第二百七十一条の二検察官は、起訴状に記載された次に掲げる者の個人特定事項について、必要と認めるときは、裁判所に対し、前条第一項の規定による起訴状の謄本の送達により当該個人特定事項が被告人に知られないようにするための措置をとることを求めることができる。
一次に掲げる事件の被害者
イ刑法第百七十六条、第百七十七条、第百七十九条、第百八十一条若しくは第百八十二条の罪、同法第二百二十五条若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る。以下このイにおいて同じ。)、同法第二百二十七条第一項(同法第二百二十五条又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項(わいせつの目的に係る部分に限る。)の罪若しくは同法第二百四十一条第一項若しくは第三項の罪又はこれらの罪の未遂罪に係る事件
ロ児童福祉法第六十条第一項の罪若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第四条から第八条までの罪又は性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第二条から第六条までの罪に係る事件
ハイ及びロに掲げる事件のほか、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者の個人特定事項が被告人に知られることにより次に掲げるおそれがあると認められる事件
(1)被害者等の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ
(2)(1)に掲げるもののほか、被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれ
二前号に掲げる者のほか、個人特定事項が被告人に知られることにより次に掲げるおそれがあると認められる者
イその者の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ
ロイに掲げるもののほか、その者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれ
前項の規定による求めは、公訴の提起において、裁判所に対し、起訴状とともに、被告人に送達するものとして、当該求めに係る個人特定事項の記載がない起訴状の抄本その他の起訴状の謄本に代わるもの(以下「起訴状抄本等」という。)を提出して行わなければならない。
前項の場合には、起訴状抄本等については、その公訴事実を第二百五十六条第三項に規定する公訴事実とみなして、同項の規定を適用する。この場合において、同項中「できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実」とあるのは、「罪となるべき事実」とする。
裁判所は、第二項の規定による起訴状抄本等の提出があつたときは、前条第一項の規定にかかわらず、遅滞なく起訴状抄本等を被告人に送達しなければならない。この場合において、第二百五十五条及び前条第二項中「起訴状の謄本」とあるのは、「起訴状抄本等」とする。
第二百七十一条の三検察官は、前条第二項の規定により起訴状抄本等を提出する場合において、被告人に弁護人があるときは、裁判所に対し、弁護人に送達するものとして、起訴状の謄本を提出しなければならない。
裁判所は、前項の規定による起訴状の謄本の提出があつたときは、遅滞なく、弁護人に対し、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものを被告人に知らせてはならない旨の条件を付して起訴状の謄本を送達しなければならない。
検察官は、第一項に規定する場合において、前項の規定による措置によつては、前条第一項第一号ハ(1)若しくは第二号イに規定する名誉若しくは社会生活の平穏が著しく害されること又は同項第一号ハ(2)若しくは第二号ロに規定する行為を防止できないおそれがあると認めるときは、裁判所に対し、起訴状の謄本に代えて弁護人に送達するものとして、起訴状抄本等を提出することができる。
裁判所は、前項の規定による起訴状抄本等の提出があつたときは、遅滞なく、弁護人に対し、起訴状抄本等を送達しなければならない。
第二百七十一条の四裁判所は、第二百七十一条の二第二項の規定による起訴状抄本等の提出があつた後に弁護人が選任されたときは、速やかに、検察官にその旨を通知しなければならない。
検察官は、前項の規定による通知を受けたときは、速やかに、裁判所に対し、弁護人に送達するものとして、起訴状の謄本を提出しなければならない。
裁判所は、前項の規定による起訴状の謄本の提出があつたときは、遅滞なく、弁護人に対し、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものを被告人に知らせてはならない旨の条件を付して起訴状の謄本を送達しなければならない。
検察官は、第二項に規定する場合において、前項の規定による措置によつては、第二百七十一条の二第一項第一号ハ(1)若しくは第二号イに規定する名誉若しくは社会生活の平穏が著しく害されること又は同項第一号ハ(2)若しくは第二号ロに規定する行為を防止できないおそれがあると認めるときは、裁判所に対し、起訴状の謄本に代えて弁護人に送達するものとして、起訴状抄本等を提出することができる。
裁判所は、前項の規定による起訴状抄本等の提出があつたときは、遅滞なく、弁護人に対し、起訴状抄本等を送達しなければならない。
第二百七十一条の五裁判所は、第二百七十一条の二第四項の規定による措置をとつた場合において、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、当該措置に係る個人特定事項の全部又は一部を被告人に通知する旨の決定をしなければならない。
一イ又はロに掲げる個人特定事項の区分に応じ、当該イ又はロに定める場合であるとき。
イ被害者の個人特定事項当該措置に係る事件に係る罪が第二百七十一条の二第一項第一号イ及びロに規定するものに該当せず、かつ、当該措置に係る事件が同号ハに掲げるものに該当しないとき。
ロ被害者以外の者の個人特定事項当該措置に係る者が第二百七十一条の二第一項第二号に掲げる者に該当しないとき。
二当該措置により被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるとき。
裁判所は、第二百七十一条の三第四項又は前条第五項の規定による措置をとつた場合において、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、弁護人に対し、当該措置に係る個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付して当該個人特定事項の全部又は一部を通知する旨の決定をしなければならない。
一第二百七十一条の三第二項又は前条第三項の規定による措置によつて、第二百七十一条の二第一項第一号ハ(1)及び第二号イに規定する名誉又は社会生活の平穏が著しく害されること並びに同項第一号ハ(2)及び第二号ロに規定する行為を防止できるとき。
