(建物の一部が滅失した場合の復旧等)
第六十一条建物の価格の二分の一以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を復旧することができる。ただし、共用部分については、復旧の工事に着手するまでに第三項、次条第一項、第六十四条の五第一項、第六十四条の六第一項、第六十四条の七第一項、第六十四条の八第一項、第七十条第一項、第七十一条第一項又は第八十四条第一項の決議があつたときは、この限りでない。
2前項の規定により共用部分を復旧した者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した金額を第十四条に定める割合に応じて償還すべきことを請求することができる。
3第一項本文に規定する場合には、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。
4前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
5第一項本文に規定する場合を除いて、建物の一部が滅失したときは、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。以下この項において同じ。)の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各三分の二以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。
6前項の決議をした集会の議事録には、その決議についての各区分所有者の賛否をも記載し、又は記録しなければならない。
7第五項の決議があつた場合において、その決議の日から二週間を経過したときは、次項の場合を除き、その決議に賛成した区分所有者(その承継人を含む。以下この条において「決議賛成者」という。)以外の区分所有者は、決議賛成者の全部又は一部に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。この場合において、その請求を受けた決議賛成者は、その請求の日から二月以内に、他の決議賛成者の全部又は一部に対し、決議賛成者以外の区分所有者を除いて算定した第十四条に定める割合に応じて当該建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。
8第五項の決議の日から二週間以内に、決議賛成者がその全員の合意により建物及びその敷地に関する権利を買い取ることができる者を指定し、かつ、その指定された者(以下この条において「買取指定者」という。)がその旨を決議賛成者以外の区分所有者に対して書面で通知したときは、その通知を受けた区分所有者は、買取指定者に対してのみ、前項前段に規定する請求をすることができる。
9買取指定者は、前項の規定による書面による通知に代えて、法務省令で定めるところにより、同項の規定による通知を受けるべき区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により買取指定者の指定がされた旨を通知することができる。この場合において、当該買取指定者は、当該書面による通知をしたものとみなす。
10買取指定者が第七項前段に規定する請求に基づく売買の代金に係る債務の全部又は一部の弁済をしないときは、決議賛成者(買取指定者となつたものを除く。以下この項及び第十五項において同じ。)は、連帯してその債務の全部又は一部の弁済の責めに任ずる。ただし、決議賛成者が買取指定者に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、この限りでない。
11第五項の集会を招集した者(買取指定者の指定がされているときは、当該買取指定者。次項において同じ。)は、決議賛成者以外の区分所有者に対し、四月以上の期間を定めて、第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を書面で催告することができる。
12第五項の集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により第七項前段に規定する請求をするか否かを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該第五項の集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。
13第十一項に規定する催告を受けた区分所有者は、同項の規定により定められた期間を経過したときは、第七項前段に規定する請求をすることができない。
14第五項に規定する場合において、建物の一部が滅失した日から六月以内に同項、次条第一項、第六十四条の五第一項、第六十四条の六第一項、第六十四条の七第一項、第六十四条の八第一項、第七十条第一項、第七十一条第一項又は第八十四条第一項の決議がないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。
15第二項、第七項、第八項及び前項の場合には、裁判所は、償還若しくは買取りの請求を受けた区分所有者、買取りの請求を受けた買取指定者又は第十項本文に規定する債務について履行の請求を受けた決議賛成者の請求により、償還金又は代金の支払につき相当の期限を許与することができる。
(建替え決議)
第六十二条集会においては、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。
2建物が次の各号のいずれかに該当する場合における前項の規定の適用については、同項中「五分の四」とあるのは、「四分の三」とする。
一地震に対する安全性に係る建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
二火災に対する安全性に係る建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
三外壁、外装材その他これらに類する建物の部分が剝離し、落下することにより周辺に危害を生ずるおそれがあるものとして法務大臣が定める基準に該当するとき。
