の規定により読み替えて適用する鳥獣保護管理法第九条若しくは第十条の規定により当該市町村の長が行った許可等の処分その他の行為(前項の規定により当該市町村の長が行った許可等の処分その他の行為とみなされた行為を含む。)又は当該被害防止計画の変更公告等の日において現に第一項の規定により読み替えて適用する鳥獣保護管理法第九条の規定により当該市町村の長に対して行っている許可等の申請(前項の規定により当該市町村の長に対して行っている許可等の申請とみなされたものを含む。)で当該市町村の許可権限委譲事項に係るもの(当該市町村の許可権限委譲事項の一部が記載されないこととなった場合にあっては、当該記載されないこととなった許可権限委譲事項に係るものに限る。)は、当該変更公告等の日以後においては、鳥獣保護管理法第九条若しくは第十条の規定により都道府県知事が行った許可等の処分その他の行為又は鳥獣保護管理法第九条の規定により都道府県知事に対して行っている許可等の申請とみなす。
4前三項に定めるもののほか、第一項の規定により読み替えて適用する鳥獣保護管理法第九条第一項の規定により被害防止計画を作成した市町村の長が対象鳥獣の捕獲等の許可を行う場合における鳥獣保護管理法その他の法令の規定に関する技術的読替えその他これらの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
(鳥獣被害対策実施隊の設置等)
第九条市町村は、対象鳥獣の捕獲等、防護柵の設置その他の被害防止計画に基づく被害防止施策を適切に実施するため、鳥獣被害対策実施隊を設けることができる。
2鳥獣被害対策実施隊に鳥獣被害対策実施隊員を置く。
3前項に規定する鳥獣被害対策実施隊員は、次に掲げる者をもって充てる。
二被害防止計画に基づく被害防止施策の実施に積極的に取り組むことが見込まれる者(主として対象鳥獣の捕獲等に従事することが見込まれる者にあっては、これを適正かつ効果的に行うことができる者に限る。)のうちから、市町村長が任命する者
4市町村長は、前項第二号に掲げる鳥獣被害対策実施隊員の任命に当たっては、意欲及び能力を有する多様な人材の活用に配慮するものとする。
5第二項に規定する鳥獣被害対策実施隊員は、被害防止計画に基づく被害防止施策の実施に従事するほか、市町村長の指示を受け、農林水産業等に係る被害の原因となっている鳥獣の捕獲等で住民の生命、身体又は財産に係る被害を防止するため緊急に行う必要があるものに従事する。
6第三項第二号に掲げる鳥獣被害対策実施隊員は、非常勤とする。
7第二項に規定する鳥獣被害対策実施隊員であって主として対象鳥獣の捕獲等に従事することが見込まれる者として市町村長により指名され、又は任命されたものに係る鳥獣保護管理法第五十五条第二項に規定する狩猟者登録についての鳥獣保護管理法第五十六条、第五十七条第一項及び第六十一条第四項の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)の適用については、鳥獣保護管理法第五十六条中「次に掲げる事項」とあるのは「次に掲げる事項並びに対象鳥獣捕獲員(鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律(平成十九年法律第百三十四号)第九条第二項に規定する鳥獣被害対策実施隊員(以下「鳥獣被害対策実施隊員」という。)であって主として同法第四条第二項第四号に規定する対象鳥獣の捕獲等に従事することが見込まれる者として市町村長により指名され、又は任命されたものをいう。以下同じ。)である旨及び所属市町村(当該狩猟者登録を受けようとする者が対象鳥獣捕獲員たる鳥獣被害対策実施隊員として所属する市町村であって、当該登録都道府県知事が管轄する区域内にあるものをいう。以下同じ。)の名称」と、鳥獣保護管理法第五十七条第一項中「次に掲げる事項」とあるのは「次に掲げる事項並びに対象鳥獣捕獲員である旨及び所属市町村の名称」と、鳥獣保護管理法第六十一条第四項中「生じたとき」とあるのは「生じたとき又は対象鳥獣捕獲員となったとき、対象鳥獣捕獲員でなくなったとき若しくは所属市町村の変更があったとき」とする。
8第二項に規定する鳥獣被害対策実施隊員については、被害防止計画に基づく被害防止施策の適切かつ円滑な実施に資するため、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の定めるところによる狩猟税の軽減の措置その他の必要な措置が講ぜられるものとする。
9国及び都道府県は、被害防止計画に基づく被害防止施策の実施体制の整備を促進するため、鳥獣被害対策実施隊の設置、その機能の強化その他の市町村が行う鳥獣被害対策実施隊に関する措置について、必要な支援に努めるものとする。
(捕獲等鳥獣の有効利用)
第十条の二国及び地方公共団体は、捕獲等鳥獣の有効利用における安全性を確保するため、捕獲等をした対象鳥獣の食品又は愛玩動物用飼料としての安全性に関する情報の収集、整理、分析及び提供並びに当該対象鳥獣の食品としての加工、流通及び販売における衛生管理の高度化の促進に努めなければならない。
2国及び地方公共団体は、捕獲等鳥獣の有効利用の促進を図るため、捕獲等をした対象鳥獣の食品、愛玩動物用飼料又は皮革等としての加工に必要な施設並びに当該対象鳥獣の当該施設への搬入に必要な設備及び資材の整備充実、食品、愛玩動物用飼料又は皮革としての利用等に適した方法による捕獲等に関する情報の提供、捕獲等鳥獣の有効利用に係る技術の普及、捕獲等鳥獣の有効利用に係る開発又は需要の開拓の取組等に対する支援、加工品の流通の円滑化その他の必要な措置を講ずるものとする。
3国は、国、地方公共団体、捕獲等をした対象鳥獣の食品、愛玩動物用飼料又は皮革等としての加工、流通又は販売を行う事業者、民間の団体その他の関係者が相互に連携を図りながら協力することにより、捕獲等鳥獣の有効利用が図られることに鑑み、これらの者の間の連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。
(国、地方公共団体等の連携及び協力)
第十二条国及び地方公共団体は、被害防止施策を総合的かつ効果的に実施するため、農林水産業及び農山漁村の振興に関する業務を担当する部局、鳥獣の保護及び管理に関する業務を担当する部局その他鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止に関連する業務を担当する部局の相互の緊密な連携を確保しなければならない。
2地方公共団体は、被害防止施策を効果的に実施するため、被害防止計画の作成及び実施等に当たっては、当該地方公共団体における鳥獣による農林水産業等に係る被害の状況等に応じ、地方公共団体相互の広域的な連携協力を確保しなければならない。
3地方公共団体は、被害防止施策を実施するに当たっては、地域における一体的な取組が行われるよう、当該地域の農林漁業団体その他の関係団体との緊密な連携協力の確保に努めなければならない。
4農林漁業団体その他の関係団体は、自主的に鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止に努めるとともに、被害防止計画に基づく被害防止施策の実施その他の国及び地方公共団体が講ずる被害防止施策に協力するよう努めなければならない。