二当該措置により被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるとき。
裁判所は、前二項の請求について決定をするときは、検察官の意見を聴かなければならない。
第一項又は第二項の決定に係る通知は、裁判所が、当該決定により通知することとした個人特定事項を記載した書面によりするものとする。
第一項又は第二項の請求についてした決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第二百七十一条の六裁判所は、第二百七十一条の三第一項又は第二百七十一条の四第二項の規定による起訴状の謄本の提出があつた事件について、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないもの(前条第一項の決定により通知することとされたものを除く。以下この条及び第二百七十一条の八第一項において同じ。)が第二百七十一条の二第一項第一号又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合において、検察官及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、弁護人が第四十条第一項の規定により訴訟に関する書類又は証拠物を閲覧し又は謄写するに当たり、これらに記載され又は記録されている当該個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は被告人に知らせる時期若しくは方法を指定することができる。ただし、当該個人特定事項に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
裁判所は、第二百七十一条の三第三項又は第二百七十一条の四第四項の規定による起訴状抄本等の提出があつた事件について、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものが第二百七十一条の二第一項第一号又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合において、検察官及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、弁護人が第四十条第一項の規定により訴訟に関する書類又は証拠物を閲覧し又は謄写するについて、これらのうち当該個人特定事項が記載され若しくは記録されている部分の閲覧若しくは謄写を禁じ、又は当該個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、若しくは被告人に知らせる時期若しくは方法を指定することができる。ただし、当該個人特定事項に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
裁判所は、第一項本文に規定する事件について、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものが第二百七十一条の二第一項第一号又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合において、弁護人から第四十六条の規定による請求があつた場合であつて、検察官及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、弁護人に裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本を交付するに当たり、これらに記載されている当該個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は被告人に知らせる時期若しくは方法を指定することができる。ただし、当該個人特定事項に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
裁判所は、第二項本文に規定する事件について、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものが第二百七十一条の二第一項第一号又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合において、弁護人から第四十六条の規定による請求があつた場合であつて、検察官及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、裁判書若しくは裁判を記載した調書の抄本であつて当該個人特定事項の記載がないものを交付し、又は弁護人に裁判書若しくは裁判を記載した調書の謄本若しくは抄本を交付するに当たり、当該個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、若しくは被告人に知らせる時期若しくは方法を指定することができる。ただし、当該個人特定事項に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
裁判所は、第二百七十一条の二第二項の規定による起訴状抄本等の提出があつた事件について、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものが同条第一項第一号又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合において、被告人その他訴訟関係人(検察官及び弁護人を除く。)から第四十六条の規定による請求があつた場合であつて、検察官及び当該請求をした被告人その他訴訟関係人の意見を聴き、相当と認めるときは、裁判書又は裁判を記載した調書の抄本であつて当該個人特定事項の記載がないものを交付することができる。ただし、当該個人特定事項に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
裁判所は、前項本文に規定する事件について、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものが第二百七十一条の二第一項第一号又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合において、検察官及び被告人の意見を聴き、相当と認めるときは、被告人が第四十九条の規定により公判調書を閲覧し又はその朗読を求めるについて、このうち当該個人特定事項が記載され若しくは記録されている部分の閲覧を禁じ、又は当該部分の朗読の求めを拒むことができる。ただし、当該個人特定事項に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
第二百七十一条の八裁判所(第一号及び第四号にあつては裁判長及び合議体の構成員を、第二号及び第三号にあつては第六十六条第四項の裁判官並びに裁判長及び合議体の構成員を含み、第五号にあつては裁判官とする。)は、第二百七十一条の二第二項の規定による起訴状抄本等の提出があつた事件について、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないものが同条第一項第一号又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合において、相当と認めるときは、次に掲げる措置をとることができる。