四給水、排水その他の配管設備(その改修に関する工事を行うことが著しく困難なものとして法務省令で定めるものに限る。)の損傷、腐食その他の劣化により著しく衛生上有害となるおそれがあるものとして法務大臣が定める基準に該当するとき。
五高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律第十四条第五項に規定する建築物移動等円滑化基準に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
3法務大臣は、前項各号の基準を定め、又はこれを変更するときは、あらかじめ、国土交通大臣と協議するものとする。
4建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
一新たに建築する建物(以下この項において「再建建物」という。)の設計の概要
二建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額
5前項第三号及び第四号の事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。
6建替え決議を会議の目的とする集会を招集するときは、第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸長することができる。
7前項に規定する場合において、第三十五条第一項の通知をするときは、会議の目的たる事項及び議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。
二建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
三建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
四建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
8第六項の集会を招集した者は、当該集会の会日より少なくとも一月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。
9第三十五条及び第三十六条の規定は、前項の説明会の開催について準用する。
10前条第六項の規定は、建替え決議をした集会の議事録について準用する。
(区分所有権等の売渡し請求等)
第六十三条建替え決議があつたときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議に賛成しなかつた区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建替え決議の内容により建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。
2集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により建替え決議の内容により建替えに参加するか否かを回答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。
3第一項に規定する区分所有者は、同項の規定による催告を受けた日から二月以内に回答しなければならない。
4前項の期間内に回答しなかつた第一項に規定する区分所有者は、建替えに参加しない旨を回答したものとみなす。
5第三項の期間が経過したときは、建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(以下「買受指定者」という。)は、同項の期間の満了の日から二月以内に、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議があつた後にこの区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含む。)の敷地利用権についても、同様とする。
6前項の規定による請求があつた場合において、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者が建物の明渡しによりその生活上著しい困難を生ずるおそれがあり、かつ、建替え決議の遂行に甚だしい影響を及ぼさないものと認めるべき顕著な事由があるときは、裁判所は、その者の請求により、代金の支払又は提供の日から一年を超えない範囲内において、建物の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。
7建替え決議の日から二年以内に建物の取壊しの工事に着手しない場合には、第五項の規定により区分所有権又は敷地利用権を売り渡した者は、この期間の満了の日から六月以内に、買主が支払つた代金に相当する金銭をその区分所有権又は敷地利用権を現在有する者に提供して、これらの権利を売り渡すべきことを請求することができる。ただし、建物の取壊しの工事に着手しなかつたことにつき正当な理由があるときは、この限りでない。
8前項本文の規定は、同項ただし書に規定する場合において、建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつた日から六月以内にその着手をしないときに準用する。この場合において、同項本文中「この期間の満了の日から六月以内に」とあるのは、「建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつたことを知つた日から六月又はその理由がなくなつた日から二年のいずれか早い時期までに」と読み替えるものとする。
(賃貸借の終了請求)
第六十四条の二建替え決議があつたときは、建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)若しくはこれらの者の全員の合意により賃貸借の終了を請求することができる者として指定された者又は賃貸されている専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人に対し、賃貸借の終了を請求することができる。
2前項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の賃貸借は、その請求があつた日から六月を経過することによつて終了する。