一当該個人特定事項を明らかにしない方法により第六十一条の規定による被告事件の告知をすること。
二勾引状又は勾留状を発する場合において、これと同時に、被告人に示すものとして、当該個人特定事項を明らかにしない方法により公訴事実の要旨を記載した勾引状の抄本その他の勾引状に代わるもの又は勾留状の抄本その他の勾留状に代わるものを交付すること。
三当該個人特定事項を明らかにしない方法により第七十六条第一項の規定による公訴事実の要旨の告知をし、又はこれをさせること。
四当該個人特定事項を明らかにしない方法により第七十七条第三項の規定による公訴事実の要旨の告知をし、又はこれをさせること。
五当該個人特定事項を明らかにしない方法により第二百八十条第二項の規定による被告事件の告知をすること。
前項(第二号に係る部分に限る。)の規定による勾引状に代わるものの交付があつた場合における第七十三条第一項及び第三項の規定の適用については、同条第一項前段中「これ」とあり、同条第三項中「勾引状又は勾留状」とあり、及び同項ただし書中「令状」とあるのは「第二百七十一条の八第一項第二号の勾引状に代わるもの」と、同項中「公訴事実の要旨及び」とあるのは「勾引状に記載された個人特定事項のうち第二百七十一条の八第一項第二号の勾引状に代わるものに記載がないものを明らかにしない方法により公訴事実の要旨を告げるとともに、」とする。
第一項(第二号に係る部分に限る。)の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合における第七十三条第二項及び第三項の規定の適用については、同条第二項中「これ」とあり、同条第三項中「勾引状又は勾留状」とあり、及び同項ただし書中「令状」とあるのは「第二百七十一条の八第一項第二号の勾留状に代わるもの」と、同項中「公訴事実の要旨及び」とあるのは「勾留状に記載された個人特定事項のうち第二百七十一条の八第一項第二号の勾留状に代わるものに記載がないものを明らかにしない方法により公訴事実の要旨を告げるとともに、」とする。
裁判長又は合議体の構成員は、第一項(第二号に係る部分に限る。)の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合又は第二百七条の二第二項の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合において、勾留状に記載された個人特定事項のうちこれらの勾留状に代わるものに記載がないもの(第二百七十一条の五第一項の決定又は第二百七条の三第一項の裁判により通知することとされたものを除く。)が第二百七十一条の二第一項第一号又は第二号に掲げる者のものに該当すると認める場合であつて、検察官及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、勾留の理由の開示をするに当たり、当該個人特定事項を明らかにしない方法により被告事件を告げることができる。
第一項(第二号に係る部分に限る。)の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合又は第二百七条の二第二項の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合における第九十八条の規定の適用については、同条第一項中「勾留状の謄本」とあるのは、「第二百七十一条の八第一項第二号の勾留状に代わるもの又は第二百七条の二第二項本文の勾留状に代わるもの」とする。
前項の規定は、第一項(第二号に係る部分に限る。)の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合又は第二百七条の二第二項の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合であつて、第百六十七条の二第二項に規定するときにおける同項において準用する第九十八条の規定の適用について準用する。
第二百七十八条の三裁判所は、必要と認めるときは、検察官又は弁護人に対し、公判準備又は公判期日に出頭し、かつ、これらの手続が行われている間在席し又は在廷することを命ずることができる。
裁判長は、急速を要する場合には、前項に規定する命令をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
前二項の規定による命令を受けた検察官又は弁護人が正当な理由がなくこれに従わないときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、その命令に従わないために生じた費用の賠償を命ずることができる。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
裁判所は、第三項の決定をしたときは、検察官については当該検察官を指揮監督する権限を有する者に、弁護士である弁護人については当該弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会に通知し、適当な処置をとるべきことを請求しなければならない。
前項の規定による請求を受けた者は、そのとつた処置を裁判所に通知しなければならない。
第二百九十条の二裁判所は、次に掲げる事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
一刑法第百七十六条、第百七十七条、第百七十九条、第百八十一条若しくは第百八十二条の罪、同法第二百二十五条若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る。以下この号において同じ。)、同法第二百二十七条第一項(同法第二百二十五条又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項(わいせつの目的に係る部分に限る。)の罪若しくは同法第二百四十一条第一項若しくは第三項の罪又はこれらの罪の未遂罪に係る事件
二児童福祉法第六十条第一項の罪若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第四条から第八条までの罪又は性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第二条から第六条までの罪に係る事件
三前二号に掲げる事件のほか、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者等の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあると認められる事件
前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
裁判所は、第一項に定めるもののほか、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者特定事項が公開の法廷で明らかにされることにより被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認められる事件を取り扱う場合において、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。
裁判所は、第一項又は前項の決定をした事件について、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないことが相当でないと認めるに至つたとき、第三百十二条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため第一項第一号若しくは第二号に掲げる事件に該当しなくなつたとき又は同項第三号に掲げる事件若しくは前項に規定する事件に該当しないと認めるに至つたときは、決定で、第一項又は前項の決定を取り消さなければならない。
第二百九十一条検察官は、まず、起訴状を朗読しなければならない。
第二百九十条の二第一項又は第三項の決定があつたときは、前項の起訴状の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。この場合においては、検察官は、被告人に起訴状を示さなければならない。
前条第一項の決定があつた場合における第一項の起訴状の朗読についても、前項と同様とする。この場合において、同項中「被害者特定事項」とあるのは、「証人等特定事項」とする。
第二百七十一条の二第四項の規定による措置がとられた場合においては、第二項後段(前項前段の規定により第二項後段と同様とすることとされる場合を含む。以下この項において同じ。)の規定は、当該措置に係る個人特定事項の全部又は一部について第二百七十一条の五第一項の決定があつた場合に限り、適用する。この場合において、第二項後段中「起訴状」とあるのは、「第二百七十一条の二第四項の規定による措置に係る個人特定事項の全部について第二百七十一条の五第一項の決定があつた場合にあつては起訴状を、第二百七十一条の二第四項の規定による措置に係る個人特定事項の一部について当該決定があつた場合にあつては起訴状抄本等及び第二百七十一条の五第四項に規定する書面」とする。
裁判長は、第一項の起訴状の朗読が終わつた後、被告人に対し、終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨その他裁判所の規則で定める被告人の権利を保護するため必要な事項を告げた上、被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならない。
第二百九十二条の二裁判所は、被害者等又は当該被害者の法定代理人から、被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述の申出があるときは、公判期日において、その意見を陳述させるものとする。
前項の規定による意見の陳述の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。
裁判長又は陪席の裁判官は、被害者等又は当該被害者の法定代理人が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、これらの者に質問することができる。
訴訟関係人は、被害者等又は当該被害者の法定代理人が意見を陳述した後、その趣旨を明確にするため、裁判長に告げて、これらの者に質問することができる。
裁判長は、被害者等若しくは当該被害者の法定代理人の意見の陳述又は訴訟関係人の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人に対する質問が既にした陳述若しくは質問と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、これを制限することができる。
第百五十七条の四、第百五十七条の五並びに第百五十七条の六第一項及び第二項の規定は、第一項の規定による意見の陳述について準用する。
裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を提出させ、又は意見の陳述をさせないことができる。
前項の規定により書面が提出された場合には、裁判長は、公判期日において、その旨を明らかにしなければならない。この場合において、裁判長は、相当と認めるときは、その書面を朗読し、又はその要旨を告げることができる。
第一項の規定による陳述又は第七項の規定による書面は、犯罪事実の認定のための証拠とすることができない。
第二百九十五条裁判長は、訴訟関係人のする尋問又は陳述が既にした尋問若しくは陳述と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、訴訟関係人の本質的な権利を害しない限り、これを制限することができる。訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても同様である。
裁判長は、証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人を尋問する場合において、証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人若しくはこれらの親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあり、これらの者の住居、勤務先その他その通常所在する場所が特定される事項が明らかにされたならば証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人が十分な供述をすることができないと認めるときは、当該事項についての尋問を制限することができる。ただし、検察官のする尋問を制限することにより犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがあるとき、又は被告人若しくは弁護人のする尋問を制限することにより被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
裁判長は、第二百九十条の二第一項又は第三項の決定があつた場合において、訴訟関係人のする尋問又は陳述が被害者特定事項にわたるときは、これを制限することにより、犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがある場合又は被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き、当該尋問又は陳述を制限することができる。訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても、同様とする。
第二百九十条の三第一項の決定があつた場合における訴訟関係人のする尋問若しくは陳述又は訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても、前項と同様とする。この場合において、同項中「被害者特定事項」とあるのは、「証人等特定事項」とする。
裁判所は、前各項の規定による命令を受けた検察官又は弁護士である弁護人がこれに従わなかつた場合には、検察官については当該検察官を指揮監督する権限を有する者に、弁護士である弁護人については当該弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会に通知し、適当な処置をとるべきことを請求することができる。