3第一項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人(転借人を含む。第五項において同じ。)に対し、賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金を支払わなければならない。
4第一項の規定による請求をした者(当該専有部分の区分所有者を除く。)は、当該専有部分の区分所有者と連帯して前項の債務を弁済する責任を負う。
5専有部分の賃借人は、第二項の規定により当該専有部分の賃貸借が終了したときであつても、前二項の規定による補償金の提供を受けるまでは、当該専有部分の明渡しを拒むことができる。
(建物更新決議)
第六十四条の五集会においては、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物の更新(建物の構造上主要な部分の効用の維持又は回復(通常有すべき効用の確保を含む。)のために共用部分の形状の変更をし、かつ、これに伴い全ての専有部分の形状、面積又は位置関係の変更をすることをいう。次項において同じ。)をする旨の決議(同項及び第三項において「建物更新決議」という。)をすることができる。
2建物更新決議においては、次の事項を定めなければならない。
四建物の更新がされた後の建物の区分所有権の帰属に関する事項
3第六十二条(第一項及び第四項を除く。)及び第六十三条から前条までの規定は、建物更新決議について準用する。この場合において、第六十二条第二項中「前項」とあるのは「第六十四条の五第一項」と、同条第五項中「前項第三号及び第四号」とあるのは「第六十四条の五第二項第三号及び第四号」と、同条第七項第一号中「建物の建替え」とあるのは「建物の更新(第六十四条の五第一項に規定する建物の更新をいう。以下同じ。)」と、同項第二号中「建物の建替え」とあるのは「建物の更新」と、第六十三条第一項、第二項及び第四項から第六項まで、第六十四条並びに第六十四条の二第一項中「建替えに」とあるのは「建物の更新に」と、第六十三条第七項及び第八項中「建物の取壊しの工事」とあるのは「建物の更新の工事」と、第六十四条中「建替えを」とあるのは「建物の更新を」と読み替えるものとする。
(建物敷地売却決議)
第六十四条の六敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるときは、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)、議決権及び当該敷地利用権の持分(議決権を有しない区分所有者が有するものを除く。)の価格の各五分の四以上の多数で、建物及びその敷地(これに関する権利を含む。)を売却する旨の決議(次項及び第三項において「建物敷地売却決議」という。)をすることができる。
2建物敷地売却決議においては、次の事項を定めなければならない。
三売却によつて各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項
3第六十二条(第一項及び第四項を除く。)及び第六十三条から第六十四条の四までの規定は、建物敷地売却決議について準用する。この場合において、第六十二条第二項中「前項」とあるのは「第六十四条の六第一項」と、同条第五項中「前項第三号及び第四号」とあるのは「第六十四条の六第二項第三号」と、同条第七項第一号及び第二号中「の建替え」とあるのは「及びその敷地(これに関する権利を含む。)の売却」と、第六十三条第一項、第二項及び第四項から第六項まで、第六十四条並びに第六十四条の二第一項中「建替えに」とあるのは「売却に」と、第六十三条第七項中「建物の取壊しの工事に着手しない」とあるのは「売買契約による建物及びその敷地(これに関する権利を含む。)についての権利の移転(以下この項及び次項において「建物等の権利の移転」という。)がない」と、同項ただし書中「建物の取壊しの工事に着手しなかつた」とあるのは「建物等の権利の移転がなかつた」と、同条第八項中「建物の取壊しの工事の着手」とあるのは「建物等の権利の移転」と、「その着手をしない」とあるのは「建物等の権利の移転がない」と、第六十四条中「建替えを」とあるのは「売却を」と読み替えるものとする。
(建物取壊し敷地売却決議)
第六十四条の七敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるときは、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)、議決権及び当該敷地利用権の持分(議決権を有しない区分所有者が有するものを除く。)の価格の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、建物の敷地(これに関する権利を含む。次項において同じ。)を売却する旨の決議(同項及び第三項において「建物取壊し敷地売却決議」という。)をすることができる。
2建物取壊し敷地売却決議においては、次の事項を定めなければならない。
三建物の敷地の売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
五建物の敷地の売却によつて各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項
3第六十二条(第一項及び第四項を除く。)及び第六十三条から第六十四条の四までの規定は、建物取壊し敷地売却決議について準用する。この場合において、第六十二条第二項中「前項」とあるのは「第六十四条の七第一項」と、同条第五項中「前項第三号及び第四号」とあるのは「第六十四条の七第二項第二号及び第五号」と、同条第七項第一号及び第二号中「建替え」とあるのは「取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却」と、第六十三条第一項、第二項及び第四項から第六項まで、第六十四条並びに第六十四条の二第一項中「建替えに」とあるのは「建物の取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却に」と、第六十四条中「及び」とあるのは「並びに」と、「建替えを」とあるのは「建物の取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却を」と読み替えるものとする。