前項の規定による請求を受けた者は、そのとつた処置を裁判所に通知しなければならない。
第二百九十九条の四検察官は、第二百九十九条第一項の規定により証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の氏名及び住居を知る機会を与えるべき場合において、その者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは、弁護人に対し、当該氏名及び住居を知る機会を与えた上で、当該氏名又は住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は被告人に知らせる時期若しくは方法を指定することができる。ただし、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
第二百九十九条第一項の規定により証人の氏名及び住居を知る機会を与えるべき場合において、第二百七十一条の二第二項の規定により起訴状抄本等を提出した場合又は第三百十二条の二第二項の規定により訴因変更等請求書面抄本等(同項に規定する訴因変更等請求書面抄本等をいう。以下この条及び次条第二項第一号において同じ。)を提出した場合(第三百十二条第一項の請求を却下する決定があつた場合を除く。第七項において同じ。)であつて、当該氏名又は住居が起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないもの又は訴因変更等請求書面(第三百十二条第四項に規定する訴因変更等請求書面をいう。以下この条及び同号において同じ。)に記載された個人特定事項のうち訴因変更等請求書面抄本等に記載がないもの(いずれも第二百七十一条の五第一項(第三百十二条の二第四項において読み替えて準用する場合を含む。)の決定により通知することとされたものを除く。第七項及び同号において同じ。)に該当し、かつ、第二百七十一条の二第一項第一号又は第二号に掲げる者のものに該当すると認めるときも、前項と同様とする。この場合において、同項ただし書中「証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人」とあるのは、「証人」とする。
検察官は、第一項本文の場合において、同項本文の規定による措置によつては同項本文に規定する行為を防止できないおそれがあると認めるとき(被告人に弁護人がないときを含む。)は、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなる場合その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き、被告人及び弁護人に対し、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の氏名又は住居を知る機会を与えないことができる。この場合において、被告人又は弁護人に対し、氏名にあつてはこれに代わる呼称を、住居にあつてはこれに代わる連絡先を知る機会を与えなければならない。
第二百九十九条第一項の規定により証人の氏名及び住居を知る機会を与えるべき場合において、第二百七十一条の三第三項又は第二百七十一条の四第四項(これらの規定を第三百十二条の二第四項において準用する場合を含む。第九項において同じ。)の規定により起訴状抄本等又は訴因変更等請求書面抄本等を提出した場合(第三百十二条第一項の請求を却下する決定があつた場合を除く。第九項において同じ。)であつて、当該氏名又は住居が起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないもの又は訴因変更等請求書面に記載された個人特定事項のうち訴因変更等請求書面抄本等に記載がないもの(いずれも第二百七十一条の五第一項又は第二項(これらの規定を第三百十二条の二第四項において準用する場合を含む。)の決定により通知することとされたものを除く。第九項において同じ。)に該当し、かつ、第二百七十一条の二第一項第一号又は第二号に掲げる者のものに該当すると認めるときも、前項と同様とする。この場合において、同項中「証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の供述」とあるのは「証人の供述」と、「その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の氏名」とあるのは「当該氏名」とする。
第二項前段に規定する場合において、被告人に弁護人がないときも、第三項と同様とする。この場合において、同項中「証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の供述」とあるのは「証人の供述」と、「その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の氏名」とあるのは「当該氏名」とする。
検察官は、第二百九十九条第一項の規定により証拠書類又は証拠物を閲覧する機会を与えるべき場合において、証拠書類若しくは証拠物に氏名若しくは住居が記載され若しくは記録されている者であつて検察官が証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人として尋問を請求するもの若しくは供述録取書等の供述者(以下この項及び第八項において「検察官請求証人等」という。)若しくは検察官請求証人等の親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは、弁護人に対し、証拠書類又は証拠物を閲覧する機会を与えた上で、その検察官請求証人等の氏名又は住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は被告人に知らせる時期若しくは方法を指定することができる。ただし、その検察官請求証人等の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
第二百九十九条第一項の規定により証拠書類又は証拠物を閲覧する機会を与えるべき場合において、第二百七十一条の二第二項の規定により起訴状抄本等を提出した場合又は第三百十二条の二第二項の規定により訴因変更等請求書面抄本等を提出した場合であつて、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないもの又は訴因変更等請求書面に記載された個人特定事項のうち訴因変更等請求書面抄本等に記載がないものが第二百七十一条の二第一項第一号又は第二号に掲げる者のものに該当すると認めるときも、前項と同様とする。この場合において、同項中「その検察官請求証人等の氏名又は住居」とあるのは「これらに記載され又は記録されているこれらの個人特定事項」と、同項ただし書中「その検察官請求証人等」とあるのは「これらの個人特定事項に係る証人」とする。
検察官は、第六項本文の場合において、同項本文の規定による措置によつては同項本文に規定する行為を防止できないおそれがあると認めるとき(被告人に弁護人がないときを含む。)は、その検察官請求証人等の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなる場合その他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合を除き、被告人及び弁護人に対し、証拠書類又は証拠物のうちその検察官請求証人等の氏名又は住居が記載され又は記録されている部分について閲覧する機会を与えないことができる。この場合において、被告人又は弁護人に対し、氏名にあつてはこれに代わる呼称を、住居にあつてはこれに代わる連絡先を知る機会を与えなければならない。
第二百九十九条第一項の規定により証拠書類又は証拠物を閲覧する機会を与えるべき場合において、第二百七十一条の三第三項又は第二百七十一条の四第四項の規定により起訴状抄本等又は訴因変更等請求書面抄本等を提出した場合であつて、起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないもの又は訴因変更等請求書面に記載された個人特定事項のうち訴因変更等請求書面抄本等に記載がないものが第二百七十一条の二第一項第一号又は第二号に掲げる者のものに該当すると認めるときも、前項と同様とする。この場合において、同項中「その検察官請求証人等の供述」とあるのは「これらの個人特定事項に係る証人の供述」と、「その検察官請求証人等の氏名又は住居」とあるのは「これらの個人特定事項」とする。
第七項前段に規定する場合において、被告人に弁護人がないときも、第八項と同様とする。この場合において、同項中「その検察官請求証人等の供述」とあるのは「これらの個人特定事項に係る証人の供述」と、「その検察官請求証人等の氏名又は住居」とあるのは「これらの個人特定事項」とする。
検察官は、前各項の規定による措置をとつたときは、速やかに、裁判所にその旨を通知しなければならない。
第二百九十九条の五裁判所は、検察官が前条第一項、第三項、第六項又は第八項の規定による措置をとつた場合において、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、当該措置の全部又は一部を取り消さなければならない。
一当該措置に係る者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがないとき。
二当該措置により、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるとき。
三検察官のとつた措置が前条第三項又は第八項の規定によるものである場合において、同条第一項本文又は第六項本文の規定による措置によつて第一号に規定する行為を防止できるとき。
検察官が前条第二項、第四項、第五項、第七項、第九項又は第十項の規定による措置をとつた場合において、次の各号のいずれかに該当すると認めるときも、前項と同様とする。
一当該措置に係る氏名若しくは住居又は個人特定事項が起訴状に記載された個人特定事項のうち起訴状抄本等に記載がないもの又は訴因変更等請求書面に記載された個人特定事項のうち訴因変更等請求書面抄本等に記載がないもの(第三百十二条第一項の請求を却下する決定があつた場合における当該請求に係るものを除く。)に該当しないとき。
二イ又はロに掲げる個人特定事項の区分に応じ、当該イ又はロに定める場合であるとき。
イ被害者の個人特定事項当該措置に係る事件に係る罪が第二百七十一条の二第一項第一号イ及びロに規定するものに該当せず、かつ、当該措置に係る事件が同号ハに掲げるものに該当しないとき。
ロ被害者以外の者の個人特定事項当該措置に係る者が第二百七十一条の二第一項第二号に掲げる者に該当しないとき。
三検察官のとつた措置が前条第四項、第五項、第九項又は第十項の規定によるものである場合において、当該措置に係る個人特定事項が第二百七十一条の五第二項(第三百十二条の二第四項において準用する場合を含む。)の決定により通知することとされたものに該当するとき。
四当該措置により、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるとき。
五検察官のとつた措置が前条第四項、第五項、第九項又は第十項の規定によるものである場合において、同条第二項又は第七項の規定による措置によつて第二百七十一条の二第一項第一号ハ(1)及び第二号イに規定する名誉又は社会生活の平穏が著しく害されること並びに同項第一号ハ(2)及び第二号ロに規定する行為を防止できるとき。
裁判所は、第一項第二号又は第三号に該当すると認めて検察官がとつた措置の全部又は一部を取り消す場合において、同項第一号に規定する行為がなされるおそれがあると認めるときは、弁護人に対し、当該措置に係る者の氏名又は住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は被告人に知らせる時期若しくは方法を指定することができる。ただし、当該条件を付し、又は当該時期若しくは方法の指定をすることにより、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
第二項第三号から第五号までに該当すると認めて検察官がとつた措置の全部又は一部を取り消す場合において、第二百七十一条の二第一項第一号ハ(1)若しくは第二号イに規定する名誉若しくは社会生活の平穏が著しく害されるおそれ又は同項第一号ハ(2)若しくは第二号ロに規定する行為がなされるおそれがあると認めるときも、前項と同様とする。この場合において、同項中「者の氏名又は住居」とあるのは、「個人特定事項」とする。
裁判所は、第一項又は第二項の請求について決定をするときは、検察官の意見を聴かなければならない。
第一項又は第二項の請求についてした決定(第三項又は第四項の規定により条件を付し、又は時期若しくは方法を指定する裁判を含む。)に対しては、即時抗告をすることができる。
第二百九十九条の六裁判所は、検察官がとつた第二百九十九条の四第一項若しくは第六項の規定による措置に係る者若しくは裁判所がとつた前条第三項の規定による措置に係る者若しくはこれらの親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認める場合において、検察官及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、弁護人が第四十条第一項の規定により訴訟に関する書類又は証拠物を閲覧し又は謄写するに当たり、これらに記載され又は記録されている当該措置に係る者の氏名又は住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は被告人に知らせる時期若しくは方法を指定することができる。ただし、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
裁判所は、検察官がとつた第二百九十九条の四第三項若しくは第八項の規定による措置に係る者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認める場合において、検察官及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、弁護人が第四十条第一項の規定により訴訟に関する書類又は証拠物を閲覧し又は謄写するについて、これらのうち当該措置に係る者の氏名若しくは住居が記載され若しくは記録されている部分の閲覧若しくは謄写を禁じ、又は当該氏名若しくは住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、若しくは被告人に知らせる時期若しくは方法を指定することができる。ただし、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
裁判所は、検察官がとつた第二百九十九条の四第一項若しくは第六項の規定による措置に係る者若しくは裁判所がとつた前条第三項の規定による措置に係る者若しくはこれらの親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認める場合において、弁護人から第四十六条の規定による請求があつた場合であつて、検察官及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、弁護人に裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本を交付するに当たり、これらに記載されている当該措置に係る者の氏名又は住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、又は被告人に知らせる時期若しくは方法を指定することができる。ただし、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
裁判所は、検察官がとつた第二百九十九条の四第三項若しくは第八項の規定による措置に係る者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認める場合において、弁護人から第四十六条の規定による請求があつた場合であつて、検察官及び弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、裁判書若しくは裁判を記載した調書の抄本であつて当該措置に係る者の氏名若しくは住居の記載がないものを交付し、又は弁護人に裁判書若しくは裁判を記載した調書の謄本若しくは抄本を交付するに当たり、当該氏名若しくは住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付し、若しくは被告人に知らせる時期若しくは方法を指定することができる。ただし、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
裁判所は、検察官がとつた第二百九十九条の四第一項、第三項、第六項若しくは第八項の規定による措置に係る者若しくは裁判所がとつた前条第三項の規定による措置に係る者若しくはこれらの親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認める場合において、被告人その他訴訟関係人(検察官及び弁護人を除く。)から第四十六条の規定による請求があつた場合であつて、検察官及び当該請求をした被告人その他訴訟関係人の意見を聴き、相当と認めるときは、裁判書又は裁判を記載した調書の抄本であつて当該措置に係る者の氏名又は住居の記載がないものを交付することができる。ただし、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
裁判所は、検察官がとつた第二百九十九条の四第一項、第三項、第六項若しくは第八項の規定による措置に係る者若しくは裁判所がとつた前条第三項の規定による措置に係る者若しくはこれらの親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認める場合において、検察官及び被告人の意見を聴き、相当と認めるときは、被告人が第四十九条の規定により公判調書を閲覧し又はその朗読を求めるについて、このうち当該措置に係る者の氏名若しくは住居が記載され若しくは記録されている部分の閲覧を禁じ、又は当該部分の朗読の求めを拒むことができる。ただし、当該措置に係る者の供述の証明力の判断に資するような被告人その他の関係者との利害関係の有無を確かめることができなくなるときその他の被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、この限りでない。
第三百一条の二次に掲げる事件については、検察官は、第三百二十二条第一項の規定により証拠とすることができる書面であつて、当該事件についての第百九十八条第一項の規定による取調べ(逮捕又は勾留されている被疑者の取調べに限る。第三項において同じ。)又は第二百三条第一項、第二百四条第一項若しくは第二百五条第一項(第二百十一条及び第二百十六条においてこれらの規定を準用する場合を含む。第三項において同じ。)の弁解の機会に際して作成され、かつ、被告人に不利益な事実の承認を内容とするものの取調べを請求した場合において、被告人又は弁護人が、その取調べの請求に関し、その承認が任意にされたものでない疑いがあることを理由として異議を述べたときは、その承認が任意にされたものであることを証明するため、当該書面が作成された取調べ又は弁解の機会の開始から終了に至るまでの間における被告人の供述及びその状況を第四項の規定により記録した記録媒体の取調べを請求しなければならない。ただし、同項各号のいずれかに該当することにより同項の規定による記録が行われなかつたことその他やむを得ない事情によつて当該記録媒体が存在しないときは、この限りでない。
一死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
二短期一年以上の有期の懲役又は禁錮に当たる罪であつて故意の犯罪行為により被害者を死亡させたものに係る事件
三司法警察員が送致し又は送付した事件以外の事件(前二号に掲げるものを除く。)
検察官が前項の規定に違反して同項に規定する記録媒体の取調べを請求しないときは、裁判所は、決定で、同項に規定する書面の取調べの請求を却下しなければならない。
前二項の規定は、第一項各号に掲げる事件について、第三百二十四条第一項において準用する第三百二十二条第一項の規定により証拠とすることができる被告人以外の者の供述であつて、当該事件についての第百九十八条第一項の規定による取調べ又は第二百三条第一項、第二百四条第一項若しくは第二百五条第一項の弁解の機会に際してされた被告人の供述(被告人に不利益な事実の承認を内容とするものに限る。)をその内容とするものを証拠とすることに関し、被告人又は弁護人が、その承認が任意にされたものでない疑いがあることを理由として異議を述べた場合にこれを準用する。
検察官又は検察事務官は、第一項各号に掲げる事件(同項第三号に掲げる事件のうち、関連する事件が送致され又は送付されているものであつて、司法警察員が現に捜査していることその他の事情に照らして司法警察員が送致し又は送付することが見込まれるものを除く。)について、逮捕若しくは勾留されている被疑者を第百九十八条第一項の規定により取り調べるとき又は被疑者に対し第二百四条第一項若しくは第二百五条第一項(第二百十一条及び第二百十六条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定により弁解の機会を与えるときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、被疑者の供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録媒体に記録しておかなければならない。司法警察職員が、第一項第一号又は第二号に掲げる事件について、逮捕若しくは勾留されている被疑者を第百九十八条第一項の規定により取り調べるとき又は被疑者に対し第二百三条第一項(第二百十一条及び第二百十六条において準用する場合を含む。)の規定により弁解の機会を与えるときも、同様とする。
一記録に必要な機器の故障その他のやむを得ない事情により、記録をすることができないとき。
二被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。
三当該事件が暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第三条の規定により都道府県公安委員会の指定を受けた暴力団の構成員による犯罪に係るものであると認めるとき。
四前二号に掲げるもののほか、犯罪の性質、関係者の言動、被疑者がその構成員である団体の性格その他の事情に照らし、被疑者の供述及びその状況が明らかにされた場合には被疑者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあることにより、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき。
第三百五条検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、その取調べを請求した者にこれを朗読させなければならない。ただし、裁判長は、自らこれを朗読し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にこれを朗読させることができる。
裁判所が職権で証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、自らその書類を朗読し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にこれを朗読させなければならない。
第二百九十条の二第一項又は第三項の決定があつたときは、前二項の規定による証拠書類の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。
第二百九十条の三第一項の決定があつた場合における第一項又は第二項の規定による証拠書類の朗読についても、前項と同様とする。この場合において、同項中「被害者特定事項」とあるのは、「証人等特定事項」とする。
第百五十七条の六第四項の規定により記録媒体がその一部とされた調書の取調べについては、第一項又は第二項の規定による朗読に代えて、当該記録媒体を再生するものとする。ただし、裁判長は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、当該記録媒体の再生に代えて、当該調書の取調べを請求した者、陪席の裁判官若しくは裁判所書記官に当該調書に記録された供述の内容を告げさせ、又は自らこれを告げることができる。
裁判所は、前項の規定により第百五十七条の六第四項に規定する記録媒体を再生する場合において、必要と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、第百五十七条の五に規定する措置を採ることができる。
第三百十二条裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。
裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因又は罰条を追加又は変更すべきことを命ずることができる。
第一項の請求は、書面を提出してしなければならない。
検察官は、第一項の請求と同時に、被告人に送達するものとして、前項の書面(以下「訴因変更等請求書面」という。)の謄本を裁判所に提出しなければならない。
裁判所は、前項の規定による訴因変更等請求書面の謄本の提出があつたときは、遅滞なくこれを被告人に送達しなければならない。
第三項の規定にかかわらず、被告人が在廷する公判廷においては、第一項の請求は、口頭ですることができる。この場合においては、第四項の規定は、適用しない。
裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に十分な防御の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。
第三百十二条の二検察官は、訴因変更等請求書面に記載された第二百七十一条の二第一項第一号又は第二号に掲げる者の個人特定事項について、必要と認めるときは、裁判所に対し、前条第五項の規定による訴因変更等請求書面の謄本の送達により当該個人特定事項が被告人に知られないようにするための措置をとることを求めることができる。
前項の規定による求めは、裁判所に対し、訴因変更等請求書面とともに、被告人に送達するものとして、当該求めに係る個人特定事項の記載がない訴因変更等請求書面の抄本その他の訴因変更等請求書面の謄本に代わるもの(以下この条において「訴因変更等請求書面抄本等」という。)を提出して行わなければならない。
裁判所は、前項の規定による訴因変更等請求書面抄本等の提出があつたときは、前条第五項の規定にかかわらず、遅滞なく訴因変更等請求書面抄本等を被告人に送達しなければならない。
第二百七十一条の三から第二百七十一条の八までの規定は、第二項の規定による訴因変更等請求書面抄本等の提出がある場合について準用する。この場合において、第二百七十一条の三第三項中「前条第一項第一号ハ(1)」とあるのは「第二百七十一条の二第一項第一号ハ(1)」と、第二百七十一条の五第一項中「第二百七十一条の二第四項」とあるのは「第三百十二条の二第三項」と、第二百七十一条の六第五項及び第二百七十一条の八第一項中「同条第一項第一号」とあるのは「第二百七十一条の二第一項第一号」と読み替えるものとする。
第三百十四条被告人が心神喪失の状態に在るときは、検察官及び弁護人の意見を聴き、決定で、その状態の続いている間公判手続を停止しなければならない。但し、無罪、免訴、刑の免除又は公訴棄却の裁判をすべきことが明らかな場合には、被告人の出頭を待たないで、直ちにその裁判をすることができる。
被告人が病気のため出頭することができないときは、検察官及び弁護人の意見を聴き、決定で、出頭することができるまで公判手続を停止しなければならない。但し、第二百八十四条及び第二百八十五条の規定により代理人を出頭させた場合は、この限りでない。
犯罪事実の存否の証明に欠くことのできない証人が病気のため公判期日に出頭することができないときは、公判期日外においてその取調をするのを適当と認める場合の外、決定で、出頭することができるまで公判手続を停止しなければならない。
前三項の規定により公判手続を停止するには、医師の意見を聴かなければならない。